AN ENCOUNTER WITH TRICKSTAR
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この時間になると、たいてい自宅の門の鍵は閉まっている。家は、賀茂川の合流地点から下って左手に進んだ所に古くからある、比較的大きな屋敷だった。門、といっても金属でできた洋式ものではなく、日本式の門だ。漆喰の外壁は瓦で覆われており、木製の大きな門はかなり厚みがある。見た目が厳かなのであまり泥棒は入りたがらない類の家だが、それでも鍵をかけるのがわが家の決まりだ。
ちなみに付近には平安神宮があり、この辺りは昼もある程度そうではあるが夜になると特に閑静な住宅街となる。河原町や祇園などの観光地にも近く、かなり治安の良い街だ。また、この辺りは名門と言われる大学が密集しており、学生の街とも呼ばれることがある。
家は、そんな街の一画にあったので、よく友だちが遊びに来ることがあった。家に泊めることもあったけれど、今は高校受験の真っ盛りなので今日は家族しかいなかった。これが、何もない時期になるとなぜか家に居座っていた友人が「晴翔が帰ってきたぞ〜!」と言って扉を開けて迎えてくれることもある。わが家は、比較的自由な家風だった。
にゃん吉はといえば、毎日、朝と夕方にパトロールに出かける習慣があったが、彼が出る時と入る時は門の前で「にゃあ」と鳴いて合図する。たまに、塀を飛び越えて出入りすることもある。疲れるらしいので、基本的には鳴き声で呼ぶことが多かった。今日ばかりは、こうして頭に乗せて門の前にいるのだけれど。……ちくしょう。
そうしているうちに、カタカタと木の軋む音を立てながら扉が開いた。すると、そこには
「よ!元気してたか〜!?」
「ちょっと、夜中なんだから静かにしなさいよ」
龍也と、陽菜が立っていて。
「いや、この光景あの子に見られたら共犯だと思われかねないな」
僕は、頭のこぶを押さえながらそう冷静に呟いた。
「ん?どしたー?」
龍也に続いて陽菜がぽえぽえした表情で、
「晴翔、頭大丈夫?」
その言い方だと、僕が馬鹿みたいになるんだが本当に大丈夫だろうか。ねえ、ほんとうに大丈夫かな?ねえねえ?ほんとに、他意ないんだよね?大丈夫だよね?
「いや、ちょっとそこで頭ぶつけちゃってね。それより、なんで2人がここにいるの?」
続けて、「あと、大丈夫だから、ふつうだから、なんにも問題ないんだからね!」と念押しする。その姿に、ふたりは小首を傾げていた。……おい、待てよ。
「それは、俺が呼んだからだよ晴翔」
「理玖?」
「2人が、晴翔に相談したいことがあるんだってさ」
「俺に?どうして?」
彼女の件だったとしても、彼女と面識があることをこの2人は知らないはずだ。
「それがね……」
そう言って苦笑する理玖が、やれやれといった様子で手首と肘を曲げ、手のひらを外側に向けたポーズで話し始めた。




