ちょっぴりヤンデレな令嬢令嬢ヴィオレットの幸せな悩み
拙作、「恋愛小説のサポートキャラに転生したけど原作崩壊が止まらない。」の、作中作を短編にまとめてみました。よかったら併せてどうぞ。
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ある国の貴族たちが通う学園の卒業パーティー。そこで、この国の第一王子は婚約者の公爵令嬢ヴィオレットに、婚約破棄を突きつけた。
「ヴィオレット、君には失望したよ この国の聖女であるリーベをいじめ、その上リーベを、階段から突き落とそうと企むなんて。」
「まあ、そのようなこと私はしておりませんわ」
嘘である。バッチリいじめている。階段から突き落とそうと考えたことは数知れず。何なら、殺害計画も立てていて、実行秒読み前だった。
王子のそばに侍従が駆け寄って何事かを耳打ちした。
「今、其方の部屋を捜査した結果、数々の髪の毛などの呪物の痕跡が出てきた! これで聖女を呪う気だったのだろう!」
それは、ヴィオレットが収集していた王子の、身体の一部とか部屋から出たゴミとかである。聖女は関係ない。全部、全力で収集していた。
そう、ヴィオレットはヤンデレだった。これまで王子に近づこうとしてヴィオレットに阻まれた令嬢は数知れず。ヴィオレットの能力が高いのも仇となり令嬢ブロックに関して今まで尻尾をつかませたことはない。また、権力と持ち前の優秀さで王子のかけら収集もバレていない。
「…その女を連れて行け!」
なんだかんだつつがなく?婚約破棄騒動は終わったらしい。その後ヴィオレットは投獄されて、辺境の修道院に送られた。
そこで長生きして死んだ。短命じゃないのか。イマイチ悲劇の悪役令嬢感がない。まあ、悲劇を起こそうとしていた側なので。そこは最近流行りの冤罪系悪役令嬢とは違う。ヤンデレなのだ。
ヴィオレットはひたすらに王子を思い、王子のことだけ考えて生きていただけだが、邪念がないと神父には褒められた。まあヴィオレットには邪念がないというよりは、邪念のみで生きていたというのが正しいだろう。狂おしいまでの偏愛を邪念と呼ぶなら。
目が覚めてヴィオレットは気がついた。手が小さい。鏡を見ると幼い頃のヴィオレットが映っていた。
きっと時を戻ったのだろう。最終的にヴィオレットはそう結論づけた。何故かあっさり適応する。
そして、ヴィオレットにとって運命の日がやってきた。前世のヴィオレットが狂おしいまでの偏愛を注いだ王子との出会いの日。第一王子、カイザーの婚約者探しの茶会が開催される日だ。
そして、ヴィオレットは前世と同じくカイザーの婚約者に選ばれた。
それからの、ヴィオレットの動きは速かった。 聖女であるリーベを、養女に迎えていたナロウ公爵家とその周辺を調べ上げ、見つかった些細な闇組織との関わりをスキャンダルにして没落させて、リーベを守っていた者たちを貴族社会から追放。これで有力な公爵家はヴィオレットの家のみとなった。これで表立ってリーベがヴィオレットと敵対した場合、リーベの味方ができる貴族令嬢はいない。
そして、リーベが聖女と判明した瞬間に、リーベを、養女として家に迎えて、リーベを完璧に教育。さっさと騎士団長の甥と婚約させた。これで、リーベが他の男(特にカイザー)に目移りする可能性が下がった。と言うか社会的に、婚約者がいるのに他に男ができたらたたかれる。万が一にでも相手の男が死なない限り婚約者がいる他の男に粉をかけても現実的に結ばれないだろう。
そしてヴィオレットは憂いなく学園生活を過ごした。考えられる火種はちょこちょこ潰して消した。カイザーとデートしたり恋人らしいこともたくさんした。
そして、卒業パーティー。今世は何事もなく過ごした。ヴィオレットは幸せ者だった。また、リーベも婚約者と仲睦まじかった。表面上は、何も問題はない。
「ねぇ、ヴィオレット 本当に僕のことが好き? 僕だけを見てね? 他の男なんて一生許さないよ? そんなことがあったら僕と心中しようね?」
「ええ、もちろんですわ 誰よりも愛しています もし貴方が余所に女を作ったら、女を痛めつけてから心中しましょう 私だけを見てくださいね」
「他に女を作ることなんて一生ないけど、約束、だよ?」
「はい、分かりました 約束です」
強いて言うならヴィオレットのヤンデレがカイザーに移ったことことくらいが問題だった。束縛してくる王子様にヴィオレットは幸せな悩みを持っていた。
「愛されすぎて嬉しすぎる」という。
ふざけんな!リア充爆発しろ!このヤンデレバカップルめ!