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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
6章 ≪季節はずれの幽霊編≫
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21話・CHIMERA

―――side空志

 「どういう、コトですか?」


 「貴方は、それが『真言』だと思っているのですか?」


 「ん?汝、それが真言と思っておったのか?」


 「・・・」


 ボクは、そのことに答えられない。

 いや、うすうすとは感じている。

 この魔法は、いろいろとおかしい部分がある。


 「やはり、気付いていたのですね」


 「そりゃ・・・。一応、他の三魔源素スリーシンボルの人から魔導マギのことは聞いてる」


 「でしたら、話は早いです」


 だって、この魔法は、あまりにも、ボクのためにあるような魔法だったから。

 相手の魔力を切り裂き、しかも、その切りたい魔力を選択できる。

 そんなの、≪月詠ツクヨミ≫を前提条件にしてないとできない芸当だ。

 できなくても確かにこれは強い。でも、それだけだ。相手に有効な一打に欠ける。

 そしてなにより、この魔法は不必要な要素がある。

 本物の武器を生成する事。

 具現化マテリアライズは、魔法使いが接近戦もできるようにと考え出した、近接戦専用魔法。別に、ココまで再現する必要はない。魔法で造ったから魔法に干渉できるし、相手にも普通にダメージを与えられる。もし、相手を斬る必要があれば『斬る』と言う概念をつければいい。方法は、風だろうが炎だろうが何でもいい。魔法は、それができる。

 ボクが智也さんに薦められて呼んでみた魔法の大全集みたいなのには、具現化マテリアライズはただの魔力の塊だって書いてあった。

 そして、それに対してボクのは・・・。


 「では、魔法陣を強化しましょう」


 魔法陣をベースに作られたもの。

 それ自体が魔法陣で、魔法。

 ものすごく、特殊な魔法だ。異質って言ってもいいかもしれない。


 「それとルーミア様、いいでしょうか?」


 「ぶっつけ本番でか?汝、意外にギャンブラーよのう」


 「いえ、あんな中途半端なものではアレを倒すことは難しいでしょう」


 そういうと、今だ痛みに絶叫を上げる合成獣キメラをさす。

 確かに、侵食攻撃されたらたまったものじゃない。


 「皆さんの安心安全のために三谷様のレベルアップを図りたいと思います」


 「・・・ボクの安心と安全は?」


 「では、魔法陣を構築してください。あ、皆さんは敵のこちらに攻撃を向けないようにしてください。それと、田中様はこちらでお願いします」


 スルーしやがった、このメイド。


 「では、ルーミア様、お願いします」


 「うむ」


 なんか、よくわからないイベントが発生した。



―――side隆介

 「何とかしろってもな・・・」


 「おっきいよね~」


 ・・・まぁ、確かに。

 数十メートルの生き物のような物体なんてそうそうみられるものじゃない。

 ちなみに、ドラゴンの平均的な大きさは小さいのから五メートル、大きいので十五メートル程度。

 しかも、面倒な魔法みたいなもんも使ってくる。あいつらは侵食系の魔法だとか言ってが、スズの『リバース』でさえ、その侵食魔法をとどめていることができていなかった。


 「オレ達に何をしろってんだよ」


 「適当に魔法をぶつければいいんじゃない?射出系のヤツ」


 「じゃ、冬香、お前がやれよ」


 「へいへい。コード≪槍衾ファランクス≫!」


 とりあえず冬香が氷の槍の弾幕攻撃をする。

 だが、ヤツも冬香の数法陣を見た瞬間、体に甲羅の様な物を展開して防御をする。


 「亀かなんかかよ」


 「あれ?あれってカメさんなの~?」


 「と、というか、あれは何なのですか?」


 「未知の生物だ」


 「おぉ~!?あれが、『ゆーま』ってヤツだね~!」


 こいつ等、面倒くさい。

 つか、マジでどうする?

 コイツ、学習してるみたいだ。ヤツは、オレ達を見つける。すると、その黒い体にあった足を体の中に引っ込め、最終的に残ったのが二つ。

 しかし、二本だけではうまく立てない。そしてまた、二本の足を出すと、四足歩行の生物っぽいのになる。ただ、その姿は団子に適当な棒をつけたようなものにしか見えない。


 「・・・やべぇな、ヤツが学習する前に倒さないと、面倒なことになる」


 「そうね。とりあえず、氷漬けにするわ。コード≪氷地獄コキュートス≫!」


 冬香がまたも魔法を展開させる。

 すると、合成獣キメラを中心にして冷気が漂い、やつの足元から氷漬けにしていく。

 だが、そこで信じられないことが発生した。


 『―――――、≪―――≫!』


 わけのわからない叫び声の様な物を発生させる。

 すると、まるでそれに応えるかのように炎が発生し、体に纏わりつく。

 そして、≪氷地獄コキュートス≫の氷を溶かしてしまった。


 「魔法を、使っただと!?」


 「そ、ソラみたいなことした!?」


 リカの言葉でまさかという考えがオレの中で渦巻く。

 ・・・いや、やってみる価値はあるか。


 「四条、ヤツに範囲魔法をぶつけろ、出来るだけ強いヤツ。合図で一斉だ」


 「は、はひ!?」


 そういうと、オレは魔法剣を放つために構える。

 オレの横であたふたしつつも魔法を放つ準備をする四条。

 オレは頃合を見計らって言う。


 「おし、やれ!」


 「ほ、≪炎の瀑布≫!」


 「魔法剣≪刹那≫」


 オレの黒い高速の斬撃が奔る。

 それに続くように四条の精霊魔法の炎の瀑布が殺到する。

 そして、それはまた起こった。


 『≪―――≫!

 ―――――、―――、≪―――≫!』


 何かを叫ぶような声。

 そして、まず最初に放たれたのが水の瀑布。それが炎を消し去り、こちらに向かってくる。次に放たれたのが炎の槍。それはオレの魔法剣に直撃すると相殺した。


 「≪闇の侵食ダーク・イロージョン≫」


 オレは魔法剣を使いながら詠唱していた魔法を展開する。

 漆黒の闇の壁がオレ達の周りに展開され、水の魔法を消し去る。


 「・・・まずいな」


 「何で、あの・・・真っ黒さんはソラ君みたいなことができるの~?」


 「実際にソラと同じことしてるからよ」


 「し、師匠の真似、ですか?」


 そこで、リカが思い出す。


 「・・・そういえば、さっきのハリネズミの話」


 「「・・・あ」」


 呪力発生地点付近にペットショップ。そして、オレ達にハリネズミのモンスターみたいな攻撃。魔法は悪霊が使っていた。それが進化したものだと思えば説明はつく。

 そして、呪力の塊である『呪玉』をソラは作って・・・。そしたら、相手はまるでこっちの魔法がわかっていたかのような対応をとってくる。


 「アイツの影響を受けたのか!」


 「面倒すぎるわよ、あのバカ!」


 マジでオレ達にどうしろってんだよ・・・。



―――side空志

 「まず、魔力とは魔法を行使するために必要なエネルギー。それで、この魔力を使い、詠唱をすることで外部魔力、つまりはマナに干渉し、魔法を形作る。そして、それが『魔法』という現象で外界に変化をもたらす」


 「あの、いきなり何の説明ですか?」


 「魔法の基本理論ぢゃが?」


 「それはわかってます」


 いきなり魔法の理論を語りだしたルーミアさんにボクは尋ねる。いや、ボクとスズは魔法の制御の勉強を始めてすぐにそれを颯太さんに教えてもらった。

 それを今更するには時間が無い気が?


 「まぁ、本当ならばもっと突っ込んだところを説明したいが、今は時間が無い。端的にいうと、魔力はマナを取り込み、自分の属性魔力に最適化することで回復する。コレが基本的な理論」


 「いや、それも知ってますって」


 「そこで、コレが落とし穴となっておる」


 「落とし穴?」


 どういうことだ?

 魔力はマナを体に取り込む。それで回復する。

 少なくともコレは間違っていないと思うんだけど?


 「簡単に言うと、汝の属性ではそれが必要ない」


 「・・・どういうことですか?」


 「よく考えてみろ、わらわ達の力、『月』の属性は外部魔力、すなわちマナを扱う。故に、本来、汝の魔力はマナそのもの」


 「あぁ・・・何となく言ってる事はわかる気がします」


 「・・・汝、何を基準に魔法のランクを決めておるのか知っておるか?」


 「?」


 「それはのう、魔法のマナの含有量ぢゃ」


 「マナの含有量?」


 「マナは影響を受けやすい。しかし、一度マナを使い、それを操作コントロールでき、マナに影響を与え続ければ魔法はより強固なものとなる。要するに、魔法の強度の問題かのう」


 ・・・どういうこと?

 なんか、意味がよくわからない・・・。


 「汝、具現化マテリアライズは魔力のみでしようとすればどうなる?」


 「さっきみたいな光の剣になって、数回振ると折れる」


 「しかし、マナを使えばそんなことはなかろう?むしろ、より強化されておったように思うが?」


 なるほど。

 詳しい原理はよくわからない。

 たぶんそんな簡単にわかるようなものでもないんだろうけど。

 言いたいことはわかった。

 でも、それだとボクの方が魔法を司っているっぽいんだけど?『星』はどうなるの?


 「ちなみに、マナを集めるのに最も効率がよい方法も使用する魔力をできるだけ拡散させ連鎖させるようにしてマナを収束させることぢゃ。それに、そうすることで自分の近くにマナがなくてもある程度は勝手に収束される。マナとマナは影響を受けづらいからのう」


 「なるほど」


 「しかし、わらわ達にはそれができない。わらわ達は直接、周囲のマナを操作し、集めるしかできない」


 ・・・要するに、極端にマナが薄いところではボク等は足手まといにしかならない、ういうことか。


 「いいか、ココからが重要になる。よく聞け」


 そういうと、ルーミアさんは真剣な表情でボクに詰め寄る。


 「汝は、下手に魔力を持っておるためか、マナを一旦体に通し、自分に最適化してからそれを全力で使っておる。確かに、マナの含有量もそれなりにではあるが、それではどんなにがんばってもBクラス止まり」


 「・・・ちなみにどっちで?」


 世界的な基準か、エレオノール学園基準か。


 「何を言っておる。わらわ達の力は、本来その枠には収まりきらん。それに、世界基準ではかなり下であった気がするぞ。・・・数百年前は」


 「・・・」


 どうも、それ以前の問題みたいだった。

 そして無茶苦茶だ。

 だって、ボクは半年前までは『魔法』の『ま』の字も知らなかったのに・・・。

 いや、そんな泣き言を言ってる暇はない。


 「それに、汝、一度だけ膨大なマナを収束させたであろう」


 「何で知ってるんですか?」


 「ほれ、あそこの学園長と『魔法映写機てれび』とか言うもので汝がドンパチしておるの見た」


 意外に暇をもてあましているみたいだった。

 つか、見てたんかい!


 「今、ココで、同じコトをしろ」


 「・・・マジですか」


 「本来、マナの操作は第三段階からの技術スキル。だが、どういうわけか汝はそれを中途半端とは言えモノにしている。汝なら、できる。とにかく、マナのみで魔法陣を作れ」


 これ異常ないほどの真剣な表情。

 いや、鬼気迫る表情と言ってもいい。・・・そんな表情でルーミアさんはボクに言う。


 「・・・わかりました」


 そして、ボクは集中する。

 ボクの目に映る世界、マナを知覚する。

 目の前には白銀に光る『流れ』。そして、それに干渉する。

 すると、光の『流れ』がゆがみ、不規則にうごめく。

 そして掌を突き出し、マナをそこに収束させ・・・。


 「ダメぢゃ!マナを取り込んでおる!・・・取り込むのはこの際よい。だが、それを出すな!!」


 やっていない。そう言おうと思った。

 でも、気付く。自分の中に微量なマナが流れてきているのを。

 誰かに言われないと気付かないほどの量。

 そして、それを掌から出している。


 「・・・コレじゃ、ダメだ」


 最初から。でも、何回もやり直せるほど時間が無い。

 問題は、ボクが無意識に体内の魔力を使おうとすること。

 それさえクリアできればいい。でも、無意識を制御しようなんて、それも数分でできたら苦労はしない。

 何かいい方法は・・・。それこそ、ボク自身が魔力を使えなくなれば・・・。


 「・・・あ」


 「どうした?」


 「・・・いや、ひょっとしたら、できるかも」


 とりあえず、必要なものは・・・。


 「とりあえず、書くものとかないですか?」




作 「と言うわけで『合成獣』をお送りしました」

ル 「うむ。相手は面倒ぢゃのう」

作 「と言うわけで実は・・・って話からこうなりました」

ル 「しかし、今回は短いのう」

作 「すみません。こうした方がキリがよかったんだよね」

ル 「うむ。まぁ、今回はいろいろな伏線を回収しておるな」

作 「まぁ、話の都合上、そろそろやっとかないと大変なんで」

ル 「うむ、がんばれ。わらわはあの学長のところで『てれび』でも見ておる」

作 「なんか、この人もフリーダムだよな」

ル 「ほれ、次回予告はよいのか?」

作 「はいはい。次回、ついに完成?具現化マテリアライズ!?そして、思いついた奇策とは?」

ル 「期待しておれ」

作 「最後盗られた!?」

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