13話・CURSED MAGIC
―――side空志
アレから数日。
ボク等はおおむねいつもの日常に戻っていた。
すなわち、フルボッコのお時間。
「・・・では、今日はこれぐらいにしておきましょう」
「「「・・・」」」
既にボク等はリアルで屍と化していた。
もう、何も言う気力も起きない。
「・・・なるほど、大体わかりました。あれが彼の魔法スタイルですか」
「えぇ。大体はね。銃と徒手格闘に織り交ぜて魔法を使っているわ」
・・・何故か、隅でボクの魔法を観察していた使用人な生ける屍のほうが生き生きとしている気がしてくる。死んでるのに・・・。
「つか、何でまだいんだよ?」
「ご主人様が『ココおもろいな!少し遊んでから行くわ!』・・・とのたまりやがりましたので」
「・・・やっぱさ、絶対に主従関係がおかしいよね?」
普通はご主人相手に『のたまりやがった』なんて言わない。
「大丈夫です。問題ありません。ご主人は私がどんなことを言っても結局は言うこと聞いてくれるドM野郎なので」
「・・・カバネさんがかわいそうになりますね」
確かに。
でも、何故かボクにはそういったときのカレンさんの表情が少しだけ暗くなった気がした。いや、ポーカーフェイスだからよくわからなかったけど・・・。
たぶん、気のせいだ。
「だがお袋、今日はいやに早く終わったな」
そう言ってリュウは時計を指す。
ボクも時計を見てみると、まだ五限目が終わっていない時間。いつもなら放課後までぶっ続けでシバかれる。
しごかれるじゃないってところがとても重要。
「今日はお義父様がお話があるとかで一回手合わせしてからみんなに集まるようにって」
「へぇ~」
珍しい。・・・このパターンだと、舞さんとかライネルさんからの依頼か?
人間相手で、かつ穏便に済ませたいときはよくボク等が呼ばれて問題解決に向かう。
たぶん、この類だ。
「わかった。行くぞ」
ボクとシュウはリュウの言葉に従って理事長室に向かった。
理事長室に着くと・・・って、言ってもすぐそこにあるけど。でも、何で理事長室に訓練場なんかがあるんだろうとボクはほんの少しだけ疑問に思う。
とにかく、理事長室に着くと、そこにはボク等以外にも珍しい人が。
颯太さんに智也さん、ガントさん、
まぁ、今は龍造さんの話だ。
「全員来たの?・・・まぁ、わしからのありがたい話じゃ」
「御託はいいからとっとと始めろ」
「優子さん、この頃孫が冷たいのじゃが・・・」
「お義父様、早く話してください」
どうも、龍造さんに味方はいないようだった。
まぁ、普段が普段だからね。魔王の中ではだいぶまともな部類だとは思い始めてきたけど。
「わかった。本題じゃ」
そういうと、龍造さんはオホンと咳払いをしてからボク等を見て言う。
「今日からそれぞれにあった訓練をして行く、ということじゃ」
「・・・いきなりね」
「どういうことですぅ?」
「いや、俺に聞かれても・・・」
「簡単じゃ。例えば、ソラならば今後はわしが教える。後、ハル君もじゃ」
「へぇ~・・・。マジで!?」
ボクはやったとは声に出さず心の中でガッツポーズ。
若干二名ほどから嫉妬の視線を感じるが大丈夫だ。問題ない。むしろ完璧。これで優子さんの暴力から開放される・・・!
「無論、お主はわしが直々に体術も叩き込んでやるから安心しておくがよい」
「おぉ~!?すごいよソラ君!まおーさま直伝のすっごい技とか覚えられるかもよ!?」
「ソラスゴイ!?がんばって」
「し、師匠のし、将来は魔王様なんですか?」
女子三人が何故か目をキラキラさせてボクを見る。
・・・いろいろと方向性がおかしい気がする。それに・・・・・・。
「嘆けばいいのか、喜べばいいのか・・・」
正直なところ、ものすごく判断に困る。
だって、こんなのでも最強の『結界の魔王』だよ?たぶん、それなりに体術のほうも強くなければ最強なんて呼ばれないはず。
「安心せい。少なくとも優子さん並のスパルタではないからの」
「ぜひよろしくお願いします」
「ソラ先輩、即答ですか・・・。でも、僕もよろしくお願いします。」
そして、みんなの担当がいろいろと決まっていく。
リュウがまたも優子さんに当たったときは思わずボク等全員で合掌した。
ちなみに、リュウは決まったとたんにすぐさま訓練場に逆戻り。断末魔の叫びが聞こえた気がしたけど、たぶん気のせいだ。
ちなみに割り当ては、シュウが智也さん。双子は双子同士で格闘。たまにシュウと智也さんがそこに入る。スズ、冬香が颯太さん。スズは颯太さんの魔法授業はあんまりなのか微妙な表情だった。そして、四条さんが何故かボクというミラクルな結果に。
「何でボクなんですか?」
「それがの・・・精霊関係ならばエルフが得意なのじゃが・・・」
「わかりました。ボクでよければ」
なるほどと納得せざるを得なかった。
いや、知り合いのエルフとか残念なことに一人しかいない。四条さんまで毒牙にかける必要はないという判断なんだと思うことにした。
「で、リカは?」
「もちろん、そこのガント君じゃ」
「・・・理事長、俺の名前は原土元太です」
「なんじゃ?お主はガント君じゃろ?」
「・・・もういいです」
まぁ、いつものことだ。
でも、正直不安だ。
「大丈夫ですか?リカですよ?(いろいろな意味で)最強ですよ?」
「大丈夫じゃ。というわけでリカちゃんの担当はガント君・・・」
そこで、何故かすっと龍造さんの首元に大鎌の刃が。
「リカさん!?」
「何でソラと一緒じゃないの?」
ダメだ!軽くブラックモードが入ってる!?
ボク等は目に見えてパニックに陥った。
いや、見学に来てた死霊術師と生ける屍はきょとんとしている。
「なんや?どないした?」
「・・・さぁ?」
「っふ。リカちゃん、わしもいつまでもお主の頼み事を聞いてあげるとは思わんことじゃの」
「何で!?そこをカッコつける必要あるの!?」
「龍造さん!リカさんの言うことを聞かないと大変なことになりますよ!?」
「そ、そうだよ~!リカちゃんはソラ君が関わるとすごいんだよ~!?」
「バカ理事長!アンタ、ココに優子さん二号でも造る気!?」
一部ついていけてない人もいるが今はそれどころじゃない。
早く何とかしないと確実に血の雨が降る。そして、最終的にはボク自信を売らなきゃおさまらない。そんなことはイヤだ!
「アンジェリカ、お前はもう少しガマンをしろ。三谷と少し距離を置けば・・・」
「それ、前に龍造さんに言われて騙された」
「・・・そうか」
そういうと、ガントさんはしょうがないという顔をする。
そして、リカの首根っこを掴むと、猫か何かのように連れて行った。
「え!?何これ!?離して!はーなーしーてー!!」
「お前な・・・お前は力でのゴリ押ししかしてないから俺みたいなのが相手だと普通に負けるぞ?・・・力の使い方を覚えて三谷を振り向かせたらどうだ?」
「わかりました。教官!」
行く途中、何か会話が聞こえてきたような気がしたけどこっちまでは届かなかった。
ただ、さりげなくボクが餌か何かみたいに使われた気がするけど・・・。
「・・・これで全部じゃの。お主等は他に質問はあるかの?」
ボク等は特に何もないと首を横に振る。
龍造さんはそれを見て満足すると、解散するように言う。
そして、理事長室に残ったのはボクとハル君、そして四条さん。
「・・・で、龍造さん。ボク等は何するの?」
「簡単じゃ」
そういうと、龍造さんはどこからともなく紙とペンを取り出す。
「書き取りじゃ」
「・・・すみません、ワケわかんないです」
うん、ボクもそう思うよ、ハル君。
~数日後~
「今日もいい天気だね」
訓練担当の変更から数日。ボク等はそれなりに慣れ、魔法の練習をしている。
そして、夏が終わったにも関わらず、相変わらず厳しい残暑が続く。
そして、そん中をボクは・・・。
「三谷ぃぃぃいいいいい!!今日と言う今日は殺す!」
「「「死ねぇぇぇぇええええええ!!」」」
追いかけられています。
何にって?
もちろん、暴徒と化した生徒達にだ。
まず、この発端はコレ。
『おい、つい最近、学校内でメイドが出没するらしいぞ?』
『マジで?んなバカなことが・・・』
『・・・ご主人様はどこでしょうか?』
『『・・・』』
『あ、すみません、ココらへんにドMな青年がいませんでしたか?』
『『三谷か!?』』
『違うわ!むしろ何でボクがドMなんだよ!?』
『そうですよ。むしろその人は私に襲い掛かって・・・』
『『貴様ぁぁぁぁああああああ!!!』』
『誤解だぁぁぁぁああああああ!!??』
まぁ、そういうわけ。
偶然カレンさんを見かけたもんだからどうしたのか聞こうとしたら男子生徒A、Bの話に思わず突っ込んでしまい、カレンさんが非情にまずいタイミングで爆弾を投下してしまったがためにこういう状況になってしまった。
まさに主人公体質だ。
ボクは校舎を駆けずり回って何とか男子の追跡網を突破。
・・・何故かこの頃逃げるスキルが格段にあがった気がする。
「中々のものです」
「うわぁ!?いきなり!?」
突然、ボクの隣にメイド服着た生ける屍が現れた。
しかもプリン食ってるし。
「魔法も使わずにすばらしいです。驚嘆に値します」
「・・・あのぉ、貴女のせいでボクはあんな追いかけっこをするハメになったんですけど?」
「そうなんですか?酷い悪女がいたものですね」
そういうと、まるで自分は何も知らないとでもいうかのようにプリンをもぐもぐと食べる。・・・・・・てか、袋の中にあるのもプリンな気がするんですけど?
アンタ、プリン好きだね。
「それはそうと、ご主人様を見かけませんでした?」
「いや?何で?」
「いえ、コンビニでプリンを買ってきましたので。・・・あ、全部食べ終わりました」
「・・・うん、お使いぐらいちゃんとしようよ」
少なくともボクよりお姉さんなんだし。
買ってきたプリンを全部食べるとか・・・。
「お時間を頂、ありがとうございます。ではこれで」
そういうとカレンさんはどっかに行く。
まぁ、たぶん、カバネさんを探しにいってるんだろうと思うけど。
そして、そんなことを考えているとチャイムがなる。
「ヤバ!?遅刻だ!!」
ボクは魔法で転移するかどうか地味に悩みつつも普通に走って教室に向かった。
「ガントさん、酷い」
「いや、お前が悪いだろ?つか、何で遅刻した?」
ボクはリュウに休み時間の間にあったことをそのまま伝えた。
すると、リュウは呆れた顔になる。
「お前、トイレに行くだけでよくそんな風にできるな」
「やりたくてやったわけじゃない」
「・・・ソラだからしょうがないよ」
リカの一言にボクは泣きそうになった。
いや、もうなれたけど。
「お待たせ~!ゴハンに行こ~!」
スズの言葉にボク等はいつものように屋上へと歩いていった。
屋上に行く間に、冬香やシュウ達とばったり出会い、そのまま屋上に。
屋上はいつものようにあまり人がいない。
屋上は人がいそうなイメージがあるけど、別にそういうわけじゃない。
だって、ゴハンを食べるのにわざわざ屋上に上がるのは面倒くさいという人が多いからだ。大抵は教室か食堂で食べる人が多い。
まぁ、一時期はこの女子の力で屋上が花見よろしく場所が無いというふざけた状況に陥ったことがあったけど、何かしらの暗黙の了解ができたのかすぐにここには誰も来なくなった。
そして、そのボク等以外誰もいない屋上でいつものように適当に駄弁りつつスズお手製の昼ごはんを食べる。
でも、今回は違った。
「おい!」
『やべぇぞ!』
「ん?田中と、ミスト?」
今日はミストが気になることがあるとかで遅れていた田中とミストがあわただしく屋上に突撃してきた。
「どうしたの?田中君。・・・どうせ、アンジェリカさんのファンクラブが三谷君殺そうと必死になってるって情報?」
『んなどうでもいいこと違うわボケ!』
「いや、人の命どうでもいいってどう?」
『呪力だ!』
「え?えぇ!?・・・精霊さん達は何も言ってませんよ?」
「・・・リュウ、ボクの目って魔力に反応してる?」
「いや。いつも通りだ」
「いや、俺もよくわかんねぇんだけど・・・」
『タロウはいい。俺様が説明する。だろうと思ってたぜ。こいつはギリギリ精霊が感知できないレベルでいたるところに呪力が発生しているんだからな』
「え?えぇ?ほ、本当ですか?」
そういうと、四条さんは精霊と交信するために意識を集中する。
しばらくすると、ボク等を見回して言う。
「あ、あの・・・た、確かに、自然消滅してしまいそうなものがいくつかあるそうです」
「俺の聞いた話ではたまに呪力が複数発生することもあるらしいですけど?」
「そうなのですぅ?」
「では、ミストさんは何を問題視しているのですか?」
『問題だ。それが一定間隔で配置されていたらな』
「・・・一定間隔?配置?・・・・・・それって、まさか!!」
ハル君が驚きの声を上げるが、みんなはピンと来ないらしい。
そりゃそうだ。ボクもまさかとは思うけど・・・。
「魔法陣の、呪力バージョンがあるの?」
『あぁ。もちろんだ』
その言葉に全員が息を呑む。
まぁ、邪法を使ってるって言ってるのと同じだからね。
つまり、発動させればものすごく大変なことになる可能性が高い。
『今、情報魔のチビに理事長室に行ってバカ魔王にこのことを伝えるように言ってある』
「だが、何でお前が気付いたんだ?」
『俺を作ったやつが俺に魔力探知のレーダー的な魔法構成を組み込んだんだよ。んで、お前等と違って俺達は通学だ来る途中に呪力が等間隔で並んでたらイヤでも気付く』
なるほど。
要するに、ボク等は学園にいたから気付かなかったと。
「・・・おい、今すぐにジジイのところに行くぞ!」
そういうと、ボク等は理事長室に向かって走り出した。
作 「と言うわけで『邪法』をお送りしました」
龍 「なんじゃ、大変になってきたの」
作 「イエス!種蒔きは終了してるので全力でとばしてくぜ!」
龍 「その代わり果てしなく微妙じゃがの」
作 「自分でもそう思った!」
龍 「・・・」
作 「そんなわけで次回!いったいこの魔法陣は何のために?そして怪しい人は・・・」
龍 「次回もよろしく頼むぞ」