1-4:「女子を家に招こう」
カレーに必要な材料があることを確認した僕は、さっそく自宅の掃除にとりかかる。
部屋に散らかっているのはだいたいが脱いだままほったらかしにしている服。それとコンビニ飯のゴミ。
……うん、よくこの状態で女子を家に招こうなんて発想が出てきたな。
突発的な考えであったとはいえ、自分の人生の中でもトップクラスにイカれた行動だと思う。
そんなことを考えながら、その辺に散らかっていた衣服を一か所にまとめていく。問題の先送りともいう。
この部屋の片付けをする様子なんて実況しても特に面白みはないだろうから詳細は割愛するけれど、掃除は疲れるものだと思い知らされることになったということは先に言っておこうと思う。
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部屋が比較的綺麗になってきたところで、僕はカレー作りに取り掛かる。
前にも言った気がするが、我が家のカレーは多少こだわりがある。自宅から持ってきたスパイスを市販のルーと一緒に投入。これにより味に深みが生まれるのだ。原理は知らんけど。
うん。今日のカレーもおいしく出来たな。
そんなことを考えていると、玄関の方に人の気配を感じた。おそらく蒼井さんが家に来たのだろう。そういえば時間については何も決めてなかったけれど、タイミングはバッチリだったようだ。
インターホンが押される前に玄関を開けると彼女は驚いたように目を開けたが、我が家から漂うカレーのにおいに気付いたのか嬉しそうな顔に変わった。
「わぁ~っ! 今夜はカレーですか?」
「はい。すこし辛いかもしれないんですけど……辛いのは大丈夫ですか?」
「辛いのは得意だから大丈夫っ!」
「それは良かった。それじゃ、中へどうぞ」
そう言って僕は蒼井さんを家に招き入れる。本日二回目となる彼女の来訪は、一回目の昼のときとは違って綺麗な部屋で迎えることができた。まあ洗濯機の周辺を除いたら洗濯物の山が出来上がっているのでそこを見られなければ、の話ではあるが。
家族がいつ来ても良いようにと持っていた来客用の食器を使ってカレーを盛り付ける。ちなみに福神漬けは市販のものだ。
「「いただきます」」
二人で一緒に手を合わせてそう言うと、彼女がカレーを口に運ぶ。
「うん! おいしい! ちょっと辛いけど、これぐらいなら問題ないよ~!」
「良かった。そういう風に言ってもらえてうれしいです」
それは紛れもない本心だ。確かに僕は料理の腕に自信があるし、家族から何度も褒められたけれど、こうやって家族以外の人に料理をふるまうのは今日が初めてだった。なのでどう思われているのか少し不安だったのだが……どうやら好評なようでなんだかくすぐったい気持ちになった。