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中学生編、完結!友人たちとの大団円

◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇



 大広間にはばあちゃんの用意してくれた飲み物や食べ物、スナック菓子がローテーブルのうえに並べられている。ばあちゃんは、食べ物を持ってきてくれるやいなや「若い子たちの邪魔をしたら申し訳ないからねえ」と笑って台所へ戻っていった。


「じゃあ、みんなグラスは持ったかな〜?」


 僕のかけ声に、


「ああ!」「うん!」「持ったわよ!」


 グラスを掲げながら、こちらを向いて勢いよくみんなが返事をする。とても気持ちの良い返事だ。こういう時、次は何て言えば良いのだろうか。二の句を告げないでいる僕に気がついて、代わりに理玖が口を開ける。


「それじゃあ、2人のお付き合いを祝って——!!」


「カンパーイ!!」


 そう言って、乾杯の合図とともにグラスに注がれた炭酸を疲れた体に流し込む。これには2人のお祝いというだけでなく、ほかにも別の意味があって、ひとつは最近散々な目に遭っている龍也へのお疲れさま会という目的と、もうひとつは渡辺凛花さんへのごめんなさい会でもある。人はこうして盛大にどんちゃん騒ぐことでしか何かに区切りをつけることができないのだ。


「それにしても、先週の今週だもんな」


 僕が言うと、龍也が口を開く。


「俺たち、元々結構仲良かったからな。昔から嫌いとかじゃなかったんだが、どうしても友だちとして見ている自分がいてよ。だけど、」


 その言葉を遮るように、陽菜が続ける。


「龍也が落ち込んでいるのを見ていると、何もしないっていうのもガラじゃなくて。それで遊びに行ったりするうちに、自然とそういう流れになったのよ」


「こいつが、どうしても遊びに行きたい、って言うからよ」


「ちょ、アンタがずっとモジモジしてるからでしょ!」


 ギッと睨みあってはいるが、どこかいつもより迫力がないように見える。そういう所も含めて、この2人は相変わらずの仲だった。そんな2人を見ていると、どこか安心する自分がいる。


 どんなに底抜けに明るくて悩みのなさそうに見える人間だとしても、無条件にそうなのではなくて、彼を支える人の思いや優しさというものが彼をそうさせているのだ。そう思えば、彼女のことは少し気がかりだった。本当のハッピーエンドがあるならば、彼女がその苦悩を乗り越えてここにいることがそうなのだが。


 テーブルの向こうに目を向けると、龍也と陽菜が仲良さそうににゃん吉にエサをあげている。今日は特別な日だからにゃん吉には赤くて細長い包装の生エサ「にゃ〜む(猫×チャーム)」を用意した。彼は目玉をひん剥いてべろんべろんと夢中になっている。すると、


「2人とも、仲直りできて良かったね」


 理玖が、そう言ってコタツに潜り込んで隣で足を伸ばす。手にはアイスの棒と漫画を握りしめている。彼もずいぶん満喫しているようだった。それを見て、安心する自分がいた。「そうだな」と短く返すと、


「理玖も僕も中学でサッカーはやめだからな。ひょっとしたらバラバラになっていたかもしれない。だけど、奇しくも渡辺さんにフラれた龍也のおかげでこうしてまた仲良くできているわけだからね」


 と僕は言った。


「考えてもみれば、不思議な縁だよね。彼女が今回のことを変に引きずに、高校でも楽しく過ごしてくれると良いよね。」


「ああ、そうだな」


 僕は、食べ終えた食器を脇へやると、眠気覚ましに淹れたての熱い珈琲を口に含んだ。宴会の終わりにはいつも眠気に襲われる。ブラックコーヒーのほのかな甘みと香りが鼻に抜けるのといっしょに眠気も抜けていく。


「でも、渡辺さんはきっと大丈夫だよ」


 そう言うと、「お、訳知り顔だね」と理玖。2人がにゃん吉に夢中なのを確認すると、


「まあ、知らないわけじゃないってだけさ」


 と返事する声に、コタツで僕の隣、足を伸ばす理玖は「深くは追及しないでおくよ」とアイスをかじる。


「ああ、そうしてもらえると助かる。また、そう遠くないうちに話すよ。なあに、大した話じゃないさ」


 ともかく、だ。僕、龍也、陽菜、そして理玖。何気に彼らをここに連れてきたのは理玖の功績だった。みんなでこうして祝いの席を囲めるというのは、ありがたいことだ。


 渡辺さんと会った日の帰りに龍也たちと話したのとは今回はまた違うのだ。龍也と陽菜は結ばれ、ここにはいないけれど渡辺さんはおそらく何事もなく高校生活を送り、そして僕と理玖は京商大附属に進学する。


 週明けに理玖と中学で会った際、理玖が


「そう言えば、その渡辺さんって僕たちと同じ高校なんでしょ?同じ学科かどうかは分からないけれど」


 と話しかけてきたので、僕はそこでようやく意外にも彼女に再会できるかもしれないと思い至ったのである。


「言われてみれば、そうなるな」


身の回りがバタバタしていたので、気が付かなかった。


「いつか5人でこうして話せると良いよな」


「うん、そうだね。でも、それにはほんの少しだけ時間がかかるかもしれないけれど」


 そう言う理玖に、俺は肯定を返した。


 その晩、大浴場へ向かった俺たちは、これからの話や将来の目標について語り合った。龍也はサッカーのプロ選手を目指すのだと聞いて、いつか理玖と2人で試合を見に行くのだと、男の約束を交わした。


 お風呂からあがると、すでにシャワーを終えていた陽菜が髪を乾かしていた。寝支度を済ませ、蛍光灯の消えた客間で横になっていると、陽菜が


「あんたたちずいぶんと遅かったけれど、何話してたの?」


 と訊いてきたが、


「男だけの秘密だ、ばーか」


 と龍也がのたまうので、「「そうだぞーー」」と理玖と2人で乗っかることにしたのだった。


 この日以降、引越しや進学の準備で忙しくなった俺たちは時々電話したりする以外ではあまり会わなかった。理玖とは同じ高校なので、自然と過ごす時間は増えていた。


 ほどなくして、龍也と陽菜は大阪へ引っ越して、俺たちは高校生になった。僕たちは時々お互いに大阪に行ったり京都まで来てもらったりと、高校時代も変わらず仲が良かった。龍也と陽菜は、お互い似たもの同士だったので、日が経つにつれてますます大人びていった。


 けれど、高校にあがってからしばらく探してみたけれど、渡辺凛花さんの姿を見る事はなぜかなかった。そう、理玖と僕が図書室で謎の美少女に出会うあの日までは。



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