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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
6章 ≪季節はずれの幽霊編≫
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10話・BARRIER

―――side龍造

 「・・・君達、大丈夫か?」


 「大丈夫です!」


 「・・・たぶん」


 アレから三日目、俺達はハファリアさんの家に俺達は数法術の魔法文字コードについて勉強させてもらっている。

 だが、普通に難しい。

 大体、最初の数行にあるこの魔法文字コードは何かと質問したら『魔法の言葉だ』と真顔で返された。

 いや、俺達はその魔法の言葉を勉強しに着たんだけど?


 「・・・最初の言葉は本当に規則性がなさ過ぎるんですけど?」


 「まぁ、そういうものだからしょうがない」


 何だか、いろいろと疲れてきた。

 だが、面白いこともわかった。

 この数法術、なんと魔法文字の理解さえできれば自分オリジナルの魔法を作成可能らしい。

 そこで、俺達は考えた。

 もしも、魔法文字コードを作り出すことに成功すれば、抽象展開のときに魔法文字コード改良カスタムあるいは付け足して、数法術と似たようなことができるかもしれない。

 そうすれば、自分で作り出した物なワケだから普通に覚えるよりも簡単に魔法を行使できるようになるかもしれない。

 そんなことを考えつつ、俺達は教えてもらった後、いろいろと実験を繰り返している。


 「でも、数法術も昔の魔法陣を元に考え出してあったんですね」


 「あぁ。だから、君達に教えてもいいかと思ったんだ。それに、一から教えるよりはるかに楽だ」


 「・・・ぶっちゃけますね~」


 「龍造君、ココ間違ってるぞ」


 「・・・ガンバリマス」


 「やっぱ、龍造はダメね。ハイ!見てください、このわたしの華麗な魔法構成プログラムを!!」


 「ココとココ、それとここも違う」


 「・・・え?」


 「・・・どっちがダメなんだか」


 「≪ツルギ≫!!」


 「≪ジュン≫!」


 「・・・またかい」


 ここでも、俺達の関係はおおむね変わってなかったりする。

 しかも、ハファリアさんも慣れたのか数法術で水を操作して文字通り火の粉が降りかからないようにしている。

 ただ、変わったこと言えばひとつだけある。


 「・・・威力が制御できるようになったのはよかった」


 「ふん!これで続けて龍造に≪ツルギ≫を叩き付けれるわ」


 そう。俺達は魔法陣の制御に成功した。

 数法術は効率的に魔力を使い、少ない魔力で最大限の威力を発揮するということに重点が置かれていることに気付いた俺達は、その制御魔法文字をまず先に考えた。

 と、言っても数法術の魔法文字を使わせてもらっているだけ。ホントにこの人はいい人過ぎる。・・・たまに悪い人に騙されないかなと思う。


 「でも、できるようになったって言っても、制御だけなんだよな・・・」


 「そんなにすぐ結果が出るようなものでもないさ。この、数法術に関しても私の師の師から、つまり三世代かけてやっとこの程度だ」


 「・・・やっぱ、大変だな」


 わかってはいたつもりだけど、やっぱり人間だとそうなるのは当たり前だよなとも思う。


 「カオル、俺達が一生やってできるかどうかわからないってさ。どうする?」


 「いざと言うときは龍造に責任を取ってもらって・・・」


 「おい。何で俺が責任を取らなきゃいけないんだ!?」


 「大丈夫、龍造なら千年ぐらいヨユーでしょ」


 「何の根拠を持って言ってんだ!?つか、千年ってどういうことだ!?」


 「え?だって、いざと言うときは龍造が何とかしてくれるでしょ?」


 「いや、だから根拠は!?」


 「・・・龍造だから?」


 無茶苦茶だ!とか俺は講義の嵐を上げていた。

 表面上では。内心ではかなり焦っていた。

 もしかして、コイツは俺が魔物であることを知っているんじゃないか?一瞬だけだがそう思わせる言動だ。もし、俺とカオルが契約すれば確かにカオルの寿命をはるかに延ばすことができる。

 だが、別にコイツの前でそんなボロを出すようなことは何もしていないはずだ。

 どうせ・・・不本意だけど、俺を実験台に積極的に魔法の実験をするってコトだろうと思う。もし、前者の理由ならかなりおかしいし。


 「魔物は、全人類の敵・・・か」


 「ん?龍造、どうしたの?」


 「いや、何でも・・・。てか、こういう風にすればできんじゃね?」


 「・・・どうだろ?実験してみるしかないよね」


 「あ、俺トイレ」


 「まぁまぁ、待ちなさいって」


 「掴むな!ちびるぞ!?」


 「逃げなさんな、ダンナ・・・ふふふ」


 「お前がそんな笑いかたしても頭がおかしくなったとしか思えない!!」


 「・・・あぁ~・・・・・・何でもいいが、家は壊すなよ?」


 「待って!?ココは止めて!?」


 「龍造!許可も出たからやるわよ!!」


 「助けて~!?」


 俺は結局、いつものようにコイツの実験台になった。






 「・・・今日も死ぬかと思った」


 「死ななくてよかったね」


 「誰のせいでこうなったと思ってんだよ!?」


 「まぁまぁ・・・。でも龍造のおかげで新しい発見もあったし」


 「・・・確かに、そうだけどさぁ」


 俺達はエデンから家に帰る途中。

 村の近くにあるゲートから出て、村へと向かっている途中だ。

 俺達は魔法文字コードをハファリアさんの家で勉強してからいつもものところへ行って魔法の研究をしている。

 まぁ、今は俺達が考え出した魔法の改良を中心に魔法構成プログラムを考えている。

 まぁ、既に改良をして前とは比べ物にならないほど使い勝手がよくなってる。

 ・・・まぁ、結局のところ二つか三つしかないわけだけど。


 「でも、たった三日でココまでよくできたな」


 「ふふん。それはわたしが天才だからよ」


 「・・・まぁ、確かに天災だな」


 「何?龍造にしては珍らしいじゃない。もっとわたしを褒めなさい」


 「薫様は天災です」


 「・・・何で?全然褒められた気がしない」


 「冗談だろ?俺はこんなにも誠心誠意心を込めて言ってるんだぞ?」


 内容は確実に悪口だが。

 俺達がそんな取りとめのない話をしながら、いつもの林の中へと入る。

 そして広場のほうへ行こうとしたとき、林の中から複数の声がした気が。


 「あれ?誰かいるのかな?」


 「・・・でも、今って狩りのシーズンじゃないよ、な?」


 「・・・うん。この辺は冬になるとだから」


 今の季節は春も既に終わりかけの晩春。

 そして、俺達がココを魔法陣の練習場所にしている理由は人があまり通らない、なんだけどなぁ・・・?


 「・・・どうする?」


 「・・・ひょっとすると、迷子になった人かも?」


 俺達はそういうと、迷子だろう人を助けるべく声の下方向へと向かった。

 そして、そこにいたのは・・・・・・武装した・・・・魔物の集団・・・・・だった。

 俺達はそれを見て一瞬だけフリーズするが、俺はすぐにカオルの頭を押さえつけて藪の陰に隠れ魔物達に見つからないようにした。


 「な、なにあれ!?」


 「・・・魔物の、兵隊?」


 そうとしか考えられない。

 どこかわからないけど、別の領の魔王軍がココへ攻めてきたんだろう。

 だが、ココは魔窟ネストの領地。

 底から考え出される結論は・・・。


 「・・・魔王軍同士の戦争」


 「嘘!?」


 「バカ!声がでかい!」


 俺は大きな声を出したカオルの口を手で塞ぐ。

 カオルはパニックになるがすぐに落ち着きを取り戻す。

 俺は大丈夫だと判断してカオルの口から手を離す。


 「ど、どうするの!?」


 「・・・まず、お前はハファリアさんのところに逃げろ。俺が村に先回りしてココから避難するように言う」


 「でも、龍造が・・・」


 「大丈夫だ。村の人に伝えたら俺もすぐにハファリアさんトコに行くから」


 「それは困るなぁ」


 「「!?」」


 俺達はいきなり後ろから現れた影に気付かず、襟首を掴まれて子猫みたいに吊り上げられた。


 「は、離せ!」


 「・・・!?」


 俺は逃げようと必死に暴れるが相手はびくともしない。

 首を後ろに回してみてみると、そこにはまるでトカゲが人のように服を着て二足歩行してる姿があった。


 「蜥蜴人リザーディアン族・・・!」


 「ほぉ?よく知ってるな」


 「あぁ?・・・何だそのガキ?」


 「あぁ、ココで盗み聞きしてたんだよ」


 そういうと、俺とカオルをまるで荷物を扱うみたいに放り投げた。

 その投げた先には、多種多様な魔物の群れ。・・・間違いない。魔窟にこんな魔物はいない。

 俺は恐怖で動けないカオルを庇うようにして抱き寄せる。


 「・・・りゅ、龍造」


 「大丈夫だ。俺が何とかする」


 周りは魔物、二人で逃げるのは正直言って絶望的。

 どうする・・・・・・!


 「何だ?ガキの癖に騎士ナイト気取りか?」


 「・・・」


 「ハッ!ビビッて声もでねぇか!!」


 「とんだ臆病騎士様だな!」


 周囲の魔物達がその言葉に下卑た笑い声を上げる。

 でも、俺もそう思うよ・・・。

 こんなことになるなら、ちゃんと魔法を練習しとけばよかったな・・・。

 そうすれば、カオルを守れたのに・・・。

 でも、俺には・・・この力がある。


 「・・・カオル、俺が注意をひきつけるからその間に逃げろ」


 「で、でも、そんなことしたら龍造が・・・」


 「大丈夫だ。あの時の魔獣イノシシよりマシだ・・・。カウントは三だ」


 俺は数をカウントし始める。

 そして、両手を地面に叩きつけて魔法陣を展開し発動。


 「≪ツルギ≫!」


 地面に展開された大きな魔法陣から太い角棒が勢いよく飛び出る。

 リーダーっぽい雰囲気を持つ魔物の顔面に直撃し、カオルが逃げる。


 「・・・なんだ?この魔法?」


 「な、何で・・・」


 でも、完全な不意打ちだったにもかかわらず、魔法はリーダー格の魔物の手で簡単に止められてしまった。

 そのことに、カオルが思わず立ち止まり、逃げるタイミングを失ってしまった。


 「・・・少し、灸をすえてやらなきゃいかんな」


 そういうと立ち上がり、俺の目の前に来る。

 おもむろに俺へと、まるで虫を払うように手をさっと振る。

 すると、簡単に俺は吹き飛ばされた。


 「龍造!?」


 「だ、大丈夫だ・・・」


 幸い、体に怪我はない。

 たぶん、カオルの魔法の実験に付き合わされて受身がうまくなってたんだろうと思う。

 そして、俺は追撃を警戒して防御用の魔法陣を展開する。

 その姿を見て、相手は何かに気付いたようだった。


 「・・・そうか、そういうことか。やけに魔物を見ても平然としてるわけだ。それに、どこかで見た気もするわけだ」


 「・・・」


 「・・・龍、造?」


 たぶん、カオルにはどういうことかわからないだろう。

 いや、わかったかもしれないけど、認めたくはないだろう・・・たぶん。

 実は、友達が魔物で・・・。


 「『黄昏の魔王』の息子よ」


 魔王の息子なんて・・・な。

 それを聞くと、カオルは顔を伏せる。

 ・・・やっぱ、怒ってるのかな?

 だって、俺が魔物だってコト、ずっと隠してたんだもんな・・・。

 友達だって、信じてくれていたんだもんな・・・。

 それが、実は魔物だったとか・・・。裏切られたと思ってるんだろうな。


 「・・・カオル、ゴメンな」


 俺は、無意識に謝っていた。

 ホント、とんだ臆病騎士サマだ。


 「・・・バカじゃないの?」


 俺が謝った途端、カオルがきっと顔を上げると、俺を睨みつける。

 そして、俺のところにつかつかと歩いてくる。

 魔物達は、たかが人間の子供だとただ目で追うだけだ。


 「・・・そんな事・・・・、何となくわかってたわよ。それに、ただの人間があんなところにいるわけないでしょ?」


 「・・・はぁ?・・・じゃ、じゃぁ、何で俺と一緒にいたんだよ?」


 「そんなの、決まってるじゃない」


 そういうと、カオルは肩膝をついている俺を無理矢理立たせる。

 そして、同じ目線になると言った。






 「龍造は、わたしの数少ない、大切な親友だからよ」






 一瞬、俺はカオルが何て言ってるのかわからなかった。

 そして、次第に理解していくと、今度は次々と疑問が浮かんでくる。


 「でも、俺・・・魔物で、魔王の息子だ・・・」


 「違う。龍造は、バカで、お人よしで、魔法がヘタクソな、ただの子供なんだよ?」


 そういうと、今度は相手のリーダー格の魔物の前まで行き、カオルは睨みつける。


 「だから、わたしの親友を傷つけるのは・・・許さない」


 そして、カオルは自分の右手を素早く相手に当て、たった一言だけ言う。


 「≪ハッ≫!」


 零距離での魔法。

 使ったのは自分の魔力を全てを使って魔力的な特性を放出する魔法。

 しかも、カオルの魔力的特性は『爆発』だ。

 それを受ければただではすまないだろう。

 この光景を見て、相手はパニックに陥る。

 子供を殺せだとか、傷を治せだとか、事態の収拾がついていない。

 俺はこの気に乗じて逃げることにしようとカオルの手を掴む。


 「カオル!今のうちに逃げるぞ!」


 「もちろん!」


 そういうと、俺達はパニックに陥る敵の拠点を走り出した。






 走り出して数分。

 後から何かが追いかけてくる気配を感じた。


 「ちっ!もう来た・・・。カオル、大丈夫か!?」


 「・・・う、うん」


 次第に走るスピードに遅れが見えるカオルに俺は声をかけた。

 そして、後を振り向くと、そこには今にも倒れそうなカオルの姿があった。

 俺はすぐに急ブレーキをかける。


 「おい!?ホントに大丈夫なのか!?」


 「だ、大丈夫・・・早く、村に知らせ、ないと・・・」


 そういうと、カオルはぐらりと体のバランスを崩す。

 俺はとっさにカオルの体を支える。すると、手に湿った感触。

 手を見ると、そこは真っ赤な液体で濡れていた。

 俺が絶句していると、カオルは青白い顔で苦笑いする。


 「あ、はは・・・。バレちゃった」


 「バレちゃったじゃない!何で言わなかった!?」


 「だって、龍造、早く逃げないと、殺されちゃうじゃん。・・・それに、村の人だって」


 「それで、お前が死んだら、元も子もないだろ!!」


 そういうと、俺は覇気のないカオルを無理矢理背負い、走る。

 スピードは格段に落ちる。それに、走りづらい・・・。

 でも、こいつが死ぬのだけは絶対にイヤだ。


 「死ぬなよ!いや、むしろ死んでも生きろ!」


 「・・・龍造って案外無茶苦茶言うんだね」


 「無茶苦茶はお前の専売特許だろ!それに、そんな喋り方、お前らしくないんだよ!」


 「・・・そう、かもね」


 俺達にとっては通いなれた林の小道。

 今は何でこんなところを練習場所にしようとしたのかと、昔の俺達をなじりたくなる。

 いや、理由は魔法実験で関係のない人が巻き込まれないようにしようとしただけだったが。

 でも、こんなことになるなら・・・。


 「・・・ねぇ、龍造」


 「何だよ、置いて逃げろとかだったら、張り倒す」


 「違うよ。・・・もし、魔物と、人間が、仲良しだったら、こんなことにならなかったのかな・・・」


 人間と魔物。

 決して相容れることのない存在。

 それが、普通の、世間一般での認識。


 「・・・バカ野郎、お前がそんな事言うのか?無いなら造る・・・・・・、だろ?」


 「・・・そうだね。龍造なら、きっとできるよ」


 その言葉に、俺が反論しようとしたとき、カオルはいきなり何かを思いついたらしく、俺に言葉を言わせなかった。


 「龍造の属性、まだ名前決めてなかったよね・・・」


 「いきなりなんだよ・・・。今はそんな場合じゃないだろ」


 「龍造はさ、わたしの攻撃性の高い属性と違って、みんなを守れる力だよ?・・・だから、『結界』って言うのはどうかな?」


 「『結界』・・・?」


 「うん・・・意味はね―――」


 この言葉を俺は絶対に忘れないだろう。

 そんな子供の俺でも安易に想像がついた。

 そして、コイツとの誓いを絶対に忘れない。

 現実にしてみせると、このときに誓ったんだと思った。



作 「というわけでお久しぶりです!『結界』をお送りしました」

空 「ついに、龍造さんのヤツが・・・」

作 「そうそう。でも、それは次回に持ち越すぜ!」

空 「うわぁ・・・。こういうの、普通にウザい」

作 「・・・やめて、ハートが弱い作者がいろいろとダメになるよ?」

空 「はいはい、がんばってね~」

作 「スルー!?」

空 「じゃ、次回予告してよ」

作 「・・・何か釈然としないものがあるけど、次回!魔物の軍勢襲来!村人や、龍造にカオルはどうなる!?」

空 「次回もよろしくお願いします」


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