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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
6章 ≪季節はずれの幽霊編≫
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9話・MATRIX MAGIC

―――side龍造

 「あぁ・・・母さん?」


 「ん?どうしたの?・・・あ、今日もうまく魔法ができなかった?いいのよ、それぐらい。それに魔王の息子だからって魔王にならなくてもいいのよ?・・・それに、ここだけの話し、魔王は変な人が多いらしいからやめておきなさい」


 「おい。現役魔王の前で何を言うか」


 「うん、そんなことはどうでもいいんだ」


 「おい!?息子よ!お父さんの仕事だぞ!?それをどうでもいいってどうよ!?」


 「あら?じゃあぁ、何かしら?」


 「いや、明日さ。友達と遊びに行くから帰りが少し遅くなりそうなんだ」


 「そう?いつまでなら帰ってこれるの?」


 「・・・六時?」


 「・・・」


 やっぱり、あまりいい顔はされなかった。

 魔物でドラゴンだけど俺もまだまだ子供だし・・・。

 人間にバレたらいろいろと面倒だしな・・・。


 「はぁ、あんまり我侭言ったことがないからね。・・・しょうがない、今回だけよ?」


 「母さん最高!」


 「もう、ゲンキンなんだから」


 「おし、龍造。お父さんが小遣いやろう」


 「いや、別にいらない」


 父さんが床に手をついて滂沱の涙を流しているが気にしない。

 いつものことだ。

 まぁ、これでよかった。

 ・・・明日、カオルに殺されなくて済む。






~翌日~

 「で、お前、今度は何するつもりだよ?」


 「うん。さすがに、魔法文字を本当に・・・一から作るのは大変じゃない?」


 「・・・なんだ?お前、著作権無視するつもりか?」


 「違うわよ、バカつい最近、『数法術』って言うわけのわかんない魔法ができたでしょ?」


 「あぁ・・・。確か、なんか魔導機器デバイスって媒介使ってやる魔法な」


 つい最近、数法術とか言う小難しいものができたらしい。

 話によると、効率よく魔力を使って魔法を放つことに重点をおいた魔法らしい。これを使えば今まで無駄に消費されていた極微量の魔力さえ余さずに使えるらしい。


 「それがね、なんと、昔の魔法陣を応用して作ったっていってるじゃない」


 「そうなのか?」


 「うん。調べてみたら雑誌のインタビューにあった」


 「なるほど。つまり、その人に聞けばひょっとすると魔法文字コードをどうにかできるかもしれない、てことか?」


 「そう!わたしって天才!?」


 「でも、どこに住んでるか知ってるのか?」


 「モチ。このカオル様に掛かればちょいちょいのちょいよ」


 そういうとカオルはポケットから一枚の紙を取り出す。

 そこには、『神聖都市エターナルガーデン 三番街・○○-×××』と書かれていた。


 「・・・『エデン』かよ」


 「何か問題あった?」


 「いや、ないっちゃないが・・・」


 いや、かなりある。

 神聖都市エターナルガーデン。通称『エデン』。

 この都市は、魔物の脅威を払うために作られた都市だ。簡単に言うと、俺達魔物にとっての天敵。

 もちろん、この都市によって滅ぼされた魔物は山のようにいる。

 しかも、どこぞの魔王もやられたとか言ってた気がする。まぁ、やられたところはポッっと出の駆け出しだったけど。でも、父さん達の話では結構いい線をいってたらしい。

 そんなところに魔物の俺が行くって、なぁ・・・。


 「でも、『悠久の箱庭エターナルガーデン』で『楽園エデン』ってどうよ?」


 「・・・確かにイタい名前ね」


 俺は適当に話をふってカオルの疑問を彼方へと吹き飛ばした。


 「特に『有給の』ってあたりが泣けてくる」


 「違うからな?そんな怠惰な名前の都市じゃないぞ?」


 そんなんじゃそこにいるヤツが毎日有給とって仕事放棄してるニートの国になってる。


 「まぁ、そんなコトはどうでもいいからすぐにエデンに行くよ!」


 「ヘイヘイ。で、ゲートはどこだ?」


 「こっち」


 俺達はエデンの魔導師を訪ねに行くことになった。






 「・・・ここ、かな?」


 「・・・この町、大丈夫か?」


 「何が?」


 「何がって・・・」


 魔物おれがこんなところまで来ても気付かないってこと。

 魔物の排除をうた神聖都市ココが俺の存在に気付かないってどうだ?

 ・・・こんなんだったら普通に忍び込んで内側から奇襲かけたら制圧できる。

 そう思ったときだった。

 俺はいきなりものすごいプレッシャーを感じた。

 あまりの力の大きさに冷や汗が出る。体がこわばり、指一本すら動かせない。

 俺が隣を見ると、カオルも顔を青ざめさせていた。

 どうも、俺達は同じものを感じ取っているようだ。


 「余所者が何をしている」


 威厳に満ちた重々しい声。

 俺は言うことを聞かない体を無理矢理声がしたほうに向かせる。

 そこには、二十代ほどの白を基調とした軍服を着た青年がいた。

 そして、その青年が俺達にものすごいプレッシャーを放っている。

 周りの人はまるで何事もないかのように普通に過ごしている。


 「な、何、この、人・・・」


 「な、なる、ほど・・・。そういう、ことか」


 俺達にのみ伝わる恐怖。

 いや、たぶん、これぐらいのことはこの都市では日常茶飯事なんだろう。

 こんな、魔物よりも化け物らしい力を持ったヤツがいるのが当たり前なんだ。内側から攻めたとしても攻め落とせるかどうか疑問が残る。

 簡単に言うと、ここにいる人間、全員がものすごく強いんだろう・・・。

 俺はカオルの盾になるように前に出る。


 「・・・ほう」


 「隊長!何、子供をビビらせてるんですか!?」


 すると、傍から若い女性の隊員が出てくる。そして、俺達と同じ目線になって怖かったねーと言ってくれる。


 「ゴメンね~。あのおじさんが怖い思いさせちゃって」


 「・・・おい。俺はまだおじさんと言われる年齢じゃないぞ?」


 その言葉と同時に俺達に向けられていたプレッシャーがなくなる。

 俺達はその途端、地面に座り込んでしまった。


 「ちょ!?隊長!?この子達かなりグロッキーになってますよ!?」


 「おい、そいつはな・・・まぁ、いいや。悪い」


 二十代の男の人はそういうと頭をかきつつも俺達に謝る。


 「そんな適当な謝り方をして・・・。ゴメンね、僕達。このおじさんね、つい最近魔物大群が動くって情報聞いたからピリピリしてるの」


 「は、はぁ・・・」


 カオルがそう返事をするが呆然としたままで言葉の意味を理解しているのか怪しい。

 それを見て女性の隊員が俺達に質問をする。


 「じゃぁ、君達は何でココに来たのかな?」


 「ハッ!?そうよ、数法術のコト聞かなくちゃ!!」


 ・・・一気にカオルが覚醒した。

 このあまりの豹変振りに目の前の女性隊員さんも目を白黒させる。


 「『数法術』?つい最近、ここの先生が作った魔法系統よね?」


 「はい!わたし達、新しい魔法系統、『魔法陣』のことを研究しているんです!」


 カオルはここぞとばかりに目の前の女性隊員さんに熱弁をふるう。

 魔法陣の特徴。よい点、悪い点、そしてその改善点、俺達が考えて作り出した魔法、それをマシンガントークで。


 「へぇ~。こんなに小さいのにすごいね。偉い」


 「ちょっと、聞いた、龍造?」


 「まぁ、本音が詠唱がキライって所を話してないことはわかった」


 「≪ツルギ≫!」


 「≪タテ≫!」


 いきなり衝突する二つの魔法。


 「コラ」


 「「イタっ!?」」


 そして俺達は頭を叩かれた。


 「こんなところで魔法使っちゃダメでしょ~」


 「「・・・ハイ」」


 何故か、優しそうなお姉さんの後ろに般若が見えた気がした。

 俺達はその迫力に返事した。

 すると、その女性隊員は般若を引っ込めると俺達に優しげな微笑を見せて話しかける。


 「でも、こんなところに小さな子供だけで危ないよ?最近はこわーいおじさんとかがいっぱいいるからね」


 「・・・おい。そこで何で俺を見る?」


 「「わかりました」」


 「・・・ガキが」


 「隊長?」


 「・・・スマン」


 どっちが上司なのかいまいちわかりにくい上下関係だった。

 そして、女性隊員は俺達に遅くなるまでにお家に帰るんだよ?というと隊長と呼ばれた男の人と通りを歩いていった。


 「・・・じゃ、わたし達も行きましょう」


 「そうだな」




―――side女性隊員

 「隊長、何であんな小さな子供を怖がらせたんですか?」


 わたしは気になって隊長に聞いてみた。

 無論、子供とはさっき話した男の子と女の子の二人だ。


 「・・・お前、あれが何に見えた?」


 「はい?」


 「いや、すまない。変なことを聞いた。だが、これだけは言っておく。・・・あの二人の子供は、俺の力の大きさを測る器を持っていた」


 「はぁ?」


 「・・・簡単に言うとだ。あの子供達の力はおそらく相当強い」


 「・・・隊長が言うんでしたら、相当ですね」


 要するに、子供の時点でそんな力がある。つまりはかなり希少で強力な属性持ち。

 それに、自分達で作った魔法を実際に使い、行使していた。


 「将来、あの子達はエデンを脅かす存在になるかもな」


 「またまた。エデンに喧嘩を売るような人間はいませんよ」


 「確かに、人間・・ならな」


 そういうと隊長は口を閉ざし、黙々と城、つまりはエデンの王宮に向かっていった。

 でも、わたしが思うに、隊長が負ける姿が想像できないんですよね・・・。

 だって、属性『陽』を持つエデン最強の第一部隊オーディンの隊長なんですよ?




―――side龍造

 「で、ココか?」


 「・・・うん。ココみたい」


 俺達はとある一軒の家の前にいた。というか、若干信じられない。

 見た感じ、ごく普通の家。

 だが、ココは高級住宅街。むしろ普通の家があると違和感がハンパ無い。つか、家を建てるところを間違えている。


 「TPOをわきまえろって感じだな」


 「・・・確かに」


 そういうとカオルが周囲から浮きまくっている家のインターフォンを鳴らす。

 すると、しばらくして一人の初老の男性が出てきた。


 「・・・何か用かな?」


 たぶん、この人が数法術を作り出した人、ハファリア・ガニュス。

 俺はストレートに数法術をどうやって造ったか教えてくれとも言えず言葉を考える。

 要するに、この人の研究成果を見せろって言ってるのと同じだからな・・・。


 「まぁ・・・その・・・」


 「数法術をどうやって造ったか教えてください!」


 ・・・良くも悪くもバカ正直なやつがいたのを忘れていた。






 「はっはっは。いきなり言われて驚いたよ」


 「すみません。こいつがバカで」


 「何よ!?だって、ココには魔法文字コードの参考になりそうなことを聞きにきたのよ?」


 ハファリアさんはカオルのぶしつけな質問に一瞬だけ呆けたような表情をすると、次の瞬間には大きな声で笑い出した。

 俺はいきなりコイツが質問したもんだから、怒りを通り越して笑い始めたのかとひやひやしたが、どうもこの人はただ単におおらかな人だったらしい。

 ・・・おおらか過ぎる気もするけど。

 で、今は家の中に通されて応接室っぽいところでお茶をご馳走になってる。


 「で、数法術の魔法文字コードを知りたいのかね?」


 「ハイ!わたし達が作ってる詠唱系統、『魔法陣』の参考にしたいんです!」


 カオルはここぞとばかりに勢いごんで俺達の考え出した魔法陣について語りだした。

 ・・・なぁ、茶菓子をほおばりながら言うなよ。

 俺はカオルの横で何回も頭を下げた。なんか、そうしないと相手に悪い気がした。


 「・・・なるほど、まぁ、別に大丈夫だが?」


 「「いいの!?」」


 「おや?そのために遠くからはるばる来たんだろ?」


 「いや、こんな簡単に聞けるとは思わなくて・・・」


 「まぁ、確かにそうだろうね。魔法の研究成果は魔導師にとっての生命線だ。それで食ってるんだからね」


 「でも、それなら何でわたし達に教えてくれるんですか?」


 カオルも一応は厚かましいお願いをしていたことをわかっているらしい。

 少し申し訳なさそうにハファリアさんに聞いた。


 「まぁ、ぶっちゃけると、私の数法術は不完全だ」


 「不完全だから教えてもいい?」


 「いや、普通はそれでもこんなことはしない」


 「じゃぁ、何で?」


 「簡単だよ。君達みたいな子供が魔法に興味を持って、それで今の魔法をよりよいものにして欲しいと思ったからだよ」


 そう聞いて、俺達は思わず黙り込んでしまった。

 自分達は、他人のためと言うより、自分のために魔法陣を考え出した。

 魔法がうまく使えない。なら、使える魔法を作り出そう。・・・そう考えて。

 でも、ハファリアさんは未来ある俺達が今後の魔法をよりよいものにして欲しいために教えてくれるつもりだ。

 何故か、胸の奥にもやもやとしたモノが広がった。


 「でも、わたし達は自分のために魔法陣を作り出そうとしてるんですよ?」


 カオルも俺と同じ気持ちなのか、自分の中の正直な気持ちを吐露した。


 「それでも、だ。つい最近は、詠唱形態の魔法で既に満足している人が多い。でも、魔法の可能性はそれだけじゃないだろう?・・・そうだね、君達風に言えば、何だか、そういうのはイヤだって思わないか?」


 「「・・・」」


 どことなく悪戯っぽい笑みを浮かべて俺達に言った。

 そして、それはいつもカオルの言ってる言葉。

 カオルはできないから、不可能だから、下手だから、と言う理由で物事を諦めたくないと言う気質タチだ。

 そして、それは目の前にいるこの人にも当てはまるようだった。


 「まぁ、とにかく、私は未来を担う子供たちになら教えてもいいかなと思うんだよ。・・・で、君達はどうしたい?」


 そんなの、俺達の答えは決まっている。

 いや、本来はそのために来たんだから・・・。


 「「お願いします!」




―――side??

 「・・・どうだ?準備のほうは?」


 荘厳な空気を醸し出す一室。そこには大きな机を囲むようにして椅子に座る複数の影があった。初めに声を出したのは上座にある、一際大きな椅子・・・いや、玉座に腰掛けたもの。

 そして、その言葉に答えるために影のいくつかが立ち上がる。


 「は。やはり、平和ボケした領ですので簡単に潜入することができました」


 「軍備も補給用物資も手配済みです。兵の方もいつでも進軍させることが可能です」


 その言葉に玉座に腰掛けたものは満足げにうなずく。


 「では・・・三日後に軍を進めるぞ」


 「「「は!」」」


 そういうと、玉座に座った影を残して残りは部屋から出て行った。

 そして、誰もいない部屋に忍び笑いが漏れる。


 「くくく、待っていろよ?・・・・・・『黄昏の魔王』よ」




作 「すみません、遅くなりました。というわけで今回は『数法術』でした」

龍 「中二成分がこれでもかというぐらいにのっておるの」

作 「なんかこうなりました」

龍 「・・・なんかって、お主」

作 「まぁ、そんなわけで・・・がんばれ、昔の龍造さん!」

龍 「・・・わしは?」

作 「・・・がんばればいいんじゃない?」

龍 「軽いの!?」

作 「そんなわけで、次回!」

龍 「・・・わし、泣いてしまうぞ?」

作 「さて、結局なんか最後にあからさまなフラグってコトで・・・何かが起きます」

龍 「いや、何も起きん小説はどうかと思うがの」

作 「昔の龍造さん達の魔法陣は?そして旧魔窟ネストはどうなる?・・・というわけで次回もよろしくお願いします」





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