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にゃん基地サニーデイズ  作者: 猫見沢ハジメ
プチ・高校生編
23/29

潜入調査!シャーロック・にゃん吉



 と、うなだれていると


「あれ、何〜!可愛い〜〜!」


 と誰かの声とともに、「ほんとだ」「きゃ〜」「お耳がつぶれてるわ〜」「何あれ、めずらしい〜」と、黄色い歓声がちらほらとあがる。すると、龍也たちもそれに気がついたようで、


「お、にゃん吉じゃねえか」


「ほんとだね」


「あら、晴翔についてきたのね」


 え、にゃん吉?どこどこ、どこにも見えないんだけど?


 周りを確かめる、こちらを見ている。ん、というか、俺?彼らの視線を追うと、背負ったリュックサックからひょっこりとにゃん吉が目をぱちくりさせて顔を覗かせていた。なんだこれ、かわいい。


 というか、いつの間に入り込んだんだ?荷物は紙袋に入れたので、たしかにカバンは一度もチェックしていなかった。思い返せば、やけに重量感のある気もしたが、そういうことなら納得だ。ずっとそこにいたのね。道路を渡って来たわけじゃなくて良かった。


「こら、リュックに入っちゃダメじゃないか」


 リュックを前に持って来ると、にゃん吉と目が会った。綺麗な目をしている。まあ、良いか。ネコなんだし。


「ん、なーお」


 謝っているつもりなのだろうか。そう言ってリュックから飛び出すと、かろやかに地面に降り立った。


「きっと晴翔の晴れ姿を見たくて忍び込んだに違えねえ」


「はは、そうだね」


 龍也も理玖も、そう言って笑っている。陽菜は新品の制服を気にして少しだけ距離を空けていたが、龍也の影から顔を覗かせて手をうずうずさせていた。それを見て、龍也は「ん?」と一瞬気にしたようだったが、「そろそろ河原に行くか?」と提案を口にした。にゃん吉が心配だったが、肩に乗せていけば危険もないか。そう思って、


「おーい、にゃん吉?」


 と呼ぶと、桜並木の方から「んにゃ」と声がする。見ると、アタマのうえに桜を乗せて丸くなっていた。その光景に、俺は懐かしい気持ちになる。よく見ると、ちらほらと人だかりができていた。そのなかにはカメラを構える陽菜の姿も紛れていた。


 目が合うと、とてとてと駆け寄ってきた。彼が乗りやすいように膝をついて屈むと、にゃん吉が膝を階段のようにして肩に飛び乗る。爪は切ったばかりなので、捕まりにくそうだが、少しすると慣れたようだった。

 

 「せっかくだからさ」と前置きしたうえで、


「みんなで写真でも撮る、ってのはどう?」


 と理玖。それに続けて、とてとてとにゃん吉を追ってこちらに駆け寄ってきていた陽菜が


「良いわね、新しい制服だし『門出』って感じね」


 とはしゃぐ。「おお、良いぜ」と龍也が続く。


 近くで談笑していた母さんを呼んで、写真を撮ってもらえるようにお願いすると、快く応じてくれた。うちの母親は、パンツスタイルの服装からも窺い知れるように快活な性格だった。にゃん吉がついて来ていたのには驚いていた様子だったが。


「じゃあ、撮るよー!みんな準備できたかな?」


 はーい、と言うと、5カウントの後にシャッターが切れる。「どう、よく撮れてるでしょう?」と母。


 スコ座りをするにゃん吉を頭上に抱えた俺を中央にして、陽菜がその後ろでにゃん吉のアタマのうえに顔を乗せてピースしている。両手を掲げて右に左にと広がる龍也と理玖。その光景は、にゃん吉を中心に咲いた4枚の花びらのようだった。


 龍也、陽菜、理玖が満足げに「よく撮れてるね」、「にゃん吉が片手を挙げているのがアジがあるわね」などと話し込んでいた。けれど、今はまだ4枚の花びらに過ぎない。あと、1枚。その、たった1枚が足りないのが少しだけ残念だったけれど、その写真はとても良く撮れていた。


 一度きりの人生で、これほど素敵な瞬間をシャッターに収められる機会なんて、もう数えるほどしかないだろう、そう思って、俺は空を仰いだ。空には、猫の瞳にそっくりな黄金に輝いている太陽が街を包み込んでいたのだった。

 


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