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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
1章 ≪異世界との遭遇≫
13/170

13話・AGAIN

―――side空志

 夜。ボクは客間が足りなくなってきたってことでリュウの部屋に布団を敷いて寝ている。そしてあちこち歩いて疲れているはずなのに、何故か真夜中に目が覚めた。窓の外からは、満月のやわらかな光がリュウの部屋を照らしている。

 リュウの部屋はよくわけのわからない本で埋め尽くされていた。適当に見てみると、そこには何故か『人心掌握の全て』とか『魔王として知っておきたいこと』とか『闇属性魔法一覧』とか変なものばっかりだ。

 まぁ、今はそんなことはどうでもいいんだけど。もう一度眠ろうとしたとき、小さなもの音が聞こえた気がした。


 「・・・泥棒?」


 いや、魔物の泥棒とか勝てる気がしない。


 「リュウ!」


 「・・・んだよ、眠ぃ」


 リュウはその言葉通り、ものすごく眠そうな目でボクを見る。


 「泥棒だ!」


 「・・・アホか」


 そう一言だけ言って、リュウは再びベッドに倒れるようにして寝た。・・・けど、確かに妙だ。ここは魔王様宅ということが分かっているはず。まぁ、そうじゃなくても優子さんが怖すぎる。こんな所に盗みに入ろうなんて考えるのは、色々な意味で勇者すぎる。

 たぶん、リュウもそれを考えてボクにこんなことを?


 「・・・けど、もしもって言うのがなぁ」


 むしろ裏をかいたのかもしれない。

 いや、確実にリターンとリスクの釣り合いが取れていないからなぁ・・・。とにかく、もしもの時の為に確認しておこう。


 そう思ってリュウの部屋から出る。すると人の気配がして、いきなりbぶつかりそうになる。


 「きゃっ!?」


 「・・・あぁ、リカね」


 小さくかわいらしい悲鳴を上げたのはリカだった。なんかよくわからないけど、リカはこうして夜に起きることが多いらしい。たまたま夜に起きたリュウとかから聞いていた。


 「どしたの?眠れないの?」


 「え?うん・・・まぁ」


 どこか曖昧な言葉でそう言う。リュウ達も最初はこの物言いに、そのふらふらの体で逃げる準備でもしようと考えていると思っていたみたいだけど、つい最近ではどうもリカが夜行性の魔物である可能性が高いってことで放置している。


 「大丈夫なの?昼も、夜の起きてて」


 「・・・うん、大丈夫。アタシは・・・ソラは、何で起きてたの?」


 「ううん。ボクはなんか目が覚めちゃってさ。そしたら物音がしたから起きてきたんだ」


 「・・・ごめん」


 リカが申し訳なさそうに謝ってきた。


 「いやいやいや。・・・けど、リカってなんか夜の方が顔色いいよね?」


 「・・・うん。夜は、アタシの生きる場所だから」


 リカはそういいながら悲しそうな表情だ。

 ・・・・・・。


 「まぁ、よくいるよね。夜型人間の人」


 「・・・え?そういうわけじゃ」


 「けど、それだとリカって夜行性の魔物なんでしょ?大丈夫なの?ボク等と昼間も一緒に遊んでてさ・・・いや、辛かったらすぐにいいなよ?」


 「・・・・・・ソラは、優しいね」


 「まぁ・・・なんかみんなから言われるんだよね。ボクは普通にしてるつもりなのにさぁ」


 「・・・うん、本当に優しい」


 ちなみにここまでみんなはほぼ全く同じことを言う。ほんの少し気恥ずかしくなってきたボクは部屋に戻るとリカに言う。


 「・・・あ、そうだ」


 「何?」


 一つだけ言うことを忘れていた。

 ボクはリカに向き直り、一言。


 「また、明日」


 「・・・うん。また明日・・・・


 リカは一瞬だけ驚いた表情だったけど、すぐに笑顔でボクにそう言ってくれた。

 月明かりに照らされたその笑顔は、とても奇麗だった。

 そして翌日、目が覚めるといきなりバッドニュースが飛び込んできた。リカが、どこかに消えてしまったと・・・。




 「大変だよ~!リカちゃんがいなくなっちゃった~!?」


 「昨日の今日で!?」


 「っち。少し油断したか・・・!昨日の夜、なんかそわそわしてと思ったんだけどな」


 そしてボク等は今現在、間家のリビングにて会議中。


 「せっかく、打ち解けてくれたと思ったのに・・・」


 「みゃぁ・・・」


 スズとレオの声にはいつもの元気がない。

 そしてボク等は話しあう。


 「で、何かてがかりは?」


 「これがあったの」


 優子さんが一枚の紙を見せてくれる。

 それは何かのメモで、そこには小さく、短い言葉が書かれていた。


 『少し、出かけます』


 「・・・何で、こそこそ出ていく必要がある」


 ボクもわけがわからない。

 何でいきなり出ていく必要がある?考えろ。何か、あるはずだ。

 あの後リカは楽しそうだった。なんかリュウが人魚の方々に結構からまれていたけど、それは置いとく。無意味に古い歌から、最新の曲。完全にネタに走ったりと、バカをしてた。

 しかも、リカは昨日の夜・・・。


 「『また明日』って言ってたのに・・・」


 ボクの言葉にリュウとスズがうつむく。

 アレは、嘘だったのか?一瞬だけそんな考えが頭をよぎるけど、その考えを彼方に捨て去る。


 「何か、理由があるはずだ。・・・何か」


 昨日、確かになんかリカの挙動が少しおかしかったのは覚えている。

 アレはただ、急に近づいたボク等の距離感に少し戸惑っているだけかと思っていたんだけど、どうやらそれは違うと考えてもいい。

 なら、何で挙動が怪しくなる必要があったのか。


 「・・・何か、隠したいことがあった」


 「空志君?」


 「大丈夫だ。今のソラは、傍から見てりゃヤベぇ奴にしか見えねぇけど、大丈夫だ」


 「リュウ君、フォローになってないよ~」


 なら、その隠したいことは何か?

 リカと出会って数日。正直な話を言えば、ボク等はまだまだ互いのことを知らない。それでも隠したいことがあった。それも、昨日の夜に突然。


 「いや、正確には昨日の夜に一個増えた」


 そう考えることが妥当。


 「・・・リュウ、紙」


 「ほい」


 リュウは何の疑問も持たずにすっとボクに紙とペンを渡してくれる。

 そこにボクは自分なりに情報をまとめていく。


 「・・・何で、こんな少ない情報だけで」


 「こいつ、無意味に悪知恵だけは働くんだよ。こいつのモットーは『罠は二重にそして全力で仕掛ける』だからな」


 「・・・結構、空志君は鬼畜だね」


 外野がなんか言ってるけど、続きを考えよう。

 そして隠したいことが一個増えてしまい、バレらマズいと思った。なら、なぜマズいと思ったのか。


 「ねぇ、何でバレたらマズいのかな?」


 「・・・知られたくないからだろ?」


 「何で?」


 「そりゃ・・・」


 「リカに、ここまで決断させる何かの要素が必要だ」


 それが何か、全く分からない。


 「・・・もっと、情報がほしい。・・・リュウ」


 「やっと出番か?」


 「門番、夜行性の魔物達に昨日の夜、リカらしき人影を見なかったか聞いてこよう」


 「わかった」


 ボク等は立ち上がり、リュウの家から出て行く。そして当たり前のようにレオはボクの後ろにとことことついてきた。


 「待って!わたしも行くよ~!」


 「・・・わかった。優子さんはリカが戻ってきたときに為にここにいてください」


 「分かったわ」


 そしてボク等は聞きこみを始めた。

 ボクとスズは念のためにログさん、アリアさん、そして中央門の門番さんの所に話を聞きに行く。

 まずは門番さんに聞きに行ったけど、やっぱりそこの人達にバレるようなへまを犯してはいなかった。リカのスペックはドラゴンの颯太さんに勝るとも劣らない。そんな身体能力を持っているなら、誰にも気づかれないように移動って言うのも簡単だろう。

 けど、そんな考えは簡単につぶされた。


 「あり得ないですね」


 ボク等の質問に答えた門番さんはそう即答した。


 「この魔窟ネストの周りには結界が張り巡らされていて、門を通る以外での侵入は不可能です。それこそ、ここの魔王様の結界を力づくで突破できるのは同じ魔王でしょう」


 「けど、出ることは・・・」


 「出ることも同じです。結界って言うのは、要するに球状の魔法障壁を張るのと同じですから。ですから、もちろん地面を掘ろうと思っても結界にぶち当たって不可能です」


 「けど、もしも破壊できたら?」


 「そうなれば、真っ先に魔王様に、そして自分達門番に連絡が来て、都市に警戒の警報が鳴るようにセットされています。そういうわけで、昨日はこんな所に誰も来ていないのは確実です」


 「・・・けど、夜遅いんだよね~?・・・こっそり寝ちゃったとかは~?」


 「・・・無理です、あり得ません。というかできません。死にます」


 「「・・・」」


 門番が顔を青くしながらそう言った。心なしか、声が震えているように思える。精神衛生上、とてもよくなさそうなので話を切り上げて次に行くことに。

 ・・・次は、まとめて聞こう。


 「あぁ?昨日リカを見なかっただぁ?」


 「あの、白い髪の彼女だよね?・・・ついに、ソラ君に愛想尽かして逃げちゃった?」


 アリアさんのたわごとはスルー。今はそれどころじゃない。


 「明らかにおかしいんですよ。書き置きには帰ってくるようなことが書いてありましたけど、それなら何で夜にこそこそ出ていく必要があるんですか?」


 「まぁ、そりゃそうだけどさ~」


 「それに、リカちゃんの体はまだまだ調子が悪いんだよ~!?」


 「みゃ」


 猫にまでボロクソに言われたアリアさんはログさんの店の隅でいじけ始めた。


 「だがなぁ、アリアの言うことも一理あるぞ?俺だって一人になりたいときぐらいある」


 「ほら!ログさんだってそう言ってるじゃん!」


 「うっとうしいです」


 無意味に復活してきたアリアさんを一刀のもとに斬り捨てる。


 「・・・ソラ君」


 「いい。無視しよう」


 「みゃ」


 レオもボクと同じ意見のようだった。

 続けてボクはログさんに言う。


 「嫌な予感がするんです。それに、何故かボクはリカが魔窟ネストにいないってわかるんです」


 「・・・なぜだ?」


 「前にいった、光が外に見えます」


 しかも、リカを見つけた時に見たやつだ。もしもあれがリカのことを示しているんなら、リカは魔窟ネストの外にいることになる。


 「お前、やっぱり・・・」


 ログさんが何かを言おうとしたとき、リュウが飛び込んできた。


 「ソラ!ビンゴだ。中央門に方向にリカっぽ人影が都市を走っていったっつー証言がとれた!」


 「やっぱり、外か・・・。ログさん、すみません。行くところができました」


 「わ、わたしもつい行くよ~!」


 「みゃ」


 そして、ボク等はログさんの店を飛び出していこうとすると、出た先で誰かにぶつかりそうになる。

 

 「あぁ、やっぱりここに・・・」


 そこにいたのは颯太さんだった。


 「んだよ、親父。今、オレ達は忙しい・・・」


 「隆介、それに空志君に鈴音さん。君達に、話さなくてはいけないことがあるんだ」


 真剣な表情で、颯太さんがそんなことを言う。

 ボク等はその表情に喉まで出かかった言葉を飲み込むようにして封じる。


 「実は、リカさんの正体について心当たりがある」


 その言葉は、唐突に放たれた。






―――sideリカ

 アタシはいま魔窟ネストを抜け出して、その外にある森にいる。

 気づいたのは昨日、みんなと帰ってから。

 アタシが借りている客間に入ると、ベッドの上に見慣れない手紙のようなものが置かれていた。気になって拾ってみると、それはアタシあての手紙だった。

 名前は書かれていなかったけど、だってそこには・・・。

 その手紙には、こう書かれていた。


 『お友達を傷付けたくなければ、湖まで来い』


 見るからに怪文書、というか脅迫状すぎる。こんなの書く理由はわかってる。たぶん、あの魔窟ネストのせいだ。

 あそこは魔物の都市。下手に人間が打って出れば簡単に無力化される。アタシ達がそんな所に逃げたから、アタシだけ呼び出して潰そうとでも考えていおるんだろう。

 アタシは最初、このことを話そうと思った。けど、どうしてもできなかった。

 みんなは、こんなアタシを友達だと言ってくれた。だけど、アタシはその言葉を最後まで信じられなかったんだと思う。本当に最低だ。自分に吐き気がした。

 なら、黙っていよう。それに、こんな手紙も無視しちゃえばいい。人間から見てこんな危ない都市、普通なら来ない。来るはずがない。


 『バケモノ・・・!』


 『来るな!』


 『騙していたな!』


 頭の中でそんな言葉がリフレインする。

 違う。ただ、アタシは・・・!


 「・・・怖い」


 正体を知られることが。

 そしてまた、繰り返すことが・・・。


 『大丈夫だよ~』


 『お前は、お前だろ?』


 『友達だからに決まってる』


 信じたい。・・・とても。

 あの三人の魔物と人間は、互いのことを知りながらもその関係を崩していなかった。むしろ、とても強固なもののように感じられる。

 あの中に、アタシも・・・。

 だけど、そんなことが無理なのはアタシが一番よくわかっている。だから・・・。


 「・・・もう、これが最後だから」


 ヒトを信じることは・・・。

 だから、お願いです。アタシから、取り上げないで。

 そしてアタシが辿りついた先には、ソラ達と出会った湖。いまだに氷漬けで、空気が冷たい。

 そこには、二人の人間が待ち構えていた。


 「待ってたわよ」


 「・・・」


 一人はアタシを襲ってきた少女。何も武器を持っていないけど、既にアタシは相手の領域に入っている。相手が使うのは『氷』系統の魔法。こんな氷の材料になるようなものがふんだんにある場所では、完全にアタシが不利だ。

 そして、もう一人は見覚えがない。

 中華風の服を着た、長身で長髪の少年だ。その顔は困ったような表情で笑っている。


 「すみません。貴方に恨み等はありませんが、こちらの方の仕事を奪ってしまったようなので・・・」


 そういいながら、確かに申し訳なさそうに何かの武術の構えをとる。


 「まぁ、そういうわけで二対一。・・・大人しく殺されてくれるわよね?」


 その少女は、とても獰猛な笑みを浮かべながらそう言った。


作 「というわけで『再び』をお送りします」

空 「いきなり、どうしちゃったの?」

作 「さぁ?」

空 「けど、何とかしなくちゃいけないね」

作 「そだね。じゃ、次回!リカちゃんを追いかけよう!」

空 「次回もよろしくお願いします!」

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