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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
5章 ≪サマー・バケーション編≫
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20話・THE END

―――side冬香

 「孤児、院?嘘、何で?」


 意味がわからない。

 何でよ?

 そんな・・・院長先生も、チビ達も関係ないじゃない・・・!


 「お前が言うことを聞けば問題ない。さっさと戻って来い」


 「貴様!」


 リュウが怒りでラズを攻撃しようとする。

 わたしは、もしもここでラズを守らなきゃ孤児院を襲われると思って思わず防御のための魔法を展開した。

 氷の壁がラズをリュウの攻撃から守る。


 「冬香!!」


 「リュウ、無理だ。冬香は弟君以外に孤児院まで人質に取られていたんだ」


 「ソラ!お前、これを!」


 「・・・ハル君から聞いていた」


 「なら、何で三谷君は・・・!」


 無理よ。

 いくらハルに教えてもらったからってそんなどうこう出来ない。

 それに、そんな戦力がすぐに集まるとも思えない。

 相手は、プロの人間よ。


 「うん、さすがにそんな守る戦力・・・・は集められないから、ここに呼んだ」


 「「「・・・は?」」」


 全員が思わず素っ頓狂な声を出した。

 その時、わたしの耳に幼い複数の声が聞こえた。


 「とーねぇー!」


 「がんばれ~!」


 「まけるなー!」


 そのほうを向くと、そこには小さな子供が十数人と、初老の女性がいた。


 「・・・院長先生?」


 「あんたねぇ・・・。だからやめとけって言ったんだよ。あたしゃ」


 「ちわー。ボクがソラです」


 「なるほど。わざわざ呼んでもらって悪いねぇ」


 「いえいえ。皆さんも冬香の雄姿を見たいでしょうから」


 「な、なんだと・・・」


 ラズが驚きに目を見開いている。

 わたしもそうだ。

 だって、こんな大人数を転移させたら、すぐにバレる。


 「タネは簡単。ボクには、普通じゃない仲間があちこちにいるんだよ。学園とかにね。それでこっそりと転移させてここに呼んだ。でも知らなかったよ。精霊魔法の転移はマナを使うから察知されにくいんだね」


 精霊魔法。

 ・・・そういえば、ソラの知り合いに一人だけ精霊魔法を使える女の子が・・・。


 「で、でも、学生ギルドがそんな・・・危険な依頼を・・・」


 だって、そんな特殊部隊みたいなこと、学校側が認めるはずが無い。


 「いや、ボクが頼んだのは『孤児院の留守番』」


 「ボクはまず、魔法学園の学生ギルドに依頼として『孤児院の留守番』を出した。

 それをスズ達に頼み、ひょっとしたら武装した空き巣・・・・・・・が入るかもって言って全員に武装させた上で行かせた。これなら、サリナさんに事実を少しだけ言ってないだけで、大丈夫。」


 「でも、相手はプロよ!?そんなことしたら・・・!!」


 その時、ソラのほうからケータイの着信音が聞こえた。

 ソラは試合中にも関わらず普通にケータイに出る。


 「もしもし?・・・お、カザハじゃん。・・・わかった。引き続き留守番をお願い」


 そういうとソラはケータイを切って、わたしに向き直る。


 「いやぁ、やっぱりさ偶然にも・・・・武装した空き巣が来たってさ。まぁ、そこにはアスカに四条さんがいたからさきに動きを察知して逆に奇襲をかけたって。てか、重力系属性のジグにイイトコの子のロイとかSの人も多々いたとか・・・。空き巣の方々にはドンマイとしかいいようがない・・・。まぁ、守る戦力じゃなくて攻める戦力を投入したのが大きいだろうけど」


 「おま、え!!」


 「ん?どうかしました?ボクは、たまたま・・・・頼んだ留守番の報告を聞いただけですけど?」


 「・・・お前、えげつないな」


 「そう?まぁ、ボクは基本的に罠を二重にかけようと思う人だからさ」


 そう言ってソラは不適に笑う。

 わたしも、ハルもただただ驚くだけだ。


 「まだ、だ・・・」


 「いや、お前の負けだ。とっとと認めろ」


 リュウがばっさりと切り捨てるように言う。

 これで、わたしもやっと・・・。


 「まだだ!!・・・アウトコード≪暴走オーバードライブ≫!!」


 その時、何かがわたしの中で弾けた。



―――side空志

 ラズが、まるで冬香が数法術を使うときのようなことを言った。

 確か、『コード』は冬香がその後に≪槍衾ファランクス≫とか≪巨人ギガント≫とか発動させる前につけてた。

 そして、それを聞いた途端、冬香が苦しみ始めた。


 「あ、あぁぁぁぁああああああ!!!!!」


 そして、冬香から膨大な魔力が発生し、周囲が凍っていく。


 「リュウ!」


 「これは・・・」


 「ソラ!これ、暴走!」


 「急にですか!?」


 「知るか!!」


 最悪だ。


 「まさかとは思っていたけど・・・」


 「ソラ?お前、これも・・・」


 「うん・・・いや、暴走させるものだとは知らなかったけど・・・」


 冬香からは、違和感を感じた。

 それが何だったのかはわからない。

 で、次に数法術をかじったことのあるハル君に出会うと、また、違和感を感じた。

 その時に聞いた話からボクは『刻印』と呼ばれる数法術士が使う特殊な魔法の一種のせいだと思った。

 でも、ハル君の違和感のおおもとは、魔法薬の効果だった。

 そして、相手はどういうのかわからないけどボクは相当用心深い相手だと思った。

 だから、孤児院のほうにも何かしてくるんじゃないかと思ってスズ達を配置した。


 「でも、まさか刻印のほうに細工してあったなんて・・・」


 「なんだと?確か、魔術機械デバイスとの同調シンクロを高める特殊な術式だな?」


 「うん。たぶん、それに冬香をわざと暴走させる魔術構成プログラムを組み込んだんだと思う。・・・でも、何でそんなことをした!!」


 ボクはラズに問いかけた。


 「ハッ!・・・こんな大衆の前でこんな話を聞かれたら俺は牢屋入り確定だ」


 「そんなの決まってるでしょ!!」


 「・・・ラズは自分のしたことの責任を放棄するつもり」


 「最低ですぅ」


 「そうだね」


 「あぁ。ロリコンな上にクズだとか救いようがねぇな」


 「ロリコンは余計だ。・・・まぁ、こいつで暴走させ、全員殺す。・・・詰めが甘いんだよ」


 観客は別に驚きもしない。たぶん、ただの余興とでも思っているんだろう。

 それをわかっててラズはそう言う。そしてボク等をあざ笑う。

 確かにそう思うよ。


 「そだね。あんたは・・・・詰めが甘い・・・・・


 「・・・なんだと?」


 「ここまで予測したボクが何もしないとでも思ってたの?何でシャンちゃんをこっちに置いたと思ってるんだよ・・・全員、戦闘形態フォーメーション変更、ボクが撃つ!!」


 「わかった!」


 「リュウとリカは前!冬香を邪魔して周りの被害をゼロに!」


 「さすがに無茶を言うな!」


 「リュウはできないの?アタシはソラのためならできる」


 「・・・負けられねぇな」


 「インチョーとシャンちゃんはここで。シャンちゃんは今はいい。インチョーもたまに援護する程度。こっちに攻撃を絶対に向けさせないで」


 「わかった」


 「おっけーですぅ!」


 「私達は?」


 「シュウ達はラズを逃がすな。レオも」


 「わかりました」


 「僕は!」


 「君は運営にこのことを説明しに行って」


 「わ、わかりました」


 これで大丈夫。

 ボクは≪月詠ツクヨミ≫を発動させる。

 それだけで膨大な量の魔力が冬香から放たれているのがわかった。


 「―――其は魔に属す法則!!」


 ボクは魔力を練る。

 ・・・大丈夫だ。今回は弓なんてものじゃ狙いが外れる危険性がある。

 ボクの狙いは、冬香の『刻印』を破壊すること。それが無理でも暴走の術式を破壊。

 スズがいればどうにかなったかもしれないけど、今回は仕方ない。向こうの学園で知ってるのはボクかスズ、リカの三人。

 でも、ボクはぶっちゃけ行けない。行ったらリュウに殺されそうな気がする。

 リカはリカでいろいろとダメな気がする。今回は一人だから男子にここぞとばかりに告白でもされて話どころじゃなくなる。

 で、残ったのがスズ。一抹の不安が無いでもないけど・・・。まぁ、しょうがないって事で行かせた。リカのこと以外でならちゃんとしてる田中に宇佐野さんも行かせたから大丈夫だろうと思ったけど。

 いないものを嘆いても仕方ない。今回はボクだけなんだ。


 「≪月夜ツキヨ≫!!」


 魔法陣が輝く。

 そして、ボクはそこに魔力をつぎ込む。

 昨日の・・・アレみたいに・・・。

 そして、ボクは手を魔法陣の中に突っ込み、一気に引き抜く。

 そこには、一振りの刀。


 「バージョン刀、『月閃ゲッセン』」


 「何で刀ですぅ!?」


 「矢だと外す可能性がある。今回だけは失敗はダメ。冬香も持たない」


 「でも、危ないよ!?」


 「今の冬香のほうが危険。インチョーはシャンちゃんを守ってて」


 「そ、そういうことですぅ?」


 「そ、そういうこと」


 ボクはレオを呼ぶ。

 すると、レオはラズのほうからボクのところに来た。


 「レオ、ボクを乗せて冬香の近くに。それで咆哮覇を至近距離で拡散して撃つ。できる?」


 「がう」


 さすが。

 それでこそボクの相棒パートナーだ。

 ボクは久しぶりにレオの背中に乗る。

 すると、レオは上空に飛び立つ。


 「冬香の真上に」


 「がう!」


 そして、冬香の近くで攻撃をひきつけているリュウ達に指示を出す。


 「リュウ!リカ!離れろ!」


 そして、二人が飛びのいたのを見た瞬間を狙ってレオに咆哮覇を撃たせる。

 すると、密度の低い極太の光線が冬香の魔力を一時的に押しのける。

 そして、ボクはレオから飛び降りる。


 「あ、あぁぁぁぁああああああ!!!!!」


 「冬香、絶対に連れて帰る。だから、少しだけガマンして!!」


 ボクは、冬香に向かって刀を振り下ろす。

 そして、≪月詠ツクヨミ≫をしていたボクは刻印の術式を真っ二つに斬り、破壊した。

 その途端、冬香の暴走は収まる。


 「よし。シャンちゃん!冬香の治療!!」


 「わかったですぅ!」


 そういうとシャンちゃんはすぐに解放を始める。


 「ロリコン!」


 「ロリコンじゃない!」


 「いいのですか?よそ見しても?」


 「っく!?」


 「シュウ!そんなヤツより冬香だ!術式は破壊した!」


 「な、なんだと!?」


 うんうん。

 みんなそういう顔するよ。ボクとかスズが魔法を破壊すると。

 普通はありえないからね。


 「さて・・・。リュウ?リカ?」


 「おう。どうする?」


 「・・・ロリコン」


 いや、それは関係ないよね、リカ?

 ・・・あながちそうでもない?


 「こんな・・・」


 ・・・どうも、諦めが悪いようだ。

 でも、この人の事だから何かまだ隠してそうだ。


 「所で、ガキにやられて、たまるかぁぁぁぁああああああ!!!」


 そして、ラズは今まで隠していたのかあるものを取り出した。

 銃の形をした魔術機械デバイス

 ・・・なるほど、数法術士だったのか。それで冬香の『刻印』に細工ができたんだな。


 「コード≪煉獄インフェルノ≫!」


 その言葉で、フィールドが一気に火の海に変わる。

 やば!?

 すぐさまナイフを投げてボク等の周りを囲む。


 「≪月界ゲッカイ≫!冬香達は!?」


 そっちを見ると、インチョーがエリアに頼んで張ったらしい水のドームが展開されていた。

 まぁ、ひとまず安心だ。


 「つか、こっちの方がやべぇな」


 「これじゃ、下手に動けない」


 「確かに冬香の≪氷地獄コキュートス≫より酷い」


 考え方によっては冬香のほうが酷いときもあるけど。

 すると、上の観客席のほうから悲鳴が聞こえた。

 はっとして上を見ると、火の手が観客席にまで回っている。


 「ちょ!?関係のない人まで!!」


 「無駄だ。あの野郎、聞くきがねぇ」


 「・・・力づくで止めるしかないよ」


 そうなるのか。

 なら、これを解除して向こうに攻撃しなきゃいけない。


 「・・・でも、ボクが風で炎を吹き飛ばしてもどうなるかわからない。相手は数法術士だし。・・・逆にこっちの力を利用されそう」


 「・・・オレが真言でやるか?」


 「でも、リュウが真言をすれば相手は気付くよ。その前に観客を焼かれる」


 「・・・ボクの刀もまだ手元にあるけど、これじゃ無理だ」


 「・・・考えてもしょうがねぇ。お前、≪水鴎ミズカモメ≫で何とか炎をできないのか?」


 「・・・わかった。やってみる」


 ボクは魔法陣を遠隔展開しようとした。

 そこで、何故か腰に収めた銃に気付いた。

 何故かボクは自分の魔法や武器は解析ができないはずなのに解析できた。

 ・・・いや、進化エボルト前の状態ならボクは解析できた。

 でも、進化エボルトしてボクの銃は自分の魔力に同調するようになって解析ができなかった。

 少なくともティーナと戦ったときはそうだった。

 三点バーストの銃だって撃ったその時に気付いたぐらいだ。


 「今は考えてもしょうがない。でも、これなら・・・」


 ≪月界ゲッカイ≫を展開したままボクは銃を構えた。

 そして、≪水鴎ミズカモメ≫の魔法陣を銃に展開。

 二人は怪訝な表情を浮かべるけど気にしない。

 銃の回転式弾倉をカチカチとまわし、止める。


 「銃弾変更バレット・チェンジ≪散≫!!」


 そして、銃の引き金を引く。そして≪月界ゲッカイ≫の一部を解除してそこから弾丸のみを出してまた閉じる。

 すると、魔力の弾丸は途中で分かれ、更に遠隔展開。

 青色の魔法陣が展開し、水で構成された鳥が何羽も飛び出す。


 「おし!見たか!これが『ナハト』の新機能!」


 「・・・別に魔法名っぽいの言う必要はなくねぇか?」


 リュウがボクの銃の操作を見て一言言う。


 「いや、初めてだから言ったほうがいいかな~って」


 「・・・ソラって、たまに変だよね」


 「おい、こいつはいつも変だ」


 「リュウ、ちょっと拳で語り合おうか」


 「余裕だな!」


 ラズがそう言った瞬間、≪水鴎ミズカモメ≫に周囲の炎を当てる。

 すると、≪水鴎ミズカモメ≫はボンと音を立てて消滅。


 「・・・水蒸気爆発か」


 「どんだけ高温なんだよ」


 「・・・ソラ、なんとかならない?」


 「いやぁ、さすがに無理かな?」


 「ハッ!なら、さっさとこの炎に焼かれろ!」


 その言葉でラズがボク等に周囲の炎をけしかける。

 さすがに、魔法で炎をガードできてもその熱がどうかわからない。


 「まぁ、確かにボク等ならできないね」


 その時、凛とした声が響いた。


 「コード≪氷地獄コキュートス≫!」


 その瞬間、炎で埋め尽くされた空間が凍りついた。

 ・・・てか、よく見ると炎が凍ってない!?


 「ありえない。何かいろいろな法則を無視してる」


 「違うわよ、バカ!炎の周りの空気だけを凍らせたのよ!」


 「・・・いや、オレが思うにそれってものすごく難しくねぇか?」


 「でも、冬香・・・お帰り」


 後から誰かが歩いてくる。


 「・・・ただいま」


 冬香だった。そして後からはシュウに双子にインチョーが着いてくる。

 さすがはシャンちゃんにシュウ。我が回復職ヒーラー達は優秀だ。


 「つか、あんたももう少し優しく起こせないの?さすがにイケメンじゃないのは前世からやり直しても無理だからしょうがないとして」


 「・・・冬香でもその発言は許さない」


 「ちょっと!?リカさん!?仲間に鎌を向けるのはやめませんか!?」


 「仲間だ?そいつは、俺達の兵器だ!!」


 ラズがそんな風に言う。

 ・・・この野郎。


 「そうね。確かにアンタ等といたわたしはただの兵器と同じだったわ」


 「冬香さん!?」


 「平地さん・・・」


 「でもね、アンタ等のつけた『魔氷狼フェンリル』の鎖はね、わたしの仲間に解かれたのよ!!」


 「・・・冬香さん、かっこいいですぅ!」


 「きさ、ま・・・!!」


 冬香は今まで持っていたケータイ型の魔術機械デバイスをラズに向かって放り投げる。

 すると、魔術機械デバイスは周囲の氷にあたって砕けすぐに使い物にならなくなった。


 「それ、いらないわ」


 「お前、数法術士が魔術機械デバイスを放り投げることの意味を知ってるのか?」


 「えぇ。そんなヘボいのよりいいの持ってるのよ・・・『数宝珠』!!」


 すると、冬香の手に機械のボールのようなものが現れる。


 「これが、わたしの本当の実力よ!」


 冬香が数宝珠を展開し、空中に魔力でできた光のキーボードを展開させる。

 そして、指を滑らせる。


 「再実行よ!コード≪氷地獄コキュートス≫!!」


 すると、先ほどとは比べ物にならない冷気が漂い、周りを凍りだけの世界に変えた。


 「って、寒い!!夏なのに寒い!」


 「い、異常気象ですぅ!!」


 「・・・私はカイロみたいな薬は作ってませんからね」


 「つか、お前は余裕そうだな!!」


 「はい。樹族はこういう地方に住んでいたので」


 「し、新事実!で、でも、今は寒い・・・ソラ!肌で暖めあおう!!」


 「いや、それは急激に冷えた血液が心臓に行かないようにする緊急措置であって今はある意味緊急事態かもしれないけど確かこれは冬に池に落っこちたとかそういうときに・・・」


 「そ、そんなことはどうでもいいです!俺、やばいです」


 「シャ、シャオ君、き、狐なのに・・・なんであたし達みたいにな、なってるの?」


 「関係ないです」


 「な、何だこれは!?」


 向こうはどうもこれを見るのが初めてのようだ。


 「冬香、ドンだけ手加減してたんだよ」


 「さぁ?まぁ、殺さない程度に?」


 「こん、な氷、業火の前には無意味だ!!コード≪不死鳥フェニックス≫!!」


 すると、相手の上空に炎が集り、五メートルほどの巨大な鳥の形をとる。

 ボクは反射的に≪月詠ツクヨミ≫で解析。


 「冬香、属性は『風』と『業火』。しかも結構特殊な魔術構成プログラムしてる」


 「中身は?」


 「ボクは数法術の中身を理解してないからそこまでしか今はできない」


 「そう。なら、攻撃すればわかるわ・・・コード≪巨人ギガント≫!!」


 そういうと、ボク等の周囲の氷が盛り上がり、そこから手に様々な武器を持った氷の人形が現れる。

 そして、冬香がキーボードに何かを打ち込むと行軍を開始。

 さすが冬香の一人艦隊。いつ見てもビックリだ。


 「そんなオモチャでやられるか!!」


 炎で構成された鳳に冬香の氷人形達が攻撃する。

 しかし、攻撃しても魔法が消滅しない。まるで、≪八岐雷大蛇ヤマタノオロチ≫のように。

 氷の人形は目立ったダメージこそ負ってないけど、こっちからの攻撃が通じないみたいだ。


 「なるほど、要するにソラの≪八岐雷大蛇ヤマタノオロチ≫みたいな自己修復の魔術構成プログラムになってるのね」


 「そうだ。だから、俺がやめろといわない限りこいつは暴れ続ける!!」


 その言葉通り、炎の鳳はそこら中に炎を撒き散らす。

 幸いにも観客は避難してるみたいだ。

 でも、これじゃ祭りに来た人にも被害が及ぶ。


 「お前等の負けだ!」


 「・・・バカじゃないの?」


 冬香が相手をいきなり罵倒した。


 「なんだと?」


 「ソラの≪八岐雷大蛇ヤマタノオロチ≫は一応対人系の戦術魔法。だから、別に攻撃がすり抜けても問題はない。基本的に相手を気絶させる程度のものだし。でも、あんたのは違う・・・・・・・。それは、相手の拠点を攻めるような攻城系の魔法よ?それで、さっきの氷程度を破壊できないんじゃ意味が無いわ。」


 そういうと、冬香は数宝珠にものすご勢いで何かを打ち込み始めた。


 「そんな、魔法はわたしが凍らせる!!」


 そういった途端、冬香の足元、つまりはボク等の足元に十メートルほどの数法陣が展開する。


 「コード・・・≪魔氷狼フェンリル≫!!鎖から解き放たれた『魔氷狼フェンリルの恐ろしさを知りなさい!!』」


 冬香の二つ名と同じ名前の魔法。

 それが発動されると、氷で構成された大きな狼が何体か出現した。

 一つ一つの狼が強烈な冷気を発し、周囲を更に凍りつかせている。


 「そんな、氷で炎がやられると思っているのか!!」


 ラズの言葉に答えるように炎の鳳は狼達に攻撃する。

 炎を撒き散らし、狼を溶かそうとする。

 冬香は何か操作すると狼達が俊敏な動きで行動を始める。


 「この魔法には自立稼動術式、そしてこれまで以上の速さを出せるように計算して、更には発する冷気で相手を凍らせることができるわ。そして、こういう魔法の弱点は・・・」


 狼達が炎の鳳に突進していく。

 でも、炎の鳳をすり抜けるだけで何のダメージも与えられない。


 「ハッ!そんなものは意味が無い!」


 「すでにあんたの負けよ」


 狼達はその突進の勢いを殺さず、ちょうど反対側にいた・・・・・・ラズに突進する。


 「・・・な――!」


 相手が発したのはその言葉だけだった。

 狼達がラズを氷漬けにする。

 すると、制御を離れたのか数法術で作り出された炎の鳳も小さくなって消滅した。


 「文字通り頭を冷やしなさい」


 冬香はそういうとボク等のほうを向いてすがすがしい笑みでこう言った。


 「んで、ただいま」


 「「「お帰り!!」」」


 こうして、ボク等の元に冬香が戻ってきた。



作 「と言うわけで『決着』をお送りします」

冬 「やっとここに来れたわ!!」

作 「今回は冬香中心の話を書かせてもらいました」

冬 「の、わりにぜんぜん出てないんだけど?」

作 「・・・ドンマイ」

冬 「・・・シバくわよ?」

作 「女の子がシバくとか言っちゃダメです」

冬 「うるさいわね」

作 「命の危機!?・・・次回予告!!」

冬 「・・・いつもその手で逃げるわね」

作 「次回予告してれば攻撃できないからね!!」

冬 「逆に、終わればやりたい放題よ」

作 「・・・このまま、終わろうかな?」

冬 「じゃ、氷漬けにしてあげるわ」

作 「ちょ!?待っ!?冗談!?いやぁぁぁぁああああああ!!??」

冬 「まぁ、そんなわけで次回がこの章のエピローグよ。次回もよろしく」


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