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DARK・MAGIC ~闇夜の奇術師達~  作者: 夜猫
5章 ≪サマー・バケーション編≫
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16話・FOR FRIENDS

―――side空志

 「・・・知らない天井だ」


 「いえ、何故いつもそのボケで始まるんですか?」


 「みゃ」


 とりあえずたぶんは救護室だろうと言うことでいつものようにボケておいた。

 まさか帰ってくるとは思わなかったけど。

 声のしたほうを向くとレオがボクのそばで寝そべっていて、やっぱりと言うか・・・我らが回復職ヒーラーのシュウがいた。


 「最後の日じゃなかったけ?」


 「・・・逃げてきました」


 ・・・シュウ、それは死亡フラグだよ。

 出掛った言葉を何となく飲み込んでおく。

 本人が一番よく知ってそうだからね。


 「・・・みんなは?」


 「はい。まだ戦ってます」


 そういうと、シュウは魔法投影映像ヴィジョンをさす。

 そこにはリカとスズが戦っている姿があった。


 「また、いろいろとやらかしたんですね?シャンが半泣きで連絡してきましたよ」


 「・・・じゃ、全部知ってるんだ」


 「はい。今回のリカさんのことも、冬香さんのことも」


 そして、シュウは手をボクに差し出す。


 「・・・そのために来ました。魔法薬ポーションを」


 ボクは、ポケットの魔術符カードから例の薬を取り出す。

 ボクでは、魔法薬の構成はよくわからない。

 わかったとしても、魔法薬はその服用者の魔力と同調し、核を解析して破壊じゃ間に合わない。と言うか、そこにある本人の魔力はおろか生命力にもダメージを与えるかもしれないから軽々しく解呪できない。


 「・・・ソラさん、確認のために聞きますが、構成は?」


 「服用者の魔力発散。それと、一定以上の間、服用しないと生命力まで発散する。簡単に言うと、意識的に自分を暴走させる薬だね」


 そう、これが冬香の弟、平地春樹君が飲まされていた魔法薬。

 こんな薬を作るなんて・・・!!


 「・・・これは禁呪タブー系統の魔法薬です。もちろん、法律でも禁止されています」


 「何でそんなものを!?」


 「・・・これは、確かめなくてもわかります。こんな、はるか昔に禁止された有名すぎる禁薬を飲ませるなんて・・・!」


 シュウは拳を思い切り壁に叩きつけた。

 それだけでここら辺を大きく揺する。


 「・・・薬剤師の風上にも置けません。いえ、ゴミクズ以下です」


 シュウがものすごく怒ってる。

 ・・・こんなシュウ、はじめてみた。


 「・・・治せるの?」


 「・・・基本的に、禁薬の類は普通なら解呪できません」


 ・・・マジかよ。

 なら、どうしようもないじゃん!


 「ですが、ソラさん。私達は普通じゃありません・・・・・・・・・


 そういうと、シュウは薬ビンを片手にどこかに歩いていこうとする。


 「・・・残念ながら明日の試合には出れそうもありません」


 「・・・できるの?」


 「誰に聞いてるんですか?樹族は薬の知識に長けた種族です。私は、絶対に解呪薬を作ります」


 そういうと、シュウは出て行こうとする。


 「あ、ゴメン。シュウには別の頼みもある」


 「なんでしょう?私にできることであれば・・・」


 「いや、できるんでしょ?解呪薬。なら問題ないよ。ただ、冬香の弟のハル君に直接届けに行って、そのついでにお姉ちゃんの雄姿でも見せてあげてって思っただけだから」


 そういうと、シュウはいつもの爽やかな笑みから一転させ、不適な笑みを浮かべる。


 「そうですね。わかりました」


 そういうと、シュウは足早に出て行った。

 たぶん、ボク等のいる宿にでも向かったんだろう。

 ボクは自分の体に異常が無いか大雑把に見る。そしてレオに目で合図をすると、特等席と化したローブの大きなフードの中に入ってきた。それを確認して救護室を後にした。

 ・・・隅から怨念のようなモノを感じた気がしたけど無視しておこう。

 たぶん、シュウのせいだ。






 「・・・ん?お前、もう大丈夫なのか?」


 「うん」


 フィールドを見ると、そこにはリカとスズの二人。

 敵も二人が出ている。今のところは拮抗してるようだ。


 「三谷っちが来たよ~」


 「ホント?・・・おぉ~・・・リー君すごいね」


 「シュウはどうしたですぅ?」


 「・・・解呪薬、ですか?」


 「そうそう、ついでにハル君を明日のいいトコで連れてくるように頼んだ。・・・と言うわけで宇佐野さん?」


 「おっけーおっけー!ワタシに知らないことは無いのだ~☆」


 そういうと、宇佐野さんはいきなりどこかに走り去って行った。

 ・・・情報収集か。まぁ、これで大丈夫。


 「・・・さっさとこの試合を終わらせよう」


 「おう。・・・おい!!リカ!!スズ!!ソラがさっさと終わらせろだとよ!!」


 その言葉に二人がこっちを向く。

 二人は何か言ってるみたいだけどボクにはよく聞こえない。

 でも、何となくはわかる。

 そこでボクはゴーサインを出した。

 その瞬間、リカが消えた。

 スズは≪相殺殻アンチ・シェル≫を相手に向けてドーム状に展開する。

 そして、ドンという音が響き、その音が響くたびに相手は踊るような動きをとる。

 ・・・まさか、≪相殺殻アンチ・シェル≫を足場に敵に三次元的な攻撃を仕掛けてる?


 「いつの間に・・・」


 「あぁ。スズがリベンジしたいってな。それでリカを指名してたんだよ」


 そうか、それをリカに説明したと。

 ・・・何気にえぐい。

 あんなの、普通じゃ避けれない。

 そして、相手にも限界が来た。

 リカが鋭く放ったけりがこめかみの辺りに炸裂。

 相手はその攻撃で壁に磔にされるようにぶっ飛ばされた。

 敵の相方がその光景にぎょっと目を見開く。


 「えい!」


 その瞬間、スズのやたらと可愛らしい気合の声が響き、それと同時にゴンという鈍い音が響く。

 そこには、≪相殺殻アンチ・シェル≫で頭部を強打されて気絶してる敵がいた。

 ・・・うん、魔法が効かないからかなりえげつない攻撃だ。

 確かに、盾で攻撃する技術があるとか聞いたことがあるような気がしないでもないけど・・・。

 何故か相手が可愛そうに思えた。


 「これでオレ達の勝ちだ」


 「・・・あれ?誰がリカとスズの前に?」


 「オレ」


 リュウは一言で答え、さすがに二対一はないわとか言った。

 ・・・そうか、ゴメンね。ボクのせいでいろいろ心配かけて。

 そして、司会の声が会場に響き、ボク等の勝利を宣言される。

 これで、明日の決勝に出れる。






 「ソラ!!大丈夫だった!?」


 戻ってきて一番、最初にリカが発した言葉。

 ・・・何故かいつもの調子のリカにボクは苦笑を漏らした。


 「大丈夫。まぁ、これで決勝に進める。・・・・・・けど、その前にやることがある」


 ボクはまたみんなの前に立つと先頭を歩いていく。

 みんなは疑問符を浮かべながらもボクについてくる。

 そして、反対側に行くと、ちょうど『十二星座トゥエルブ・コンストレイションズ』の方々が現れた。

 ナイスタイミング。


 「・・・また情報収集か?」


 「ううん。後はシュウと打ち合わせするだけ。これは・・・三魔源素スリーシンボルに関わりのあること」


 ボクはだぼだぼの占い師のローブの姿を見つけ、声をかける。


 「ちわ~。ティーナさん?」


 「はい?・・・あ・・・」


 ボクを視認した途端、いきなり土下座された。

 何で!?


 「すみません!!てっきり、私は貴方が第三段階でかなりの力を持ってるとばかり!!」


 「ちょ!?落ち着いて!?待って!!ボクは何もしてません!!だから武器を収めて!!」


 ボクは必死に言葉を発し。何とか誤解を解く。


 「・・・取り乱してしまってすみません」


 「いやいやいや・・・むしろ試合中のボクは自棄ヤケになってたんで」


 「・・・で、小僧、なんのようだ」


 ボクに向こうのリーダー格らしき偉丈夫が声をかけてきた。

 ・・・何でエモノが細剣レイピアなんだろう?

 こうゆう人ってもっとでっかい武器じゃないの?

 その視線に気づいたのかリーダー格の人は頭をかいて説明した。


 「・・・俺はな、力が弱いんだ」


 「へ~。そうなんですか?」


 「あぁ。小学生の女子と腕相撲をして負ける」


 おい!?

 それは弱すぎでしょ!?

 そんなナリなら近所の小学生の子が見ただけで泣くよ!?


 「・・・あはははは・・・リオンさん、優しいですから」


 「そうそう。それで『泣く子も黙るライオンさん』だもんね。主に面倒見のよさの意味で」


 背中に大きな弓を担いだ人が教えてくれる。

 ・・・なんだこの人達?


 「・・・おい、お前は雑談しに来たのか?」


 「いや、違うけどさ。・・・まぁ、知ってるかもしれませんがボクは三魔源素スリーシンボルの一つ、『月』の属性持ちです」


 「・・・確かにそんな感じはしてたわ」


 水色の髪の毛が印象的な女の人がボクに言う。

 ・・・何でかめを持ってるんだろう?


 「で、そんな人が何か用ですか~?」


 まるで歌うような口調でスズ以上にほんわかした空気の人がボクに聞く。


 「単刀直入に言います。フェイクと言う人が三魔源素スリーシンボルを狙ってるらしいです」


 その言葉にリカ以外の人が驚く。

 ・・・あれ?


 「おい、初耳だぞ」


 「え?言わなかったっけ?確かスズに・・・」


 「あれ~?わたしそんな話聞いたっけ~?」


 「聞いてるはずだよ!?ルーミアさんに!!」


 「むぅ~・・・っは!」


 よかった。どうやら思い出してくれたみたいだ。


 「忘れちゃった~」


 「・・・鈴音」


 ダメだった。

 スズは正真正銘のアホの子だった。


 「・・・とにかく、その人に狙われています」


 「わかった。返り討ちに――」


 「いえ、絶対に逃げてください」


 ボクは有無を言わせぬ口調で相手の言葉にわって入った。

 でも、相手はそれぐらい非常識だ。


 「フェイクは、どういうわけかそこらへんの魔王をはるかに超える魔法でボク等をボコボコにしました。少なくとも、ボク等に負けてるレベルじゃ勝てない」


 「でも、こっちにはティーナちゃんも――」


 「ワケは言えませんが、かなり強い魔王二人が相手でやっと向こうが引いてくれました。通り名は『結界』と『閃光』です」


 その言葉で更に目を見開かれた。

 ・・・やっぱ、あの二人はふざけてるけど超強いんだ。


 「『結界』に『閃光』?最強の魔王かよ・・・」


 「でも、何で?」


 「それには答えられないっつーか・・・たまたま近くを通りがかったついでみたいな感じだったな」


 リュウはその魔王についてきたくせに・・・。

 まぁ、嘘は言ってない。

 真実をちょこっとはぐらかしてあるだけで。


 「・・・まぁ、とにかく、フェイクは危険です。逃げてください」


 「・・・忠告、ありがとう」


 そういうとリオンさんと呼ばれた人はボク等に背を向けた。

 ・・・あ、小さな子がこけた。そして痛かったのか泣いてしまう。

 リオンさんがどこから出したのか飴玉を渡す。すると、小さな子は泣き止んだ。


 「・・・いや、面倒見よすぎでしょ」


 「・・・だな。つか、狙ってるのか?・・・ま、帰るぞ」


 そしてボク等も宿のほうに帰ろうとする。

 そこでボクは声をかけられた。


 「あ、あの~」


 声に振り向くと、そこにはティーナさんがまだいた。


 「どうしたんですか?」


 「あ、敬語はいいです。私もやめますから」


 「あ、うん。で、何?」


 「はい。さっきはごめんなさい」


 さっき、ね。

 何回も言ってるんだけどボクも自棄ヤケになってたからな~。


 「でも、その力を恐れないでください。確かに力があれば何でもできる。でも、何をするかはその人次第。貴方が、使い方を間違えなかったら大丈夫です」


 「・・・やっぱ、無意識のうちにセーブしてたんだ」


 うすうすは感じていた。

 これじゃ、あの時と変わってない。


 「でも、大丈夫。私に仲間がいるように貴方にも仲間がいます。・・・そして、その力で守りたいものを守ってください」


 そう言うと、ティーナさんは自分のギルドの方に走って言った。

 ボクはその後ろ姿を見ていると、向こうからボクを呼ぶ声が聞こえた。

 たぶん、いつまでも来ないボクをみんなが・・・。


 「ソラ~!?」


 「ごぱぁ!?」


 ・・・久しぶりに受けたよ。

 リカのタックル。


 「な、何で・・・?」


 「ソラは何!?あの人が好きになっちゃったの!?」


 リカはいきなりそうまくしたてるとボクの襟首をつかんで問いただし始めた。

 ・・・何でそうなるの?

 途中でおんなじ境遇だからとかこれじゃ未美に借りた小説と同じことに!?とかいろいろ言ってる。


 「いや、別にそんなんじゃないよ。ちょっと魔法の講義を受けただけ。・・・それと宇佐野さんから本を借りるのはやめた方がいいと思う」


 「ホント?」


 「はいはい」


 「・・・わかった」


 そう言うと、リカはボクの襟から手を離した。


 「じゃ、行こ」


 「おっけ~」


 ボク等は次の決勝で冬香を取り戻す作戦を考えるために宿に戻って行った。

 ・・・上等だよ。

 この力の全力でまずは冬香を助けようか。

 ボクはそう心に誓った。


作 「少し早めの投稿!そしてシュウ君登場!『友のために』をお送りしました」

樹 「ひょっとしたら今回も私の出番が無いかと思いました」

作 「いくら僕でもそんなことはしない」

樹 「何はともあれ、皆さんと合流できてよかったです」

作 「まぁ、そんなわけでいつの間にか話数三桁を超えた!」

樹 「そうなんですか?」

作 「イエス!何かがんばったな~って思う」

樹 「そうですね」

作 「まぁ、次回予告と行きますか!」

樹 「次は決勝ですか?」

作 「まぁ、その前に準備をって話。露骨なフラグとか盛りだくさん」

樹 「・・・それはいいのですか?」

作 「さぁ?・・・とにかく、決勝は次の次あたりに来るよ」

樹 「そうですか。緊張しますね」

作 「まぁ、がんばれ。てことで次回もよろしく」

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