8話・DEMON'S FRIEND
―――side龍造
自分の中の魔力が渦巻いているのがわかる。
そうだ。これを詠唱による設定で魔法を構築し、そして魔法として世界へ干渉する力を放つ。
理論はわかる。でも・・・。
「・・・またか」
できない。
まったくできない。
さっぱりできない。
全然できない。
もうマジでできない。
本気ででき・・・。
「男がメソメソすんな!」
後頭部に何かが激突。そして俺の体はそのままぶっ飛ばされる。
地面をゴロゴロと転がって近くに切り株に激突して止まった。
・・・体中がものすごく痛い。
「何すんだよ!?」
「魔法が使えないぐらいで何?わたしだって使えないわよ!」
「・・・いや、それって自慢することじゃないよな?」
「シャーラップ!!人生、前を見て歩かなきゃいけないのよ!」
「いや、お前は前向きすぎだ」
「黙りなさい。とにかく、もっと強気に行かなきゃ!」
コイツとであって既に一ヶ月。
俺とカオルは今でも友達として日々を過ごしていた。
そしてここはカオルの村の近くの林にある少し開けた場所。俺とカオルは毎日のようにそこで適当に過ごしていた。
「でもさ、何でお前は魔法が使えないんだ?てか、俺と会ったときは普通に魔法使ってたよな?・・・暴発したけど」
「ん?あぁ・・・あれね。アレはまだ考え中なんだよね」
そういうと、カオルは地面に落ちていた枝を拾うと地面に何かを書き始めた。
それは、何だかやたらと複雑な魔法陣だった。
大きさは二メートルほど、そこにはびっしりと細かい字でいろいろな文字や記号で埋め尽くされていた。
「よし、これでオッケー」
そういうと、カオルは両手を魔法陣にぱんと音を立てて触る。
「魔法陣展開」
すると魔法陣が輝きだし、描かれた線が光りだす。
俺はその光景に見とれていると、カオルは魔法を発動させた。
「・・・≪発≫」
すると魔法が発動し・・・・・・大爆発が起こった。
俺はまたも吹っ飛ばされた。
「何すんだよ!?」
「イテテ・・・いいの。アレは」
「よくねぇよ!何で何回もぶっ飛ばされなきゃいけないんだよ!?」
「アレはね、古代魔法の一種らしいの」
カオルは俺の言葉を華麗にスルーした。
まぁ、いつものことなので俺はカオルの言葉に耳を傾けた。
「効果は使った人の魔力を全部使って、その人の属性の特徴を顕現させる魔法陣なの」
「・・・なるほど。要するにカオルの属性は爆発すると」
「・・・なぜかしら?全っ然褒められた気がしない」
「待て!その魔法陣をこっちに向けるな!」
俺達は無意味な追いかけっこを始めた。
そして、俺達が走りつかれて互いに冷静になる。
「・・・で、それがどうしたの?」
「わからない?これは、唯一個人でもできる魔法陣なのよ?つまり、詠唱以外の魔法展開ができるということ!」
ババーンと後に効果音がつきそうな感じでカオルが言った。
「・・・なぁ、知ってるか?大昔、魔法使いは詠唱じゃなくて魔法陣での展開が主流だったらしいぞ?」
「・・・へ?」
「つまり、フツーにできる」
「・・・」
そういうと、カオルは肩落として落ち込んでしまった。
・・・そんなに自分で新しい詠唱法を考え出したかったのかな?
すると、急に不気味な笑い声が聞こえだした。
いや、それは肩を震わせて変なオーラを醸し出しているカオルなわけだけど・・・。
「よっしゃー!わたしの時代到来!!」
「・・・医者、呼んでこようか?」
「いらない!よし、そうとわかればそれをこの時代に復活させるわよ!!」
「何で?」
「詠唱がヘタクソな子でも魔法が使えるように!」
「本音は?」
「わたし詠唱、大っキライ!」
ものすごく個人的な理由だった。
どうも、カオルも自分と同じで魔法がうまく使えないみたいだった。
「なぁ、俺もその魔法陣使ってやってみていいか?」
「え?いいけど?・・・何?自分の属性もわからないの?」
「うん、まぁ・・・そうなんだよな。自分もいろいろと試してみたけど、全然魔法が使えなくてさ」
「へぇ~わたしと同じじゃない。わたしもさ、『炎』の属性かと思ったんだけど、全然炎の魔法が使えないのよね~。てか爆発する」
カオルはそういいながら俺の手を魔法陣のところにつけさせた。
そして、魔力を込めるようにいう。
魔力を込め、魔法陣に魔力を流す。
「今よ。『魔法陣展開』って言って」
「魔法陣、展開」
すると、地面に描かれた魔法陣に自分の魔力が流れ、光を帯びる。
「じゃ、魔法名を言って」
「わかった」
そして、俺は深呼吸をすると魔法名を答えた。
「≪発≫」
魔法陣が一際輝く。
そして、自分の中にある魔力全部が持っていかれる。
未知の感覚に思わず手を魔法陣から離してしまいそうになる。
「ダメ!離したら魔法が暴発しちゃう!」
「わ、わかった」
そして、自分の中の魔力全てが魔法陣に注ぎ込まれた瞬間、それは起きた。
生まれて初めての魔法。
それは・・・。
「ごふ!?」
「ちょっ!?」
顎に何かが直撃する音と衝撃。
そして自分に降りかかる鈍い痛み。
何故か眼前に広がる青い空。
・・・どうも、今日は厄日のようだ。
「・・・で、何これ?」
「さぁ?」
痛みにうめいてから数分後。
それまであまりの痛みにのた打ち回っていたが、それも治まった。
そして、今目の前に広がっているのは透明なもの。
それが魔法陣の中心にある六望星を囲むように六角形の箱を作っていた。
正直、こんな属性は見たことが無い。
「・・・魔力を加工できる魔法?」
「そんなバカなって言いたいけど、そうかも」
そういうと、カオルは半球状のドームをバシバシ叩く。
「これ、物質化してる」
「具現化?」
「・・・さぁ?でも、具現化って魔力を武器に変換するんじゃなかったっけ?」
「だよな・・・」
元々、具現化は近接系の魔法使いが武器無しでも魔力さえあればその代わりになるものを作り出そうとした結果できたもの。でも、これは明らかに武器ではない。もし、形状を変化できるならそうかもしれないけど・・・。でも、できるとしても鈍器だよなぁ・・・。具現化は確かどんな武器でも魔法で再現できるって言うのがウリだからなぁ・・・。
「でも、どっちかって言うと、バリアーっぽいよね?」
「あぁ・・・言われて見ると確かに。・・・でも、そんな属性があるのか?」
「さぁ?」
子供の頭ではよくわからないことが多すぎる。
まぁ、機会を見つけて適当に探すしかないよね・・・。
「じゃぁ、とりあえずこの属性はなんて呼ぶ?」
「・・・う~ん・・・・・・『盾』?」
「・・・ダサい」
「でも、そうじゃん」
「そこは『バリアー!!』とかカッコイイのにしようよ!」
「どこがカッコイイの!?しかも何故か自分だけ他のと違う!?」
「いいじゃんいんじゃん。わたしなんか自分の属性は『火』の系統のはずなのに全然できないんだよ?」
「・・・そういえばさ、気になってたんだけど・・・」
「何で、わたしが詠唱で魔法使うんじゃなくて魔法陣でやろうとしたかってこと?」
俺はその言葉に素直にうなずいた。
考えてみればそうだ。
人間は、魔物と比べると希少属性が出やすい。そのために、自分の魔法の使い方がわからずに魔法を使えないという認識のままほったらかしにされることがある。
でも、別にそれでいいはずだ。
人間は希少属性が出魔物に比べて出てきやすい。でも、逆に魔力の素養がほとんどない人も魔物よりはるかに多い。だから、人間では別にそれほど恥ずかしがるものでもないし、できないのならば別のことをがんばればいい。そういう認識だと聞いたことがある。
「うん。正直、別に魔法が使えないからバカにされるとかないよ」
「・・・」
「でも、できないから諦めるってイヤなんだよね」
そういうとカオルは立ち上がり、くるっと俺のほうを振り向いた。
「だって、人生がんばればできないことは無いってお母さんが言ってたよ。それに生きてれば大抵のことができるって」
カオルはそこで一旦言葉を切り、俺を見据える。
「魔法が使える方法を探せばいい。ただそれだけでしょ?その魔法でいつか相手を見返してやればいいんだよ!魔法がダメなら他の事で!・・・・・・なんか間違ってる?」
カオルは何故か自信満々に胸を張っていった。
俺は自分のこと、特に友人関係のことを話したことはない。
いや、だからこそか?
カオルは何かを感じ取ってそういうのかな?
でも、魔王の息子の俺がこんな人間の破天荒娘に励まされるとは・・・。
「一生の不覚だ・・・」
「何で!?今は『お前のおかげで俺、がんばれるような気がするよ』とか言うところじゃないの!?」
「そんなのは三流小説の中だけで十分」
「むきぃー!!もう!バカなリューゾーはわたしの実験台になれ!」
そして今日も俺達は騒がしい一日を過ごした。
~数時間後~
「なぁ、父さん」
俺は家に帰ってくると、真っ先に父さんに声をかけた。
「何だ?そんなにかしこまって・・・。小遣いか?しょうがないな~。ちょっとだけだぞ?」
「そんなことよりさ・・・」
「・・・お前、そんな事よりって・・・もしかして、父さんと話したくない?」
父さんのアホな言動は完璧に無視して話を続ける。
こうしないと本題にたどり着けないのは既にわかっている。
「俺に、武器の使い方を教えて欲しい」
「・・・いいのか?お前は、どっちかって言うと頭で考えるタイプだろ?」
「つい最近、俺の友達に言われた。魔法がダメなら別のことで見返してやれって。でも、俺もアイツを見返したいって思ったんだ。だから、とりあえず魔法じゃなくて力で見返してやる。魔法がなくてもやれるって見せ付けてやりたい」
「そうか・・・。言っとくが、息子だからって手加減しないぞ?」
「上等」
こうして、俺は遅まきながらも一歩前へ進み始めた。
~二年後~
「待ちなさい!リューゾー!!」
「誰が待つかっ!?好き好んで実験台になりたいやつがいたら見てみたいわ!!」
二年の月日が経った今、俺は今日もカオルに追いかけられていた。
まぁ、内容はいつものように魔法の実験台・・・。
まぁ、魔力は確かに普通の人間よりかなりあるから問題は無い・・・んだけどなぁ・・・。
「大丈夫!今回は爆発しないから!」
「お前、それ何回目だ!?そう言って森の一部にクレーターを作成したのはどこのどいつだよ!?」
「アレはたまたま!」
「嘘つけぇ!!お前の実験のせいで毎日アザだらけになって帰る俺の身にもなれ!」
「何この子?この美少女の色白すべすべお肌で大和撫子なわたしにアザをつけろっていうの!?」
「全世界の美少女で大和撫子な人に謝れ!」
「ちょっと、それどういう意味!?」
「見た目だけの癖に!」
「むかー!!これでも学校では毎日告白されてるんだよ!?」
「嘘つけ!」
不毛な言い争いを続けながら俺達はそこら中を走り回っていた。
道行く人々に『あぁ、またこの子達は』的な目で見られる。
「今日も二人は仲がいいねぇ」
「「どこが!?」」
駄菓子屋のおばあちゃんにまで言われている始末だし・・・。
この後、俺は結局カオルに捕まっていつもの林にある広場まで連行されていった。
「で、今回は何すんだ?」
「うん。今回はなんかこう・・・魔力を剣みたいに伸ばせるのにしてみようよ!」
「あーうん・・・がんばれ」
「アンタがやんの!」
「何で俺・・・」
「だって、わたしがしてみたらまた爆発しちゃったもん」
「自分でやったんかい!」
俺がやる意味なくね?
「だって、リューゾーが使えそうなやつってこれぐらいしかないんじゃない?」
「・・・まぁ、確かに」
コイツは・・・。
俺達は既にいくつかの魔法を完成させている。
まぁ、自分の属性がどんなものかわからない以上、魔法陣の構成はあの自分の属性効果を顕現させる魔法をベースにそれを小さな弾丸として射出するとか自分の目の前に壁を作るとかしかできていないけど。
だが、やってみてわかったことだが、どうも俺の魔法陣は防御系が何故かすんなりとでき、逆にカオルは攻撃系がうまくいく。
・・・おそらく、性格の差だ。
「今、なんか失礼なこと考えたでしょ?」
「いえいえ、滅相もない。今日も薫様はお美しい」
「よし、爆破決定」
「何故だ!?」
俺は普通にお世辞を言ったはずだ!
「噓くさいのよ」
「ホントだったらどうするんだ!?」
「ほら、その言葉で少なくとも今回は本当じゃないんじゃん」
「・・・おい、『狼少年』の話知ってるか?」
「知ってる」
「アレはな、どんなに嘘つきな人間でも最後は本当のことを言うかもしれないって教訓なんだぞ?」
「あら?わたしはてっきり嘘つくと信じて欲しいときに信じてもらえないって言う教訓だと思ってた。というわけで死刑!」
「ちょ!?ま・・・!?」
「魔法陣展開・・・≪剣≫!」
ここでもう一度重要なことを説明しておこう。
俺達は、いくつかの魔法を完成させた。
その中でも、俺は防御系を得意とし、カオルは攻撃系を得意としている。
つまり、実験中の新魔法≪剣≫を一発で成功させやがった。
魔法陣から炎があふれ、爆ぜながら剣の形へと収束していく。
そしてそれを・・・。
「天誅ぅー!!」
俺に向かって思い切り振り下ろす。
「うおぉぉおおお!?≪盾≫!」
俺はこのとき、唯一使える魔法陣、防御系魔法≪盾≫を発動。
これはもはや俺専用の魔法となっていて、魔法陣を展開すると透明な壁が俺の周囲を囲うようにして守る。
そして炎の剣と透明な壁が衝突し爆音を響かせる。そしてカオルは予想外の効果と威力に吹き飛ばされる。そしていつも自分の魔法で吹き飛ばされるせいか空中に身を投げ出されながらもうまく受身を取る。
「ッチ。面倒な魔法を使いこなして・・・」
「おまっ!?殺す気か!?」
「大丈夫。龍造はそんなぐらいで死なない・・・といいね」
「おい!?」
普通に殺す気だったのかよ!?
俺はたまに・・・と言うかしょっちゅうカオルの人間性がわからなくなる。
カオルはぴょんと跳ねるように飛び起きると地面に魔法陣を描き始める。
「やっぱ、これじゃなくてこれなのかな?」
「これは普通の魔法陣ではあんまり関係ないって言ってなかったか?」
「でもさぁ・・・これって、全部の魔法陣にあるんだよね」
俺達は魔法陣の作成のとき、既存の集団用魔法陣を参考に個人用魔法陣を作っている。
今のところ魔法陣の効果と記号を照らし合わせ、共通する部分を抜き出し魔法を作っている。
例えば、集団用魔法陣の射出系の魔法が二つあったとするとき、共通するものを抜き出して、これが『射出』を意味する魔法陣の記号、あるいわ紋様なのではないかと仮定をたてて魔法陣を作っている。
そして後は実験。
今のところ、実験の結果はほとんどが何も起こらない。それかとんでもないことを引き起こして俺達が数日間寝込むといった感じだ。
「でも、炎の剣ができるはずなのに爆発するってどうよ?」
「・・・カオルだからじゃないのか?」
「天誅!」
「だからやめろバカ!」
いきなりキレるカオルをどうにかなだめると今回の本題へ。
「で、今回はどんな魔法陣だ?」
「ちょっと待ってて、確かここに・・・」
カオルは自分のポケットを探ると一枚の紙を取り出す。
そこには、鉛筆で描かれた綺麗な魔法陣が描かれていた。
カオルは魔法陣を描くことだけならばものすごく綺麗に描ける。
ただ、普段の字は女の癖にやたらろ男らしい字を書くというか・・・要するにヘタクソだ。
まぁ、今はそれよりも魔法陣だ。
魔法陣の特徴としてはそれを使用するとき、鮮明にイメージをして魔法陣を展開できれば魔法をすぐに発動できる。でも、これが難しい。だからこういう風に何かに描いてそれに魔力を流し込んで使うことが多い。
ちなみに、俺達は紙等に魔法陣を描いてそれを展開させる方式を媒介展開。
そして使用者の鮮明なイメージで展開する方式を抽象展開と呼んでいる。
「今回も紙に書いたけど・・・こういう剣とかは媒介展開よりもイメージの展開のほうが都合がいいと思うの」
「・・・俺も何となく言いたいことはわかる気がする」
「じゃ、やってみて」
「わかった」
俺は何もか描かれていない魔法陣を展開する。
そして、そこに少しずつ≪剣≫の魔法陣の記号を刻んでいく。
何回も何回も紙の見本と見比べながら魔法陣を作り、完成させる。
「じゃ、やるぞ」
「うん。・・・って、こっちに向けないでよ」
「わかってるって。じゃ、行くぞ・・・」
俺は魔力をその魔法陣に流し込む。
魔法陣が俺の流した魔力の分だけ輝きを増す。
「≪剣≫」
すると、掌に展開した魔法陣から六角柱魔法陣からにょきにょきと出てくる。
それは、とどまることを知らず・・・。
「ちょ!?止まんないんだけど!?」
「なるほど、魔力を流した量によって長さが変わる、と」
ダメだ!
コイツ検証始めやがって自分の世界に行っちまった!?
「おい!どうすんの!?」
「・・・そのうち止まるんじゃない?」
「アバウト!?」
そうこうしているうちにやっと止まる。
・・・つか、長い。
軽く五メートルは伸びた。
「で、どう?」
「・・・なんかさ、掌から伸びてて使いづらい」
この六角柱は俺の掌の魔法陣から直角に伸びている。ついでに掌から出てきたようにしか見えない半透明の六角柱をブンブン振る。
これなら普通に剣使ったほうが楽な気がする。この六角柱を握るにしても槍で言う石突を握って振り回すのはやりづらい。
「でも、そんなでっかいの持って重くないの?」
「いや、全然」
「重さはなし・・・っと」
カオルはいつものようにメモに何かを書くと俺が出した棒についていろいろと実験を始めた。
この状態で魔力を込めたらどうなるとかそんな事。
「・・・なるほど。・・・でも、これは龍造には向かないのかぁ」
「あぁ・・・まぁ」
「でも、魔力を切っちゃうと棒が消えるしなー」
「なんか、魔法を固定。みたいなことができれば楽だよな」
「あぁー。それ、わたしも最初のころそう思った。でも、よくある複数人数でやる魔法障壁を作るっていうのには定期的に魔力を補給すれば大丈夫ってゆーのがあった気がするんだよねー」
俺も一応は聞いたことがある。
その魔法は、主に篭城戦とかで使われていたらしい。篭城戦に持ち込むと、自然に長期戦になる。つまり、少しでも魔力を温存しようと考え出されたモノがそれだ。
「でも、知ってるのか?」
「そう。それが問題」
つまりは知らないと。
「・・・無理じゃね?」
「・・・気合よ」
「こうなったら、俺達が魔法陣の魔法文字を一から作ったほうが早い気がするな。さすがに模倣じゃ限界がある」
俺は無茶なことを冗談で言ってみた。
すると、カオルは顔を輝かせた。
「それよ!龍造にしては上出来じゃない!」
「・・・は?」
「そうよ・・・ないなら、あるいはわからないなら造ればいい!」
ダメだった。
もう本当にいろいろと。
でも、つい最近は俺達も魔法陣作成が滞っている。
まぁ、子供の頭でどこぞの偉い宮廷魔導師が何十年の時をかけてやることをやってるんだから当たり前だ。
まぁ、俺達の場合は模倣で下級下位魔法どころかそれを下回るレベルのお遊びのような魔法だったから何とかなったけど。
「・・・何よ。その可愛そうなものを見る目は?」
「お前、自分の言ってることわかってるか?」
「うん」
「お前な、どこぞの魔法を研究してる爺さんが数十年、あるいは弟子に引き継がせて数百年かけて作る魔法をたかが十年チョイしか生きてない俺達がやるっていってんだぞ?」
「それが何?」
俺はカオルにコトの重大さを教えようとしたがものすごく短い言葉で返された。
いや、それが何?はないだろ・・・。
「長く生きてなけりゃ魔法は作れないの?」
「俺達には知識がなさ過ぎるだろ?」
「そんな前々からあるようなものを使ってるからダメなのよ。もっと、時代は最先端を行かなきゃ!」
「・・・俺さ、聞いたことがあるんだけどさ、魔法の言語って、年間数万は生まれるけどその中で使えるのはたったの一つか二つあればいいほうなんだぞ?」
「なら、わたし達がその一つになればいいじゃない」
「・・・」
何を言ってもカオルの暴論ではじかれるような気がした。
いや、もう無理だと諦めるべきだとはわかっている。
でも諦めた瞬間、そこでいろいろと俺の人生が終了する気がする。
「でも、ただ適当に魔法文字を作ってもできるかどうかなんてわからないんだぞ?」
「大丈夫。考えてある。・・・てか、今考えた」
そこでカオルはニヤリと、やたら男らしく笑った。
こういうとき、大抵はろくなことじゃない・・・。
作 「というわけで『魔王の友達』をお送りしました」
隆 「てか、ジジイも昔はまともっぽかったんだな・・・」
作 「うん。なんかそうなった」
隆 「なんかって何だよ、オイ」
作 「それが俺クオリティ」
隆 「・・・」
作 「ま、そんなわけで次回予告。カオルが考えたこととは?」
隆 「・・・オレが思うに、こういうときは突拍子もないこと考えるんだろうな」
作 「自分も何故こうなった!?って思ってます。そして、次回は地味に重要なキーワードが登場!何故か重要なのは現代においてだけど!」
隆 「・・・そういうこと、回想でするか?」
作 「だから、自分でも驚きを禁じえない」
隆 「・・・」
作 「恐ろしい子!・・・自分!」
隆 「・・・あぁ~・・・。まぁ、何だ・・・次回も頼む」