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3-7:「どこの馬の骨とも知らない野郎」

 冷蔵庫に入れておいたお昼ご飯を電子レンジで温めていると、匂いに釣られたのか蒼井さんが目を覚ました。


「ん、いいにおいがする」

「いい鼻をしてらっしゃるね」


 温めなおしてもそこまで匂いは復活しないものだけれど、蒼井さんは驚異的な嗅覚をお持ちのようである。もしかしたら僕の鼻がおかしいだけなのかもしれないけれど。


「そうそう、佐藤くん。お願いがあるのですが」


 食べ終わって食器を片付けていたその時に、蒼井さんからそう話しかけられた。


「どうかしたかな、蒼井さんのお願いなら何でも叶えてあげたいんだけど」

「ん、今何でもって」

「僕にできる範囲でね?」


 蒼井さんの『お願い』とやらは、友人をこの場に呼んでもいいか、というものだった。なんでも、僕と二人で食べていることを知った彼女の友人がいっしょに食べたいと言い出したとかなんとか。

 たぶんその子としてはどこの馬の骨とも知らない野郎に騙されているとか脅されているとか弱みを握られているとか心配しているのだろう。僕が逆の立場でも心配すると思う。

 だから僕としてはここは受け入れてあげるのが正しい行動のはずだ。


「僕としては全然かまわないよ。事前に言ってくれれば、ご飯は用意しておくし」


 ……正しい、と思っていたんだけど。


 不満げな顔をしているのはどうしてなんですかね?

 まるで二人きりの時間が減るのを嫌がっているみたいじゃないですか。なんですか、僕のことが好きなんですか?


◆◇◆◇◆◇◆◇


SIDE:蒼井若葉


『ルナもそのさとーくんとのお食事について行っていい?』


 せっかく二人きりになれる時間なんだから、邪魔しないでよねっ。


 そう言ったんだけど、どうしてか受け入れてもらえなかった。

 ルナちゃんいわく、『まだ付き合ってないならルナにもチャンスがあってもいいよね?』ということらしい。確かにそれはそうなんだけど……。私の好きな人なんだから、少しくらい応援してくれたって良くない?


 ルナちゃんが全然折れてくれないから、仕方なく『佐藤くんに聞いてみるから!』とだけ言って今日のところは引いてもらった。

 だけどね、佐藤くん。ルナちゃんを呼ぶのをそんなすぐに決めなくたって良かったのに。私と二人きりの時間をもうちょっと堪能しても良かったのに。こんなんじゃ、私だけ浮かれているみたいじゃん。

 私はもっと二人でいたいのに。


 こんなに独占欲強かったっけ、私。

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