2-3:「買い物に行こうかな」
料理の描写は面倒なので想像で補完してください(丸投げ)
食事をくれと言われたら恵んでやるのが世の情け。
まあ、恵んでやるなんて大層な言い方をしていてもそのお金を出しているのは僕ではないのであまり大きな顔はできないのだが。
「佐藤くん、今日はこのあと何か予定はありますか?」
お昼ご飯を食べ終わって、蒼井さんが僕に問いかけてきた。
サークルに入っている訳でもなければアルバイトをやっている訳でもない僕は特に何も予定はない──と思っていたが、大事なことを思い出した。冷蔵庫の中身が空になりそうなのだ。
「今日はスーパーに買い物に行こうかなと思っていたところなんだけど、蒼井さんは何か?」
「そうなんだ、私は今日は何も予定は無いからお手伝いしようか?」
「えっ、いいの?」
僕としては買い物に人手は多ければ多いほど良いと思っているので、その申し出は非常にありがたいのだが……本当にいいのだろうか?
「いいのも何も、私の方から言ってるんだから遠慮しなくていいよ?」
「そっか、それなら遠慮なく……」
◆◇◆◇◆◇◆◇
──それから少しして。
僕と蒼井さんは二人で近所のスーパーに来ていた。
「そういえば蒼井さん、今夜なにか食べたいものある?」
「そうだね、今日は……」
今夜の献立を考えながら店の中をぐるりと一周。あれがいいこれが安いとか言いながら買い物かごに商品を入れていると、ふと思った。
(これってなんか……夫婦っぽくね?)
思ってしまった。どうやら一晩経っても煩悩は消えてくれなかったらしい。
変なことを想像していたことを悟られないように一度頬を叩く。煩悩退散。悪霊退散。
でも待ってほしい。男女が献立とか割引セールだとか言い合いながらスーパーを回っている様子は友人や恋人の距離感ではないだろう。僕も蒼井さんも比較的高身長だから、見る人によっては新婚夫婦に見えてもおかしくない。だから僕がそう思ってしまうのも悪くない。仕方ないね。うん。
「ふふっ、なんか新婚夫婦みたいだね?」
あのすみません、蒼井さんってもしかして読心術を身に着けてらっしゃる?