16話・VS NECROMANCER & GOAST
―――side空志
ボク等は人影を認識するとすぐに構える。
そして、そこにいたのはやはりと言うか、背中にスコップを背負い、怪しげなローブを被った、まさに死霊術師な感じの格好をしたカバネさんだった。
「・・・いきなり攻撃ですか?」
「まずは、疑えがワイの信条やでな」
「激しく同意できますね。でも、敵かどうかぐらい聞いたらどうです?」
「そうか?今回はちぃとばかし無理そうやでな」
みんなはボクとカバネさんのやり取りをただじっと聞いてるだけ。
まぁ、もしも敵じゃないなら戦わないに越したことはない。
「では、直球で行きます」
「なんや?」
「コレをやったのは貴方達ですか?」
「・・・えらい、面白いコト言うな」
ボクの言葉にすっと目を細める。
・・・これは、まさか・・・・・・。
「地雷踏んだ?」
「盛大にな」
みんながどうしてくれるんだとボクを白い目で見る。
・・・いや、まさかココでこうなるとは予想外だった。
というか、予想できる?そんなの、テレパシーでも使えないと無理じゃない?
「いや、たぶんボク等は敵じゃないと信じてますよ?」
「残念やな。ワイはお前を少しばかり八つ裂きにせんと気ぃすまんわ」
「死んでますよ!?人間には対話と言う世界平和も夢じゃない最終兵器があるんですよ!?」
「ワイはあえて核に手を出すわ」
ダメだ!?
既にこっちの話を聞く気が無い!?
でも、この感じだと絶対にこの人はボク等の敵じゃない。むしろ、同じ目的のためにココまで来たんだろうと思う。
でも、相手はかなりご立腹の様子だし・・・。
「しょうがないよ~。ココはソラ君が責任を取ろうよ~」
「俺もそう思います」
「私もですぅ」
「まぁ、死ねばいいんじゃね?」
『あぁ。俺様もそれで十分だと思うぜ』
「・・・ソラ、がんばって」
「助けて!?仲間が生命の危機だよ!?」
「「行くでぃ!?」」
いきなり変に舌を噛むカバネさん。
つか、さっき声がダブって聞こえた気が?
「おまっ!?いきなりしゃべんな!舌噛みかけたやないか!?―――だって~そろそろしゃべりたい頃合だったのだよ、キミ!―――知るかボケ!?・・・まぁ、ええわ。カリン、行くで!―――おうさ~!」
すると、その宣言どおりカバネさんがボク等に突撃してくる。
コレくらい優子さんに比べれば余裕だ。
それは、みんな同じなのか自分の得意な方法でそれぞれが防御の体制をとる。
「甘いのだ!」
「ッ!?」
そして、ボクは気づく。
以前似たようなことがあったことを。ただ、それはボクが実際に経験したことじゃない。
その時、ボクはその光景を見ていた。フェイントをかけられて吹き飛ぶシュウの姿を。
とっさに魔法陣を展開する。
「≪紫電≫!」
「ッ!?」
ボクの体に纏わりつく雷。
ボクに向かって鋭い蹴りを放とうとしていたカバネは無理な体勢にもかかわらずバックステップを踏み、ボク等から距離をとる。
そして、油断なくボク等を見据える。
「・・・ほう。一番弱そうなお前からケリつけようと思ったんやけどな?蹴りだけに」
「生憎、同じ手はボクには通じない」
「なるほどな。・・・何回も言うけどな、ワイは察しのよすぎる子は好きと違うねん」
やっぱりか。
でも、そんなことが可能なのか?
カレンさんの場合は、どっちか片方しか出ていないとダメだった。
それで、カレンさんの時は魔法を使って、カリンさんの時は格闘を使った。
その時、カレンさんが言葉を話し、カリンさん並の格闘技術を発揮するところを見ていない。だから、ボクは一つの人格につき一つの能力しか使えないと持っていたんだけど・・・。
いや、何かトリックがあるのか?
『おい。さっきのはあの妹の技じゃねぇのか?』
「たぶんね。でも、カバネさんの自我を持ったままカリンさんの力を発揮するなんてことできるの?」
『俺様にはなんとも言い様がねぇ。第一、死霊術自体が珍しすぎてよくわかっていないことのほうが多い』
「なら、呪力がどうのこうの言ってる場合じゃないね・・・」
そういうと、周りに呪力があるとかも無視して相手を≪月詠≫を発動させた目でしっかりと見る。
今回、呪力の規模がそれほどでもないのか、目に痛みはほとんどない。かなりラッキーだ。
でも、どんな魔法をも見破るこの目を持っても相手が何でカリンさんと同じことをできたのかはわからなかった
「・・・魔法じゃないのか、それともボクが未熟なだけなのか」
できれば後者であって欲しい。それなら、≪月夜≫で相手をぶった切ればなんとでもなる。でも、魔法じゃないなら・・・どうしよう?
そして、そんなことを考えていても、相手は何もしてこない。
どういうことかと思考にまわしていた意識を相手に向けると、そこには掌に魔力が集中している相手の姿があった。
ボクは、迷わず即銃の引き金を引く。
カバネさんはそれに驚くと掌に隠していた魔法陣をこっち向け、魔法を発動させる。
「―――汝に雷神の裁きを!
≪雷神之審判≫!」
ボクの≪雨雷≫のように上空に魔法陣が展開される。
ボクは銃をその魔法陣に向かって撃つ。
すると、魔法陣は破壊され霧散する。
カバネさんは続けて起こる異常な事態に驚いている。
そこをリカと双子が強襲する。
「ッ!?」
相手に考える暇を与えない完璧な連携。
ただ、相手はありえない反応速度で三人の攻撃をさばく。
「≪相殺殻≫!」
すると、今度はスズが敵も味方も関係無しに近接戦闘を繰り広げようとしている四人の周りに六角形の盾を展開させる。すると、まるで示し合わせていたかのようにリカがそれを足場に相手の死角から攻撃を繰り出す。
前の闘技大会の事件のときに見せたアレか。
「スズ!適当に閉じ込めて!」
「わかったよ~」
三人相手に猛攻を繰り出すカバネさんが相手じゃたぶん勝てない。
それに、たぶん敵じゃないし下手に怪我とかさせるのはダメだ。
なら、拘束するしかない。
「三人が離れた瞬間にね」
「大丈夫だよ~」
「・・・三人とも離れて!」
ボクが頃合だと思って声をかけると、三人は一斉に距離を取る。
相手は攻撃を仕掛けようとしていたのか、急に敵がいなくなってたたらを踏む。
そこへスズが≪相殺殻≫を詰める。そして、魔法を発動させる。
「≪相殺結界≫!」
≪相殺殻≫を媒介に半球状で半透明なドームが形成される。
「結界か?
―――迅雷の弾丸。
≪鳳雷弾≫!」
結界にカバネの魔法がぶち当たる。
ただ、結界に当たった途端に霧散して消える。
そして、魔法が無理ならとでも言うように拳で突く。
「っ痛!?・・・なんや、これ?・・・それに、お前等の魔法、いろいろとおかしいことばっかやないか」
「そうだね。ラッキーだったよ。もし、ここにいたのがカレンさんだったらこうはうまく行かなかったと思うね」
「そっか~。カレンさんはわたし達の訓練を見に来てたけど、カバネさんは見に来てなかったもんね~」
そう。簡単に言えば情報不足。
だから、急な事態に驚くことしかできず、それが致命的なタイムラグを生んだ。
「とりあえず、落ち着いてください。たぶん、ボク等は貴方達の敵じゃない」
「何を言うか。カレンがこの魔法陣を確認した時の驚愕的事実があんねん」
「驚愕的な事実、ですか?俺は魔法陣のことについてはあまり詳しくないのですが?」
「いや、そんなお前でも驚く。これは、『結界の魔王』の使う魔法陣と酷似しとる点がやたらと多すぎる言うとんのや」
その言葉にボク等はただただ驚くことしかできなかった。
要するに、コレは『結界の魔王』間龍造が作成したのかもしれないと言うこと。
「でも、龍造さんがそんなことするのはありえない。それに、ソラの魔法陣の先生だし・・・」
「そうですぅ!確かに、龍造さんは少しアホですけどそんなことはしないですぅ!」
「俺もそう思います。あの方は類まれなるアホですがそれだけはありえないと思います」
「そうだよ~。それに、龍造さんならきっと何か理由があるんだよ~」
「・・・自分等、ホンマに『結界の魔王』のこと信用しとんのか?」
「・・・いや、たぶん」
ボクも普段が普段だから特に何も言い返せない。
・・・やっぱ、普段の行いはかなり大切だ。
「でも、ボクも龍造さんがそんなことをするような外道に成り下がったとは思えません。それに、ボク等はたぶん同じ目的のためにココに来たはずです。呪力の浄化、違いますか?」
「・・・せや。けどな、呪力は普通の方法やと浄化できん。ワイの場合、呪力に敏感な幽霊のカリンが憑いとるで呪力の位置は完璧や。それに、死霊術にも浄化の方法はある」
「ま、行動で示しましょう。スズ、そこに≪相殺≫」
「わかったよ~」
そういうと、スズは長々と魔法を詠唱し始める。
そして、魔法が完成する。
「≪相殺≫!」
すると、呪力の嫌な感じが消える。
ボクの目で確認してみてもそこには何もなかった。
「よし、浄化完了」
「はぁ!?そんな早く終わるわけ無いやろ!?―――え!?本当に終わってる!?―――ホンマかいな!?」
「あ、コレで早いんですか」
「ホントだね~。わたし詠唱遅いのにね~」
「あれで!?意味わからん!?なにそれ!?」
「スズの属性は『逆』、魔法を無効化することに特化した魔法。今回はやっぱり魔法で無理矢理呪力を作ったみたいだったからスズの魔法で消せた」
「・・・んなアホな。『闇夜の奇術師団』には魔法を消す魔女がおるとは聞いとったけどな」
「えへへ~」
「・・・こんな天然丸出しの嬢ちゃんちゃんやとは思わんかった」
「「「・・・」」」
「ほぇ?みんなどうしたの~?」
うん。確かにこんな子がそんな凶悪な魔法使う子には見えないね。
スズは完全にアホの子のポジションだし。
「まぁ、そんなわけでボク等を信用してください。事態は一刻を争います。でも、コレで時間を稼げるはずです」
ボクがそういった瞬間だった。
ボクの背筋にぞっとする悪寒が走る。
何事かと周りを見ると、どうやらみんなも同じものを感じ取っているみたいだ。
心なしか、みんなの顔がほんの少しだけ青くなっている気がする。
「な、何・・・これ?」
「え?何だか、寒い・・・?」
『おいおい。マジかよ』
「ミスト!?これはどういうことだよ!?」
「シャン!大丈夫か!?」
「だ、大丈夫ですぅ。シャオは?」
「な、何でや?魔法陣の一部を崩したのに起動した?」
どうやら、魔法陣が起動してしまったらしい。
でも、何で?さっき、スズが魔法陣の一部を崩したのに・・・。
すると、疑問に答えるかのようにカバネさんの口が開く。
「簡単だよ。これ、ダミーだったんだね。たぶん、本命に使う呪力のポイントはもっと少ないんだと思う―――ホンマかいな・・・」
要するに、ボク等が浄化した呪力はただのダミーで。時間が間に合わず魔法陣が起動。
なんてヤツなんだよ。たぶん、黒幕はボク等が絶対に呪力を浄化することを前提にこんなことをしてきたことになる。そして、ボクの予想では確実に間学園近くの呪力は全部ダミーの可能性がある。
「・・・相手は相当に頭のキレがいい」
「せやな」
「でも、魔法陣が発動しちゃったけどどうするの?」
「とにかく、魔法陣を構成してる呪力の一部に行けばいい。そうすれば、ボクが魔法陣を分解できる。できなくても、スズに頼めば一発」
「そっか~。じゃ、早く行こうよ~!」
「うん。カバネさん、ボク等を信用してくれますよね?」
「わかった。それに、今はもめとる場合と違うでな」
若干、希望が見えてきた。
ボクはスズに結界を解くように頼む。
そして、幽霊は呪力に敏感と言う話を元にカリンさんに話を聞く。
「で、カリンさん。ココから一番近い魔法陣に使われている呪力は?」
「ゴメンね~。それはさすがにわかんない。普通にこんだけ呪力があったら、いくらわたしでもこんがらがっちゃうのだ~」
「さすがにそんな都合よくは行かないみたいですね」
「でも、こっちにはソラさんがいるので何とかなるはずですぅ」
「やっぱ、ソラが上から見たほうが早いと思うよ」
「それもそうか。・・・レオ」
「みゃ」
ボクはレオに一言声を掛けると、レオは了解してボクの後頭部から地面にすたっと降り立つ。そして、レオの体が光ったかと思うとそこには既に羽の生えた獅子の姿に変わったレオがいた。
「・・・何て言うかな、何でもありやな―――確かに」
「まぁ、コレで上からボクが見れば一発でわかる」
そういいながら、ボクが上へと飛び立つためにレオの背にまたがった時だった。
いきなり、轟音が響いた。
作 「と言うわけで『VS 死霊術師&幽霊』でした!」
リ 「・・・うん」
作 「・・・どうしたの?」
リ 「・・・つい最近、アタシが目立たない」
作 「あぁ。妖怪の癖に妖怪が怖いと言うギャグスキルを持ってるからね」
リ 「何で?何で、ソラとのあんなことやこんなコトが無いの!?」
作 「そこ!?そこなの!?」
リ 「え?むしろそれ以外に何があるの?」
作 「いや、普通に自分の出番とか」
リ 「アタシが欲しいのは、もっとこう・・・」
~妄想が入ります~
空 「ふ~。今日は汗かいたな。シャワーでも浴びようかな?」
ガチャ(脱衣所の扉を開ける音)
ガラガラ(風呂場の引き戸の開く音)
空&リ 「「あ」」
顔の赤くなる空志
空 「ゴメッ!?わざとじゃ!?」
リ 「むっふっふ~」
ヤバげな表情のリカさん
空 「・・・あのぉ、リカサン?」
リ 「とう!」
空 「いやぁぁぁぁああああああ!?」
リ 「って言う感じの」
作 「・・・いや、だってさ、あまりにも普通すぎて面白くないじゃん」
リ 「・・・それだけの理由で・・・・・・」
作 「なんかリカさんが落ち込んでいるが次回予告だ!」
リ 「もう、こんなグダグダなのイヤ・・・」
作 「突然の轟音。そこに現れるのは?」
リ 「・・・やっぱ、ソラと一緒に逝くしかないのかな?」
作 「と言うわけでリカさんがいろいろとヤバそうなので次回もよろしく!」
空 「あれ?リカどうしぎゃぁぁぁあああああ!!??」
作 「・・・・・・南無」