1-10:「心臓に悪い」
SIDE:蒼井若葉
佐藤くんはけっこう体を鍛えていると思う。いっしょにご飯を食べたときにちょっと見たけど、腕とか肩周りとか、鍛えている人の筋肉のつき方だと思う。たぶん、脱いだらすごいんじゃないかな。
━━ということを考えているのは、すぐ隣の部屋から聞こえてくるシャワーの音が聞こえてくるからだ。
私がシャワーを上がってからまもなく、隣の部屋からシャワーの水音が聞こえてきた。破格の家賃の秘密はこんなところに隠れていたのか……なんて思った直後に、ふと気付く。
(もしかして、私のシャワーの音も気付かれてた……!?)
気付いてしまっては、自分も悶々とするしかない。
(こんなに聞こえるってことは、向こうも絶対聞こえてるよね……)
顔が熱くなってきた。冷水を顔にかけて頭を落ち着かせる。
(隣の部屋で……シャワー浴びてるんだ……)
そしてふと脳内に裸の佐藤くんがシャワーを浴びている様子が思い浮かぶ。
(ダメダメダメダメ!! 何考えてるの私!!!)
頭に浮かんだ裸の佐藤くんを振り払うべくもう一度冷水を被る。
(あ〜、心臓に悪いよ〜っ!)
これからの大学生活のほぼ毎日こんな思いをすることになるとは思っていなかったが、毎日三時間かけて大学に行くよりは遥かにマシだと言い聞かせて眠りについた。
これで第一章終わりとなります。
ここから始まる二人の生活、お楽しみに。