夏の特別編・奇術師たちの休日②
今回は別の人のフラグを・・・
―――side隆介
「・・・眠い」
「そんなこと言ってないで、早く食べなさい」
夏の早朝。
オレを世話のかかるガキのように扱うのはもちろんお袋だ。
・・・別にそんなのんびり食ってるつもりはねぇんだけどな。
「ダメよ。もっと早く食べなくちゃ。鈴音ちゃんみたいに」
「あれは無理だ」
リカがソラの関係で限界を超えられるなら、スズは食い物で簡単に限界を超えられるヤツだ。残念ながらオレにそんな超技術はない。つかいらん。
「そう?」
「みゃ~」
「あら?レオちゃんおかわり?」
あ、そういやレオはソラの家で飼えないからってオレのところに回ってきた。
・・・つか、猫の癖に図々しいな。
それに何でお袋は息子のオレよりもレオのほうを可愛がってんだよ。
「・・・ごっそさん」
「お粗末さまでした」
オレはそういうと適当に家で過ごすことにした。
「・・・暇だな」
オレの部屋にいても特に何もすることが無い。
・・・でも、あいつらは基本的にここにはいねぇからな。遊ぶ相手もそんなにいない。
「・・・散歩でもするか」
オレはお袋に一言声をかけて魔窟の中を歩き出した。
メインストリートはいつものように人、じゃなくて魔物で賑わい、喧騒に包まれている。
そして、歩いていると一つの店から怒鳴り声が聞こえた。
「貴様、それでも俺の弟子か!?」
「いやいやいや!?だから弟子にしないでよ!?それにこれは不可抗力で!!」
「んなもん知るか!!魔道具は繊細なんだよ!!特に魔銃はな!!神金鋼でできてるからってそれはかわらねぇ。もっと丁寧に扱え!!どうしたらこんなバラバラになるんだ!?」
「魔力の込めすぎ?」
「このクソ弟子が・・・」
「だから、弟子じゃ・・・って、何でそんなもの出してくるの!?ちょ!?待って!?」
「発射!」
その言葉でログのおっさんところから火災が発生。つか、店に大穴が開いた。
その穴から二つの影が飛び出す。
「今日こそはコイツで魔道具のすばらしさと大切さをその身に刻んでやる」
「こっちだっていい加減にボクを弟子にすることは諦めろってわからせる」
バルカン砲の様な物を抱えたログのおっさんといつの間にか銃を構えたソラの二人だった。
警備のヤツ等は何ですぐに来ないと思ったらやってきた。
そして、すぐに結界を二人を囲むようにして張る。
「・・・おい」
オレは近くにいた警備の一人に聞く。
ちなみにオレはジジイの仕事柄で警備のやつとかなり昔からいる魔物なら大抵のやつは知っている。
「はい?・・・これは隆介君ではないですか」
「あぁ。で、何であいつらを止めない?」
「いや、こういうことは何回かありまして・・・。いえ、最初のほうは止めようとしたんですよ?」
そういうと結界の中からいきなり爆音が響く。
見てみればログのおっさんがバルカン砲型の魔砲をぶっぱなしてた。
そして、ソラはいつものように魔法で応戦してる。
「・・・さすがにアレを止めるのは無理だって事が中央警備隊の判断です」
なるほど。それならしょうがない。
オレもあの中に飛び込もうとは思わない。
それで、周りに被害を出さないように結界を張ることにしたってことか。
「ログさんが勝つほうに賭ける」
「いや、ソラのほうだろ?」
どうやらあの二人は結構な有名人になってるらしい。
「あ、コラ!賭け事は禁止!」
そういうと賭けをしようとしていたやつのところに注意をしに行った。
・・・まぁ、見てても面白くねえぇし行くか。
オレはそういうと再び散策を開始した。
だが、少し歩いただけでまたも足を止めるハメになった。
「おい!これって、学園の紋章の最新版!?つか、これが普通にここで普及してる!?」
「・・・これは・・・業物・・・」
「おぉ~!?何この機構!?オレッチに教えて!!」
「すばらしいですわ。ここまで珍しい銘柄の紅茶が・・・しかも安い・・・」
・・・いつからここには気軽に人間も来るようになった?
いや、目的が人間との共存だから問題ねぇんだけどな・・・。
すると、狙撃銃用の部品を見てた女子がこっちに気付いた。
「あ、三谷の隣にいた黒いの!!」
「違ぇよ。誰が黒いのだ。つか、何でいんだよ」
「え?普通に?」
普通にって・・・。
ここはエナードの中心よりほん少し南にある広大な森、通称『迷いの森』にある隠れ里みたいなもんだぞ?
ここに来るためには通行を許可を貰って自分の転移魔法を登録しないと来れない。
徒歩で来るヤツは確実に森の中で野たれ死ぬ。
万が一にもここの近くに来ても設置型の転移罠でランダムで森のどっかに転移される。
まぁ、前回のバグニールの進行はホントにイレギュラーだったとしかいいようが無い。
オレの疑問に答えるかのように影の薄い、つか、存在感を感じさせない男子がオレに言った。
「・・・我々は隆介殿の祖父殿に許可を貰っておりますゆえ」
「あぁ~。なるほど。わかった」
「でも、何でここの商品で似たようなのがこっちの学校に?」
今度はやたらと動物を連れた女子がオレに聞く。
「知らねぇのか?お前等んとこのサリナ理事長はウチのジジイと古くからの知り合いだ。それでたまにこっちが技術を提供、あるいは試作品のデータを取ってもらっている」
「なるほど」
そういうと向こうにいるヤツが全員納得した。
・・・つか、何でこういう状況になってんだ?
「お前は魔法剣使いではないか!!」
・・・何故だ?
こんなにうるさい人間の知り合いは一人しかいないはずだ。
だが、知り合ったのはつい最近、ここに来れるわけがねぇ。
「おぉ~?リュウ君だ~」
「お前かよ」
何故か向こうから大声の主、『七つの罪』で『憤怒』を司るヴァルス・サタンとその愉快な仲間達がやってきた。
スズと一緒に。
「まぁ、こいつ等が何でここにいるのかはわかった。で、何でここに来た?」
「魔物の統括する平和な都市を見てみたくなってな!!」
「うるせぇ!!」
「む!?すまんな!!」
ダメだコイツ。
他のやつ等もゴーイングマイウェイな感じでおのおのが適当に見てる。
・・・若干一名ほど歩きながら、そして時に立ち止まりながら寝るというふざけた技を披露してるやつがいる気がするが気にしないでおこう。
「すごいな。ソラの周りはこんなに個性的な人ばかりいるのか・・・」
「・・・そこで何故、オレを見る?」
オレは一人の男子生徒に突っ込んでおく。
つか、誰かこの空間を何とかしてくれ。
「そーいえばリュウ君はこんなところでどうしたの~?」
「散歩。特にすることもねぇしな」
「へ~」
「んじゃ。オレは適当に過ごしてるからお前等も暗くならねぇうちに帰れよ」
そういうとオレは今度こそあてども無く一人で歩き出した。
「・・・にしても暇だな」
オレは今、公園にいた。
アレから特に何も無くてオレは冷たい飲み物を買うと適当にベンチに座った。
・・・公園に一人とかねぇわ。
周りを見渡してもここにいるのはオレ一人。
こういうのを見ると世界にオレしかいねぇみたいだな。
まぁ、こういう風に静かなところで昼寝も悪くねぇか。
幸いにもここは木陰の中。
それに近くに池があってわりと涼しい。
まぁ、実を言うと魔窟は結界に囲まれててジジイがそれに特殊な術式を組み込んで夏でもそんなに暑くならないようにしてある。
まぁ、十分に暑いが。
まぁ、することもねぇし・・・昼寝だな。
オレはベンチにごろんと横になると目を閉じた。
・・・なんだ?
後頭部にやわらかい感触。
目を開けてみる。
すると、かなりの時間を眠っていたのか日が西に傾いていた。
そして、目の前には見知った顔。
「・・・何してんだ?」
「ふっふっふ~・・・膝枕だよ~」
いや、それはわかる。
わからないのは何でお前がそんなことをしてるかっつー事だ。スズ。
「う~ん・・・何となく~?」
「・・・そういうのはカレシにでもしてやれ」
オレはそう軽口を叩きつつ起き上がる。
そしてベンチに二人で腰掛ける。
「でも、いないんだよね~。一度でいいからモテてみたいね~」
・・・どの口で言いやがる?
さすがはパッシブスキルにゴーイングマイウェイLV5(MAX)があるだけはある。天然過ぎる。
「お前が言えば大抵の男子は涙を流すと思うがな?」
「え!?そんなに嫌なの!?」
「・・・逆だ」
「逆~?」
一瞬だけ泣きそうな顔になったスズはオレが否定すると余計にワケがわからなくなったような表情で首をかしげた。
「お前な、自分が周りと比べてかなり可愛い部類に入ってることに気付けよ」
「え~?だって、リカちゃんとか冬香ちゃんのほうが美少女だし、綺麗だよ~」
「比べる対象を間違ってる」
それにあの二人はスズとは違う系の顔立ちだ。
ま、冬香が女子にしては凛々しい雰囲気で綺麗。リカが花も恥らうの美少女ならスズは可愛い。
どれも似たような意味と思ったヤツ、これが違うんだな。
「だって、二人とも学校にファンクラブがあるって噂だよ~?」
「おい。お前もあるぞ?」
ドンだけボケる気だ!?
さすがに疲れてきたぞ!?
「またまた~。嘘でもうれしいよ~」
「・・・何だか疲れてきたな」
コイツに熱を上げている男子のヤツにオレはエールを送ろう。
「そうか、誰かに似てると思ったら、お前はソラに似てんだな」
「ソラ君に~?」
「あぁ、主に自分が全然にモテないと思っているところが」
「そんな!?いくらわたしでもそれぐらいはわかるよ~!?」
「いや、わかってねぇだろ」
そこでオレはふと思った。
・・・コイツは、オレが魔法を庇ったときに過剰なまでに反応し、魔法を暴走させ、結果的に真言らしきものを発動した。
オレの記憶が正しければ今までに死ぬような目に何回もあってたにも関わらずだ。
「わかってるもん・・・。だって、リカちゃんがソラ君にゾッコンなのは知ってるし、二組の・・・」
「お前さ、何であの時魔力が暴走したんだ?」
「・・・え?」
スズは突然の質問にほうけた表情になる。
そして、何故か顔を少し赤らめる。
「・・・リュウ君の裸を見ちゃったんだっけ?」
「おいコラ、変な部分のみを思い出すな」
「リュウ君がわたしのせいでお婿に行けなくなっちゃった~!?」
「・・・で、何であの時は異常に反応した?」
そう聞くとスズは少し赤い顔のままオレに言う。
「・・・あの時ね、リュウ君が死んじゃうかもって思った」
「大袈裟だな。あそこはそういう大会だ。ちゃんと対策ぐらいしてあるに気まってるだろ?」
「・・・うん。でも、すごく不安だった。このまま、わたしの手の届かないところに行っちゃうかもって思った」
そういうと、スズは何を思ったのかオレの左手を自分の右手でぎゅっと握った。
まるで、どこにも行かないで欲しいとでも言うように。
「おいおい。オレはまだ十五年しか生きてねぇんだぞ?まだまだ死ぬつもりは無い」
「でも・・・」
スズは更に手に力を込める。
そんなに強くは無い。だが、何故か絶対に離れない・・・そんなような気がした。
「そうじゃなくてもイヤだったよ。・・・リュウ君を見てるとね、傷つくところを見てるとね、何だか・・・苦しくなるの・・・」
いつものスズでは見れない切なげな表情だった。
オレは静かにスズの言葉を聞いた。
「・・・まるで、告白だな」
「・・・うん、そうだね。わたしは・・・リュウ君のコト、好きなのかな?」
「疑問系かよ」
「だって、わかんないんだもん」
「・・・まぁ、オレ達はまだまだガキだしな」
そういうとオレは雲ひとつ無い快晴の空を見上げた。
空は青く、突き抜けるように高い。
「・・・でも、つい最近はリュウ君に会うとちょっとドキドキする。それにずっと一緒にいたいって思うときがあるよ~」
「・・・いきなりカミングアウトか?」
「そだね~。カミングアウトだよ」
スズを見ると照れた風な顔で言う。
・・・コロコロ表情を変えて大変なヤツだ。
「だが、いきなり言われても困るな。うれしいけどな」
「何で?」
スズは残念そうな表情で言う。
・・・オレとお前には決定的な差がある。
「オレは竜で、お前は人間。この差はでかい」
「?」
「人間の寿命は大まかに見て百だとすると、竜は千年を生きる」
「え?でも、さっきはリュウ君も十五年しか生きてないって・・・」
「あぁ。魔物の特徴で大抵の魔物は人間で言うところの成人、つまりは二十歳ぐらいまで人間と同じような成長スピードだが、そこから変化が現れる。急激に成長スピードが落ち、その種族の天寿を全うする。だから、大抵は同種族間で交際とかしてんだ。あるいは寿命が近い種族同士とかでな」
そうしないと、片方が悲しむ。
大切なヤツを先に亡くすんだからな。
「・・・じゃぁ、吸血鬼は?」
・・・聞くと思った。
リカとソラが心配なんだろうな。
「・・・吸血鬼は、寿命が存在しないと聞いている」
スズはその言葉で悲痛な表情になった。
・・・だろうな。リカはソラに自らを捧げるかのように依存している。
それこそ、ソラが死んだら確実に後を追うぐらいに。
「でも、リカちゃんはそのことを・・・」
「もちろん知ってる。自分自身のことだしな。・・・だが、これには例外がある」
「例、外?」
「あぁ。特殊な方法を用いることによって長いほうの寿命に依存させる。簡単に言うと竜と人間がこの方法を使えば相手の人間が千年生きられるようになる」
「え?じゃぁ、そうすればいいじゃん」
「・・・よく考えろ。その間に、自分の家族や友人、そいつらが先にどんどん死んでいくんだよ」
スズははっとした表情になり、うつむく。
そう、どっちにしても辛いことに変わりない。
一人をとるか家族をとるか。最悪な二者択一。
普通は無理だ。選べない。
「だから、リカは自分から告白しねぇし、そうしようって言わねぇんだよ」
ソラ至上主義のヤツだからな。
ソラに辛い思いをさせたくないんだろうな
だから、今を、そしてこの瞬間もリカはソラと少しでも長く過ごそうとする。
「・・・はっ!そういえば重要なことを聞いて無かったよ~!」
「・・・おい、さっきまでのシリアスを返せ」
スズはオレの言葉を無視してぐいと顔を近づけた。
「わたしの告白モドキを聞いてリュウ君はどう思ったの?」
「・・・言わないとダメか?」
オレはガラにも無く弱気な声でスズに聞いた。
だが、スズは首をぶんぶんと縦に振って先を促す。
「オレは・・・わからねぇな」
オレがそういうと、スズは一瞬、ぽかんとした表情になり、そしてぷくぅと頬を膨らませた。
「むぅ・・・ズルイ」
「お前もわからねぇっつーただろ!?」
「ズルイ!!そういう時はオトコノコは甲斐性を見せなきゃいけないんだって美未ちゃんと冬香ちゃんが言ってたよ~!!」
あの二人の言葉を真に受けるなよ!?
アレは面白半分で言うことが大抵だぞ!?
オレとスズはしばらくの間、互いにぎゃーぎゃー騒いでいた。
手を繋いだままな事に気付かないまま・・・。
「・・・なんでこうなった?」
いつの間にか周りは暗くなっていた。
そして、スズは疲れたからかオレの肩にもたれるようにして眠っている。しかも、さっき気がついたが手がぎゅっと握られたままだ。解こうにも解けない。
・・・オレにどうしろと?
「いやぁ、熱々だね」
「で、お前はいつからいた?」
オレは後から聞こえた声に特に驚きもせずに答える。
冷やかしはガン無視だ。
「ホントについさっきだよ」
ソラはオレの近くに来ると、オレとスズをしげしげと眺めた。
「スズはリュウの好みどストライクだからね」
「おい、バラすなよ?」
「別にいいじゃん。みんな知ってるって」
「いや、断言する。絶対にお前以外は知らない」
「鈍感だね。リュウがスズをいつも守ってることぐらいみんな知ってるって」
「・・・お前にだけは言われたくねぇ」
「それに寝てるところを起こさないあたり、優しさが滲み出てる」
うるせぇ。
オレの言葉を無視すんな。
「で、何でこうなったの?」
「・・・成り行き」
「そっか」
ソラはそういうと暗くなり始めた夕暮れの空を見る。
「まぁ、なんにしても後悔の無いようにとだけ言っとくよ」
「うるせぇな。お前はオレのお袋か?」
「優子さんならスズと付き合うぜ!って言っても、はいはいで済ましそうだけど」
「お前、甘いな。お袋のことだからスズを泣かせたら絶対に息子のはずのオレが殺される」
「あぁ・・・なるほど」
そういうとソラはそれがあったかと手を叩く。
だがな、オレは攻撃されっぱなしっつーのは性にあわねぇ。
「お前も早く帰らねぇとリカに殺されるぞ?」
「・・・マジで心配になってきた」
ソラは顔面を蒼白にしていった。
ざまぁ。
「じゃ、ボクはダッシュで帰る!!リュウもスズを送ってってあげなよ!!・・・それとリュウ、ゴメンね」
「あ?」
オレが何故急に謝ったか聞こうとするとソラは南門に向かった。
そこにある門で学校に行くんだろう。
「んだよ。おい。起きろ~」
オレはスズを揺すって起こす。
すると、スズは眠そうな目をこすって起きる。
「おはよ~・・・あれ?何でリュウ君が家にいるの?」
「バカか?ここは魔窟だ」
「おぉ!?お昼寝しちゃった!?」
「・・・まぁ、いい。とっとと帰るぞ。とりあえずオレがお前んちまで送ってく」
「うん!了解だよ~!」
そういうとスズは寝起きのはずなのにやたらと元気な声を出し、オレの腕を掴んで引っ張って行った。
―――side空志
「・・・よし。行ったみたいだ」
「でも、何でこんなことしたの?」
草陰にはボクとリカがいた。
なんだかんだで何故かリカがボクを迎えに来た。
そして、帰る途中で騒いでるリュウとスズを発見。
で、何だか面白そうだったからリカと覗き見してた。
「ボクの悪友にちょっとした恋のお手伝い」
「・・・でも、何もしてないよね?リュウがスズ好きなのってみんながそこはかとなく感じてたよね?」
「若干一名ほど違う女の子がいるけどね。スズって鈍感だね~」
「・・・ソラ、全世界の生物に土下座して謝って。そしてアタシにも」
「何故に!?」
何かリカにした!?
全然思い当たらないんですけど!?
「じゃぁ、何で鈴音が寝てるときにあんなこと言ったの?」
「いや、ボクはちゃんと起きてるのを確認したよ。魔力でだけど」
ボクは≪月詠≫をして魔力の感じからスズが起きる直前なの感じ、そこでリュウに接触。
たぶん、スズは全部聞いてると思う。
「ま、そういうわけでリュウがスズに惚れてることがバレちゃったわけだ」
「・・・でも、種族が違うと寿命が」
「知ってるよ。ログさんに聞いたことがある。でも、ボクならそれぐらい何とかする。それはリュウも同じだと思うね」
もし、その程度でスズを悲しませるんなら優子さんじゃなくてもぶっ飛ばす。
それこそ全力で。
「・・・ソラは、いつもすごいね」
「そう?まぁ、影ながら二人を見守って行きましょうか」
そういうとボクは立ち上がった。
もう、門に向かってもリュウと鉢合わせって事態にはならないでしょ。
「・・・ねぇ、ソラ?」
「ん?どうしたの?」
「・・・も、もしも、アタシが・・・やっぱりなんでもない!」
そういうとリカはボクの前を走る。
そして、ボク前に来るとくるりと反転して体をボクに向ける。
「ソラ、アタシは、あの二人なら大丈夫だと思うよ」
「・・・うん。ボクもそう思うよ」
「・・・よし!じゃ、帰ろう!」
「・・・だから、腕に・・・もういいや」
ボクとリカはいつものように薄暗い夕暮れの道を歩いていった。