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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
6章 ≪季節はずれの幽霊編≫
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22話・NECROMANCY

―――side隆介

 「ッチ!」


 マジで、面倒だ。

 ぶっちゃけ、ヤツはそれほど強くはない。

 だが、攻撃しても大抵の攻撃がはじかれ、どんな魔法を放っても対処される。


 「すみません、遅れました!」


 その声と共に、長髪の男子がオレの横に音もなく現れる。

 おそらく、やっとカバネの体のほうにキリがついたんだろう。

 だが、双子がいないところを見ると、あいつらは後ろのソラの方に残してきたらしい。


 「本当にな。コレで、前衛がそろった。やるぞ!」


 その声で、オレが走る。

 そして、それより速くシュウが相手に肉薄し、その高速の拳の乱打を浴びせる。

 オレで目に捉えるのがやっと。おそらく、普通の人間の冬香やスズでは、シュウが何をしているのかよくわかっていないだろう。

 そして、相手も。

 合成獣は予期しないシュウの攻撃にうめくようにして体から触手の様な物を出すとそれでシュウを攻撃しようとする。

 だが、シュウは既にそこにはいない。


 「遅すぎます!!」


 「それに、こっちを忘れんな!!」


 「わたしもね!」


 「吸血呪ヴァンパイア・スペル血濡れの大鎌デスサイス≫!」


 オレは接近して魔法剣を浴びせ、冬香が弾幕を張る。

 おそらく、相手には相当なダメージがいったはず・・・!

 オレとシュウは一旦距離を取る。

 そして、相手を見据える。


 「や、やりました?」


 「と言うか、僕達は何もしていませんね・・・」


 「・・・来るっ!」


 リカが注意を働きかけたそのとき、合成獣キメラが人や、獣、鳥など、いろいろな音声が混じった叫びを上げる。

 すると何を思ったのか、いきなり体を小さくし始め、前足にあたる部分を手のようなものに変えていく。

 そして、そこに出来上がったのは、全長三メートルほどの巨大な人のようなもの。

 顔がなく、ひょろひょろの棒でできたような体だが間違いないと思う。

 そして、今しがたできたばかりの手をこちらに向ける。


 「どういうつもりだ?」


 「・・・ねぇ、ソラならココで何をするのかな?」


 いきなりリカがしゃべりだす。


 「・・・自分の得意なことを生かして、攻撃するでしょうか?」


 「たぶん、それ」


 そこで、オレはヤツの特性、つまりは体を自由に変化させること、魔法を使えることをだと確認。


 「オイ、それだと、まずくねぇか?」


 「・・・要するに、アイツの変幻自在な攻撃と魔法を合わせた攻撃をしてくるってこと!?」


 『―――――、≪―――≫!』


 まるでそうだとでも言うかのように相手は叫ぶ。

 手の指が伸びたかと思うと、相手は伸ばした手をオレ達を逃がさないとでも言うように即席の檻の様な物を編み上げ、それをオレ達に被せる。そして魔法を発動させる。

 なら、次に来るのは・・・!


 「スズ!防御だ!」


 「≪相殺結界アンチ・エリア≫!」


 スズがヤツより速く魔法を展開。

 そして、ヤツの魔法が発動したかと思うと、目の前が真っ白の光で染められる。

 それは、一瞬で終わった。

 おそらく、雷系の魔法だろう。オレ達を逃がさないように退路を断ってからやる。この性格の悪さはあのバカの手口そのものだ。


 「ッ!フェイント!!」


 リカがいきなり大声で叫ぶ。


 「ちょっと、フェイントにしても何に対してする必要があるのよ?」


 「・・・ソラの方か!」


 オレ達がはじかれたようにソラの方を見る。

 そこには、真剣な表情で魔法を構築しているソラ達の姿が。

 更にヤツは手をもう一本生み出し、指を槍の様に鋭くして高速で伸ばす。

 あんなのに貫かれれば蜂の巣になるのは確実だろう。


 「ミスト!防御しろ!」


 『わぁってる!』


 田中がミストの力で多くの盾を出現させる。

 そして、ミストは指の一本一本を盾でガードする。


 『ッヘ、ザコが!俺様の力、思い知ったか!』


 すると、その言葉が癇に障ったのか、合成獣は雄たけびを上げる。

 すると、ミストがガードした指が何本もの糸のようになってバラけ、盾を回り込むように軌道を変更し、それをソラ達に突き刺そうとしている。


 「ミスト、油断すんなよ!」


 『・・・いや、俺様のスペック上、タロウしか守れねぇし』


 「ミストォォォォオオオオオオ!?」


 「―――月の加護を!

     ≪月の防壁ルナ・シールド≫!」


 ミストの代わりにルーミアがとっさに魔法で防御。

 さすが、神霊なだけあって魔法の展開も早い。

 だが、相手はそれを最初からわかっていたかのように回り込み、攻撃を仕掛ける。

 そして、それに気付いたカレンが魔法を構築しているソラを守ろうと、抱き寄せるが・・・。


 「・・・ギリギリ、セーフ、やな」


 「カバネさん!」


 「何をしてるですぅ!その体では無茶ですぅ!!」


 カバネがソラ達の前に立つ。

 いつもは背負ったままのスコップを構え、それであの攻撃をはじいたらしい。


 「カリン、おーきに。―――カバネ、さすがにこれ以上は―――アホ、むしろ、ワイがせな、誰がすんねん」


 そういうと、カバネはその手に持ったスコップをガンと音を立てて地面に突き刺す。

 すると、そこを中心に魔力があふれ出す。


 「―――我、カバネ・ラジェの名の下において命ずる。

     我が、眷族となりて力を収めた者たちよ、今ここにその力を示せ!

     ≪死霊達の宴デス・パレード≫!」


 カバネの声が響き渡ると同時、一瞬だけ辺りが静寂のみで支配される。

 だが、次の瞬間、土がむき出しになった地面からぼこぼこと何かが飛び出す。

 いや、よく見ると、それは・・・。


 「ヒッ!?う、腕に、ほ、骨!?」


 「・・・リカ、アンタ一回落ち着きなさい」


 「まさか、これが『死霊術ネクロマンシー』か!?」


 「どうやら、そのようです」


 「しかも、あれ!森で僕達が戦った人魂です!」


 春樹の指差すほうを見ると、そこにはカバネの周囲を浮遊するいくつもの、青白い炎の塊達。そして、それらはカバネの方を見ると、何かを尋ねるような仕草をする。


 「おい、俺たちどうすればいい?」


 「しゃべるのか!?」


 ・・・普通に、しゃべってた。しかも、骸骨が。どうやってしゃべってんだよ。


 「あの黒いの足止めや。そんで、お前等はコレで成仏しろ。異論は認めへん」


 「まじかよ~」


 「いや、前のヤツ等はなんか引越しの手伝いしただけで成仏しろって言われてた気がするぞ?」


 「・・・こっちの方が、だいぶましか?」


 何故か、死霊たちはやたらと庶民的なことを話しながら合成獣キメラに飛び掛っていった。

 そして、カバネは周りを見ると、何かを考えるような表情になる。


 「・・・まぁ、今回は敵がでっかいしな。アイツも呼ぼ」


 そういうと、今度はポケットから何かを取り出す。

 ココからではよく見えないが・・・何をするつもりだ?

 オレがそう考えていると、カバネはそれを地面に置き、自分は少しはなれたところに行く。

 そして、深呼吸をするとまた詠唱を始める。


 「―――我、カバネ・ラジェの名の下に命ずる。

     汝、我の呼びかけに応えよ。

     その猛威をもって、彼の者を滅ぼせ。

     ≪死霊召喚スピリ・コール≫!!」


 辺りが静寂で包まれる。

 そして、変化はすぐに訪れた。

 カバネが置いた物に魔力が集中していくのがわかる。

 唐突に地面が軽く揺れだす。

 すると、カバネの置いた物のところが盛り上がり、次の瞬簡には大きな地響きと共に何かが地面の下から勢いよく現れた。

 その部分だけ土煙が舞い、一体何が出てきたのかよくわからない。


 『久しぶりに呼ばれたと思えば・・・。カバネ・ラジェ、お前は何故、いつもそんな風になってから俺を呼ぶ』


 ゆっくりとした、太い声が聞こえた。

 そして、カバネは当たり前のように答えた。


 「お前な、自分の図体の事わかっとるか?そうそうお前を呼べるわけ無いやろ・・・。それに、お前だけはワイがミスって永遠に隷属化してしもうたし、何回も呼ばれとうないやろ?」


 『愚問だ。俺はお前に恩がある。この恩、お前が死ぬそのときまで返そう』


 「・・・正直な話、モテるんやったら、別嬪さんがよかったんやけどな。まぁ、ええわ」


 そういうと、カバネは一旦言葉を切り、土煙の上のほうを見る。

 そして、口をあける。


 「ヴァジュ。あのでっかい黒いの、足止めしてくれへん?あ、周りの被害はいつもの通りな」


 『・・・承知』


 すると、土煙の一部から、あまりにも巨大すぎる腕が唐突に出てくる。

 その腕は、合成獣キメラを地面に叩きつけるようにして殴る。そして、合成獣キメラは冗談じゃないかと言いたくなるぐらいに、地面に埋まる。

 ・・・おい、あと少しでもずれてたらオレ達がお陀仏だった気がするぞ?

 そして、ヤツはその姿を現した。

 青白い肌なのは、死霊術ネクロマンシー、あるいは死んでいるからだろうということだろう。そして、オレ達の目の前に現れたのは、巨大な人間としか表現の私用が無いもの。


 「巨人族ギガンテス、それも、古代種だと!?」


 「巨人族ギガンテス!?あれが!?」


 「あれがですか!?嘘でしょう!?」


 「あ、あぁ・・・ッ!」


 「おぉ~!?大きいね~。でも、何でみんな驚いているの~?」


 よくわかっていないスズに春樹が簡単に説明する。


 「だって、巨人族ギガンテスは、全長三メートルほどしかないんですよ!?あれ見て下さい!隣のビルと同じぐらいの大きさですよ!?」


 「・・・わかった~!たぶん、いっぱいご飯食べたんだね~!」


 「わかってねぇよ!アレはな、たぶん、大昔にしか存在してなかったっつー、古代種だ。古代種の巨人族ギガンテスの伝承には、山のような大きさだとか、ありふれたことしか書いていなかったんだが・・・」


 まさか、本当に、山みたいな大きさだったとはな・・・。

 すると巨人、ヴァジュはゆっくりとした動作でカバネの方を向く。


 「おい!俺達もいるんだ!ぶっ飛ばすなよ!痛ぇじゃねぇか!」


 「お前、死んでるんだから痛みもねぇって!」


 「おっと、そうだった」


 ・・・死霊達がボケたことを言ってるが、今は無視しとこう。

 つか、何で、巨人族こんなヤツがカバネに従っている?

 伝承によれば、巨人族ギガンテスは戦闘種族。それに、図体だけでなく、誇りプライドも山みたいに高いって聞いている。

 それが、何で?


 『カバネ・ラジェ、終わったぞ。これしきの相手、俺にとっては造作もない』


 「まだや。よう見てみぃ」


 『何?・・・!』


 巨人がいぶかしげな目でカバネを見るが、その足元から何かがものすごい力で巨人をひっくり返す。

 驚く巨人を尻目に合成獣が雄たけびを上げる。


 「どういうわけかはわからん。でも、あそこに・・・カレンとなんかしとるのおるやろ?アイツが何とかするらしいで、お前はアイツの攻撃から、とにかくあれを守ればええ」


 『・・・承知』


 そういうと、巨人は素直にカバネの指示に従うかのように自分と同じ大きさもある合成獣キメラを押さえ込むようにして動きを封じる。

 相手はそれを暴れて抜け出そうとするが、よほどうまく押さえ込まれているのか、巨人の体がピクリとも動かない。

 つか、コレは何つー大怪獣バトルだよ!?


 「・・・コレなら、アイツを待たなくてもいいんじゃね?」


 「確かに。でも、あのヘタレ死霊術師ネクロマンサーは使役はしないんじゃなかったの?」


 「・・・姉さん、さっきあの人?・・・まぁ、幽霊がなんか言ってた気が?」


 「・・・そういえば、何だか恩返しがどうとか言ってたね~。・・・実は、あの人たちはツルさんなの?」


 あんな、腐った人間みたいな鶴は絶対にイヤだ。

 少なくとも、オレは恩返しされたくない。

 だが、あの時のヤツの言い分も嘘をついているようには見えなかった。

 少なくとも、オレ達の中ではいなかった。大勢の目をごまかすなんて芸当はかなり難しいとオレは思う。


 「まぁ、どっちにしろ、コイツをぶっ飛ばさなきゃ聞けないっつーことか」


 「そのようです。ですが、こうも暴れられては、迂闊に動けません」


 確かに、シュウの言うとおりだ。

 今も、合成獣キメラと巨人は互いに取っ組み合っている。

 巨人はその体の大きさ、膂力によってねじ伏せ、合成獣キメラは己の体を変化させ、絡めてから真っ向勝負と戦法を変えては巨人に怒涛の攻撃を繰り出す。

 しかも、それがオレ達のすぐ傍でやっているからまずい。

 魔法も物理攻撃もスズの魔法でガードできるから問題はねぇが・・・万が一にもと言うこともあるからなぁ・・・。


 「・・・大丈夫。問題ない」


 リカが唐突に、ぼそりとつぶやくようにして言う。

 だが、何故か不機嫌そうだ。


 「な、何でそんな事がわかるんですか?」


 「・・・ん」


 リカが指をさす。

 そこは、確かソラ達のいる方向。

 オレ達がそこを見ると、そこには異常なほどに、掌に展開したから光を放つソラがいた。




作 「大変遅くなりました。『死霊術』をお送りします」

カ 「ついにワイの時代やな!」

作 「まぁ、実は割りと最近までこいつが死霊術師だったことを忘れてましたが」

カ 「な、なん、やと・・・!」

作 「いや、僕個人としては既に生ける屍リビングデッドなメイドさんで十分におなかいっぱいだったんで」

カ 「・・・ワイがおらへんかったら、カレンもおらへんのに・・・」

作 「そんなわけで次回予告!ついに完成?新魔法!次回もよろしく!」

カ 「・・・これが、惚れた弱味ゆうやつか」

作 「いや、あんたがMなだけだと思う」

カ 「・・・」

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