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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
6章 ≪季節はずれの幽霊編≫
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20話・MOON MANA

―――side空志

 「・・・コレ、どうすんの?」


 ボクは周りの惨状を見てとりあえずカレンさんに聞いてみる。

 幸いにも建物に被害はいっていないけど、周りの道路とかだけを見ると、ココを荒野と勘違いしそうな感じだ。

 さっきの魔法がどれだけ強力だったのかがよくわかる。

 まぁ、広場みたいなところだからだいぶマシだとは思うけど。


 「ええ、いい汗をかきました」


 いや、全然聞いてませんから。

 てか、ちゃんと話してください。


 「・・・すみません、そんないやらしい目で見ないでください」


 「オイなんでオレに向かって・・・ハッ!?」


 「リュウ、君~?」


 何故か、やたらと笑顔を浮かべるスズ。

 ・・・何故だろう、ものすごくデジャヴを感じる。


 「いくら、私の汗をかいたメイド服姿が扇情的だったとはいえ・・・」


 「オイ、お前、その口を閉じろ」


 「・・・SMプレイですか?」


 「違ぇよ!?」


 「放置プレイですか。・・・それでどれだけの女性を虜にしてきたのですか?」


 「リュウ君!」


 「スズ!?何でお前がんなに怒るんだよ!?ちょ!?痛い!?マジで!?杖で殴んな!!つか、わかった!何となくわかった!すまん!」


 リュウはカレンさんの策略によってスズから暴行を受けてた。

 ・・・でも、バカバカと駄々をこねる子供にしか見えないのが現状。むしろほほえましさを・・・。


 「ソラ?」


 「・・・あの、何故にボクに鎌を?」


 何故かぷいと顔を背けて不機嫌だとボクに訴えるリカ。

 ・・・何で?


 「・・・やはり、こちらの方が大変そうですね」


 「・・・アンタ、何がしたいの?」


 「わらわもこっちの方が大変かと思うのう」


 ・・・あの、とりあえず目の前の敵はやっつけれたけど、まだ事態は収拾していないよ?

 そこのところ、わかってる?


 「・・・ては・・・なら、な・・・・・・きょうの・・・とに・・・」


 小さな、怨嗟のようなつぶやきが聞こえる。

 そこには、さっき倒した神官が。


 「なるほどのう。予想より魔法妨害ジャミングで軽減されておるか」


 なるほど。だから、さっきの魔法を受けてなお意識をギリギリで保っていられるわけだ。

 ちなみにアレをまともに喰らって大丈夫な人は、まず、いないだろう。


 「神聖なる、我わ、れのま、ほうが、邪教、の使徒に・・・負ける、ことが、あってはならない!」


 「貴方の負けです。おとなしく、私に金目のものをよこしなさい」


 長ネギを突きつけ、強盗のようなことを言い出す不良メイド。

 ・・・ホントに、この人は大丈夫なんだろうか?

 というか、長ネギで本当にいろいろと減殺している。


 「金目のものなど、やるか!」


 「いや、真面目に返さなくてもいいですから」


 「神よ、この者達に、裁きを・・・!」


 そういうと、懐からさっきの黒い石、呪玉を取り出す。

 そして、それを握ると同時に、何かしらの魔法陣を展開。


 「っ!何をするつもりですか!?」


 時、既に遅し。

 パリンというガラスコップが割れるような音が響く。

 そして、静寂があたりを包み込む。


 「せ、精霊さん達が・・・!」


 「むぅ・・・。これは・・・」


 最初に反応したのは四条さんとルーミアさん。

 そして、変化は唐突に現れた。

 向こうの神官を中心に不快なとしか表現しようのない風が巻き起こる。

 それを感じ取ったのか、さっきまで強盗の物まねをしていたカレンさんもすぐにその場を離れ、ボク等のところにまで戻ってくる。


 「何が、起こっているのですか?」


 「うむ・・・見ておった方が早いかのう。・・・そういえば、ソラよ、その呪玉はさっさと捨てた方がよいと思うぞ?」


 「え?何でっうわぁ!?」


 いきなり、呪玉がもぞもぞと動き出したかと思うと、それはまるで生きてるかのように神官に向かって飛んでいく。

 そして、その上空でくるくると回りながら一つにまとまる。


 「・・・おぉ、あのアホ神官も危ないのう」


 「それはオレがする」


 そういうと、リュウは≪影抜け(シャドウ・パス)≫を展開。

 相手を影で包むと、そのままどこかに送る。


 「ジジイのところに送った。まぁ、コレでいろいろな意味で大丈夫だ」


 「・・・シュウ、いろいろとやばそうだけど無理?」


 「無理です!カバネさんの傷が酷すぎます!」


 どうやら、シュウはカバネさんの治療に移った模様。


 「動かせる?」


 「ダメです。もちろん、転移も」


 「この怪我で転移は無謀ですぅ。怪我をした人を転移すると、怪我した人はものすごく消耗するですぅ」


 「それが元で亡くなる方もごく稀にいます」


 「うむ。転移の魔法はその構成上、使用者だけでなく利用するものに・・・」


 どうやら、絶対にダメらしい。

 ルーミアさんの解説は難しいのでカット。


 「・・・でも、それだとかなりまずそうなんだけど?」


 「奇遇ですね。私も同意見です。と言うか、ご主人様が足手まといです」


 ・・・ホントに、このメイドさんはおかしい。

 そう思いながらもボクは詠唱を開始。


 「オイ、何でそれをやりだすんだ?」


 ボクはリュウの言葉を無視し、一振りの刀を生成。


 「・・・簡単だよ。呪力が、アレに集中してる」


 「マジかよ」


 ボク等の視線の先、そこにはさっきから黒い魔力が集中している。

 たぶん、ボクとルーミアさん、そして精霊魔法を使える四条さんに、呪力に敏感なカレンさんぐらいしかわからないだろう。


 「最悪と言うか、ある意味運がいいと言うか・・・」


 「何で?これって運が悪いんじゃないの~?」


 「いいえ、確かにソラのいう通りかもしれないわね」


 「僕も。要するに、ココには稲葉市の呪力が集中してるんですよね?」


 「・・・ソラか、ルーミア、奏がそれを浄化すればいいって言うこと?」


 「そうそう」


 「・・・ねぇねぇ、みんな何のお話してるの~?」


 「す、すみません。わ、わたしにもちょっと・・・」


 「・・・なぁ、俺でも何となくわかるのにコレはいいのか?」


 『タロウ、細かいことは気にすんな』


 ミストの言うとおりだ。

 この二人のボケは一から相手にしてたらキリが無い。

 ボクはいつものように刀を生成。

 たぶん、アレに有効な攻撃はコレか、スズの魔法ぐらいだと思う。


 「・・・来るぞ」


 ルーミアさんがそう言うと、呪力の塊は粘土の塊のようにぐにゃりと歪み、ある形を作り出す。いや、ある意味では作り出していない。

 そこに現れたのは、全長が十メートルと、相手にするのがバカらしくなるほどの大きさで、様々な動物の顔や四肢、体がつぎはぎにくっつけられたかのような生物。


 「合成獣キメラ?」


 「・・・そうとしか言い様がねぇな」


 「また、禁断魔法タブー?ドンだけ世界には法律守らないバカがいるのかしら」


 「いいえ、おそらく、アレは偶然でしょう。合成獣キメラは効率よく魔獣を生成し、軍事転用するために考え出されたものです」


 「つまり、アレは効率が悪すぎるって言うことですか?」


 「はい」


 確かに目の前の合成獣キメラは、まるで幼ない子供が粘土遊びをしていて、そこで何となく、くっつけたようなちぐはぐの体。そして、相手は動きにくそうにしている。

 よくみてみると足が七本ぐらいある。

 ・・・あれは、歩きにくそうだ。それに、胴体は団子みたいで、そこにいろいろな動物っぽい顔が張り付いていたりする。あんなところに、顔なんて必要ない。


 「・・・なら、ひょっとすると、今はかなりチャンスなんじゃ?」


 「何で~?あんな大っきいのに踏み潰されちゃったら大変だよ~?」


 「・・・そういうことか。ソラ、まさか、ココに呪力が全部来たのか?」


 「そう。魔法陣に突っ込まれた呪力も、増加した呪力も。だから、アレを浄化すればそれで終わり。・・・・・・なんだけど・・・」


 「どうしたの?何か問題でもあるの?」


 「おそらく、わらわ達の目が間違っていなければ、悪霊も取り込まれてしまっておる」


 「なら、またさっきみたいな精密作業か・・・」


 でも正直なところ、できれば呪玉は作りたくない。どうもアレにはよくない使い方があるらしいし・・・。でも、それ以外の方法となると、カバネさんが何とかするかぐらいしかない。でも、あの人はかなりの重症だ。無理をさせるのはまずい。


 「となると、ボク、四条さん、ルーミアさんが頼みの綱か・・・カレンさん?」


 「何でしょう?」


 「あれってさ、悪霊の一種っぽいものになってるみたいなんだよね。対抗策とか思いつかない?」


 「そうは言われましても・・・。私、死霊術ネクロマンシーはあまり使えません。ご主人様と違って適正はあまりないようです」


 要するに、さっきボク等が悪霊を浄化できたのは偶然で、かなり運がよかったっぽい。

 悪霊は拘束して未練を絶つのが浄化の近道。

 呪力によるものの場合はあんまり詳しく聞いていないけど、たぶんそんなに変わらないだろうと思う。


 「・・・そもそも、呪力のときに悪霊化したときはどうしてるの?」


 「・・・ご主人様が言うには、幽霊にとって呪力はガン細胞のようなものだそうです」


 なるほど、このときの悪霊化は苦しいから暴れているわけだ。

 なら、ガン細胞を切除すれば治る可能性があるか?

 ついさっきもそれで幽霊の魂っぽいのにお礼を言われた気がする・・・。


 「よし、それなら・・・。ルーミアさん!アレは攻撃しても大丈夫かな?」


 「うむ、おそらくは。少なくとも、侵食系の魔法構成プログラムは見当たらんのう。ちなみに、魂は合成獣アレの中心でコアを形成しておる」


 そうと決まれば・・・。


 「みんな、適当に攻撃して!体を削る感じで!」


 「で、相手のど真ん中を貫かなければいいワケね」


 「なら、ヤツをぶっ飛ばす!」


 そういうと、みんなが魔法で攻撃を始める。

 すると、合成獣キメラは攻撃の痛みで苦しみだす。

 その巨体を揺すると丸まり、体のいたるところから針のようなものを打ち出す。


 「何!?アレ!?」


 「突っ込む前に防御しろ!」


 「あ、≪相殺結界アンチ・エリア≫!」


 「か、風の精霊さん!」


 「≪月界ゲッカイ≫!」


 各々が魔法を発動し、攻撃から身を守る。


 「何、あのハリネズミのモンスターもどき!?」


 「・・・そういえば、呪力が設置されたところの近くにペットショップがありました」


 「・・・おい、何が言いたい?」


 「そこのハリネズミ、かわいいなと」


 「おぉ~。そうなんだ!」


 「わけわかんない!?この、ゾンビ何言ってるの!?」


 ・・・・・・たぶん、呪力に何かしらの影響を受けたんだろうってコトで納得しておこう。

 そして、ふと気付く。ボクや、スズ、四条さんが張った防御魔法に黒いしみができているのを。

 とっさに、手の中の刀を振るい、その部分を切り取る。

 みんなはボクの行動に驚いているけど、説明してる暇が無い。


 「リカ!ルーミアさん!触らないで!」


 「これって・・・!」


 「うむ!」


 ルーミアさんがマナの小さな弾丸を作り出すと、それでしみを吹き飛ばす。

 ・・・とりあえずは何も起きない。


 「・・・そうか、今度は受動パッシブじゃなくて能動アクティブになったんだ」


 「おい、さっきのは何だ?」


 「なんか、三谷が作った刀にも黒いのがついてるぞ?」


 「え?おわぁ!?」


 田中に言われて気付く。

 ボクは刀を放り捨てる。すると、刀は真っ黒に染まり、軽い爆発を起こす。


 「あ、危ない・・・。あれが侵食術式。あぁなりたくなかったら気をつけて」


 「・・・わかったわ」


 ボクはまた詠唱をする。

 今のところ、コレぐらいしか有効そうなのが無い。

 そして、ボクの手には一振りの刀が・・・。


 「嘘、でしょ?」


 「おい、何でわざわざ前のヤツにしたんだ?」


 まずい。

 今、ボクの手の中にあるもの。

 それは、初めてこの魔法を使ったときに出てきた、光で構成された剣だった。


 「ストックが、切れた・・・!?」


 「ソラ?さっきから何言ってるの?」


 「ボクの中にある、月の魔力が切れた!?」


 「・・・俺、意味がわからないんだけど?」


 「やはりのう」


 ルーミアさんを除いて、みんなが首をかしげる。

 でも、何でルーミアさんがボクの知ってるの?


 「てか、わかってたなら教えてくださいよ!?コレじゃ、威力が格段に落ちますよ!?」


 「・・・いや、おそらく、汝の魔力のことは知らん。想像はつくがのう。大方、月の出ておる日に、せっせと自分の中に純粋なマナを溜め込んでおったのであろう」


 「そして、それを先ほどの魔法に使っていたと言うわけですね」


 何故かやたらと魔法のことになると食い付きのいいメイドさんがルーミアさんとうんうんとうなずいている。

 そして、みんなは顔に驚きの表情を貼り付けている。


 「そうか、本当なら、お前は月の出ているときにしか全力で使えないんだっけか?」


 「で、月がでていない時のためにマナを自分の中に取り込んでいたってワケ?」


 「・・・要するに、魔力を貯金してたってことか?」


 『たぶん、そうだろうな』


 「ソラ君、節約してたんだね~!」


 「さすが、師匠!」


 「でも、それなら・・・どうするの?」


 ・・・・・・・・・・どうしよう。

 すると、ボクの手から光の剣が消える。

 アレ?魔法は解除していない・・・。


 「なるほど、コレは面白いですね」


 声の方向を向くと、そこにはカレンさん。しかも、手にはボクの造った光剣が。

 ・・・てか、ボクじゃなくても持てたのか。

 あ、リカが持てたか。


 「あの、それ返してください」


 「・・・ぽい」


 「ちょ!?『ぽい』って何!?『ぽい』って!自分で言ってましたよね!?」


 「・・・なんちゃってです」


 そういうと、捨てたかに見えた光剣を手品よろしくどこからともなく取り出す。

 ・・・なんだろう、ものすごくカチンときた。


 「おそらく、コレ自体が魔法陣なんですね」


 そういうと、突然、魔法も無しに光の剣が雷の剣に成り代わる。

 ボク等はその光景に驚く。


 「何で!?」


 「ですから、コレ自体が魔法陣なのです。それゆえに、私が魔力を流せば『雷』の属性が反映されます」


 そういうと、その剣を今度はマジで適当に捨てる。


 「って、今はボクに武器はコレしかないんですけど!?」


 「あんなしょぼいの、あってもなくても一緒です」


 「人の魔法をしょぼいとか言っちゃダメだって!?」


 これでもかと言う非難をボクはカレンさんにぶつけようとする。

 そこへ、カレンさんが言葉を重ねる。


 「もっと強い武器マホウ、欲しいと思いませんか?」


 たぶん、魂を悪魔に売り渡したら、悪魔はこんな感じの笑みを浮かべるんだろうと思った。



作 「と言うわけで、『月の魔力』をお送りしました」

奏 「し、師匠にはこんな秘密があったんですね」

作 「説明を入れるのを忘れてたんで、この際入れちゃえ!ってコトでいれました」

奏 「こ、こういうのって、そ、そんな風に決めていいんですか?」

作 「俺だから許される所業だ(キリッ」

奏 「す、すごいです!」

作 「と言うわけで次回!悪魔と取引するのか否か・・・選択するのは、お前だ」

奏 「な、何だか、ものすごく壮大そうな気がします!」

作 「あくまで気がするだけ!次回もよろしく!」

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