3-8:「ボーイッシュな元気っ娘」
ルナちゃんグイグイ行きます
翌日の昼。蒼井さんのお友達の宮田月さんが僕たちといっしょに食卓を囲っていた。なんでも入学以来ずっといっしょにご飯を食べていたのにもかかわらず昨日は『予定がある』と断った結果、お隣さんである僕といっしょに食べることにした事を話したらしい。
僕から見た宮田さんの印象は『ボーイッシュな元気っ娘』。偏見だけどバスケットボールとかバレーボールやってそう。身長も高いし。
それでいて顔も綺麗で、高校時代はさぞおモテになったであろうことは容易に想像がつく。
二限の授業を終えてダッシュで帰宅すると、既に宮田さんを連れた蒼井さんが部屋の中で待っていたので、冷蔵しておいたものを電子レンジで温めて今に至る。
今更だけど当然のように合鍵を使って部屋に入ったことに宮田さんは疑問を抱かなかったのだろうか。
そう思って聞いてみたのだが。
「なんで持ってるんだろ~とは思ったけど、いっしょに住んでるなら持ってるよな~って」
「いやいっしょに住んでる訳じゃないんだけど」
「でも似たようなものじゃない?」
「そうかな……そうかも……」
といった感じに解釈されていた。確かに半同棲みたいな状況かもしれない。昨日なんか蒼井さんが僕の布団で寝てたし。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ごちそうさまっ! おいしかったよっ!」
「それは良かった」
食事を終えた僕たちは再度大学へと戻るべく坂道を歩いていた。
よくよく考えればわざわざアパートに戻らなくても大学の学食で済ませればいいんじゃないかと思ったけどそれは蒼井さんの意思によって却下されてしまった。僕の手料理が食べたいらしい。かといってじゃあ蒼井さんひとりで食べても良いんだよと言ってみたがとんでもなく寂しそうな顔をされたもんだから慌てて訂正していっしょに食べることに決定した経緯がある。
好きな人に悲しい顔をさせたくないからね。
「そうだ、さとーくん」
「宮田さん、どうかした?」
「ルナって、呼んで」
唐突に話しかけられたと思ったら、とんでもない距離の詰め方をされた。
「ルナのこと、『宮田さん』じゃなくて……『ルナ』って、呼んで」
少しうつむいて頬を朱色に染める宮田さん──ルナは、美しかった。
でもちょっと待ってほしい。距離の詰め方やーばいでしょ。
「ルナ、さん?」
「ルナ」
「ルナ。……急にどうして名前で呼んでって」
生まれてからこの方、一度も家族以外の女の子の名前を呼び捨てにして呼んだことは無い。『さん』付けで呼ぼうかと思ったけど笑顔の圧が怖かった。
「ルナ、男の人の知り合い少なくて、だけどたくさん男の人に言い寄られるからさ」
「男除けになってほしいって話?」
「だいたいそんな感じ。あ~でも……」
ルナが立ち止まる。僕が彼女を振り返ると言った。
「さとーくんに呼ばれるの、キュンってするからさ」
その表情はまさに、恋する乙女の顔だった。
それはそうと僕の後ろにいる蒼井さん、なんか殺気を感じるんですけど……。




