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第6章

 アレンの例のコラム記事がユトレイシア・クロニクル紙に掲載されるようになった約三週間後……ミランダは、徐々に悩みの沼に沈みはじめていた。


 そのはじまりは、夏休み中に書いたミランダ渾身の中編小説が、その後Bマイナスという評価を受けて返却されたことに端を発する。というのも、大体同じくらいの長さの小説を友人のリズ・パーカーも提出しており――彼女の評価の結果のほうがAプラスだったという、そのせいだった。


 この件に関して、何かしらのえこひいきの可能性はないということは、ミランダにしてもよくわかっていた。ただ、夏休み中、お互いに書いた小説を交換し「このあたり、説明不足でよくわかんない」とか、「ここの言い回し、こういうふうに直したほうがよくない?」といったように意見交換して推敲した原稿を、ふたりは提出していたわけだが……やはり、自分が書いたもののことは我が子の欠点が親には見えにくいように、良く見えてしまうということなのだろう。


 小説の内容として、ミランダは自分の書いたもののほうがリズの小説より面白いと思っていた。そのかわり、リズの書く文章は状況描写や背景等が正確であり、そうした点については彼女の書くもののほうが(上手い)とか(リズのこういう書き方、ほんと感心する)といったように感じていたとはいえ――評価のほうにこれだけ違いがあるということに対し、彼女は納得いかなかったのである。


 ミランダはもちろん、リズのことが友達として好きだったし、「なんでも話せる数少ない親友のひとり」といったように思ってもいる。けれど、この件に関してミランダは、誰にも何も言えなかった。他にも、自分につけられた評価を「不当である」として教授たちに訴えでる学生というのは、実は毎年必ず他にもいる。ところが、文学部の伝統として……こういう時、学生たちの間で当の提出物の回し読みがなされ、意見や感想が交わし合われることになっているのである。そしてそれは、下手をするとある種の「吊るし上げ」の場と化す場合があり、ミランダとしてはそこまでの勇気は持てなかったといえる。


 そこに加えて、某文藝誌に投稿していた小説が落選したことがわかったというのも、ミランダが落ち込みのデススパイラルに嵌まり込んだ理由のひとつだったに違いない。というより、ミランダは出来ることなら大学の文学部在学中に作家としてデビューしたいという夢があった。ところが、大学に入学してからこの三年、どこの小説の賞に応募しても落選続きで……(わたし、物を書く才能がないのかしら)と、この時かなり決定的に落ち込んでいた。


 実をいうと、アレンが「これ、ちょっと読んでみてくれないか」と、茶封筒に入った原稿を自分に渡してきた時――その内容について、ミランダはあまり期待していなかった。むしろ、読む前から(あんまり面白くなくても、やんわり遠まわしに言う感じで、アレンのこと傷つけちゃいけないわ)と、そう思っていたくらいなのである。


 けれど、アレンの書いたものは文才があるかないか以前の素晴らしい出来映えだった。言ってみれば、今のご時勢、ツイッターやブログで発表した文章が、ある一定以上の読者数を越えた時点で収益が見込めるとして、書籍化されることがあるように……アレンの書く文章もちょうどそれに似ていた。書いていることは、日常にあった些細なことばかりである。大学や、大学の寮であった面白おかしいこと、アルバイト先であった嫌なこと、あるいは珍奇な客との遭遇についてなどなど――実体験について、平易な文章によって書き綴ってあるため、「これは絶対万人受けするはず!」と、ミランダにしてもその時点ではっきり確信していたほどであった。


 その後、ノンフィクション・ライターとしても有名なジョサイア・ジョンストン教授の元にその原稿を持っていき、教授の紹介でユトレイシア・クロニクル紙の編集者、ウィリアム・コネリーと話し合いを重ねることになり……晴れてコラムの連載が決定した時には、ミランダは我が事のように嬉しかったものである。


 ところが、ある意味折悪しく、ミランダのほうでは物書きとしての才能を誰からも認められないのみならず、文学的なことでは大してなんの拘りもないアレンのほうが大学内にて、人々の注目を集めるということになった時――その時点でミランダは、少しの間アレンと距離を置くことにしようと思っていた。


 その上、ミランダの運気はその後も下降する一方だったといえる。大学卒業まで、残り約一年……ユトレイシア大学入学時、ミランダは必ず大学在籍中に作家デビューしてみせる!と息込んでいたわけだったが、これはもう自分の作家としての才能には見切りをつけ、もっと現実的な就職ということを考えたほうがいいのだろう。そこでミランダは、ガルブレイス出版社から出ていた求人票を掲示板で見かけ、面接へ行ってみることにした。自分なりに面接官の質問等を予想し、対策して臨んだ面接だったが、午前中・筆記試験、午後・心理テストと、この時点ですでに三時であり、その後ようやく面接を受けて帰ってきたのだが、翌週には「まことに残念ながら……」という不採用通知がミランダの元には届いていた。


 ほとんど一日がかりの就職試験で、帰ってきた時にはくたくたになっていたというのに――第一次面接ですらも自分は突破できなかった。このことは、ミランダの精神に大きなショックをもたらすことだった。何分、ユトレイシア大学へ入学するまで、学業においてもスポーツにおいても、その他音楽も美術もそつなくこなす才能に長けたミランダにとって……この時、「自分の才能」というのがどの程度のものかが、初めて見えはじめていたのである。


(簡単にいえばまあ、こういうことよね。わたしはすべてにおいて、ようするにBマイナスの女ってことなのよ。どの分野かでAプラスになれないかわり、勉強もスポーツも、音楽も美術も……普通並よりは上、オールマイティに色々器用にこなせるかわり、突出した何かの才能ってものが欠如した人間なんだわ……)


 ミランダのこの意見を聞いたとすれば、彼女の家族もリズやコニーといった友人も、恋人のアレンも、「むしろそれがどんなに凄いことかわからないのか!」とばかり、彼女のことを全力で慰めてくれたことだろう。けれど、この時ミランダはかなりのところ本気で落ち込んでいた。そしてそんな時、ウィリアム・コネリーから電話がかかってきたのである。


『そのさ、アルフレッド・ナイマンが新作の小説を出すっていうんで、出版記念パーティを開くんだ。もし良かったら……そのう、一緒に行ってもらえないかと思って』


 アルフレッド・ナイマンは元医者で、医療ジャーナリストから小説家に転身したという作家である。ミランダはファンというほどではなかったが、それでも三冊ほど彼の本を読んだことがあり、「内容についても構成においても文章力においても、物書きとして本物の力量のある作家」と思い、尊敬していた。


『あ、ほら、もちろん僕だってわかってるよ。君はアレンとつきあってるんだし、これはそういうのじゃないんだ。なんていうのかな……ナイマン氏のそのパーティは同伴者が必ず必要でね、前に行った時には自分が場違いであるように感じたくらいで……僕、ガールフレンドも今いないし、君にはちょっとそういう振りをして欲しいっていうか。なんだったら、そういう理由だってことで、ぼくからアレンに説明したっていいし』


『行くわ』


 ミランダは即答していた。何より、気持ちがムシャクシャしていた。化粧をし、胸の開いたドレスでも着てパーティへ出席すれば――今自分の抱えているフラストレーションも、少しは解消されるに違いない。


 アルフレッド・ナイマンの新作、『アフガニスタンの患者たち』をミランダは急いで購入して読むと、フォーシーズンズ・ホテルで開催された出版記念パーティのほうへ、ウィリアムの同伴者として出席することにした。パーティのほうはスピーチ等については退屈極まりなかったとはいえ、印税の一部をアフガニスタン支援へ回すというナイマンの呼びかけには、ミランダ自身とても感動したし、彼女も出入口に設置されていた募金箱のほうへ、ほんの十ドルではあったが、寄付して帰ってきたほどである。


 ある意味、このことを皮切りに、ミランダはその後もウィリアムと一緒に、作家自身、あるいは出版社主催のパーティへ出席するようになり……十月下旬、そんなことが四度目にもなるという頃のことだった。ミランダを面接で落としたガルブレイス出版社のパーティがリッツホテルであり、ほろ酔い加減だった彼らが、バルコニーに出て夜風に当たっていた時のことである。


「君の書いたもののことなんだけど……」


(ええっ!?今そんなこと言う?)


 ミランダはそう思ったが、とりあえず黙っていた。ウィリアムから出版関係者の誰かしらに紹介してもらえるというのは、ミランダにとって楽しいことだったし、「ユトレイシア大学の文学部ということは、何か書いてらっしゃるんでしょう?」とか、「そのうち、うちに原稿を持ってらっしゃい」と言われたこともあった。そうした事柄については、社交辞令であるとして額面通りに受け取るべきではないのだろう。ミランダにしてもそれはわかっている。けれど、ウィリアムがどこかの出版社に橋渡しをしてもいいと言うので、ミランダは自分が書いた中の自信作を、ウィリアムに読んでもらうことにしたのである。


「良かったよ、結構……女性の主人公の複雑な心理なんかが、すごくうまく描かれてたと思う」


「ああ、そう」


 ミランダのほうでは、若干冷笑的な態度だった。なんにせよ、とにかく文学的なことについて、彼が「わかる」側の人間であることは間違いのないところである。また、ウィリアムが自分を傷つけないために、遠まわしかつ遠慮がちに真実を述べようとするなら、自分の作品の価値は結局のところ「そんな程度のものでしかない」ということなのだろう。


「で、僕に聞いてきたよね。どういうところが悪いと思うかって……その、さ。確かに君は、なかなかいいものを書くと思う。でも、選ぶテーマがちょっと一般受けしないっていうか、読む人を選ぶってことが、小説が落選した一番の理由なんじゃないかと思うよ」


「そういう遠まわしな言い方、やめてくれる?そのくらいだったら、『君はそこそこいいものを書くかもしれないけど、はっきり言って才能まではない』とでも言ってくれたほうが、よほど親切よ」


「いや、ミランダだってわかってるはずだ。正直、僕は今ここで君に『作家として才能はない』って言ったって、全然構わないとは思うよ。何故ならね、それが出版社の編集者であれなんであれ、『才能ない』って言われたって、書き続けるくらいの作家じゃなきゃ、そもそもお話になんかならないからさ。僕だって、君と同じ大学の文学部卒なんだから、出される課題についてのことや、それにどういった評価を教授たちがつけるのかも、大体のところわかってるつもりだ。なんにしてもね、18世紀フランスの伯爵令嬢が主人公とか、初恋の侯爵が政治的に失脚して、イギリスの男爵と意に染まぬ結婚をするとか……それをこうもうちょっと、現代風にアレンジしたらどうかと思う」


「現代風にって?」


 ミランダはこの時、泣きそうだった。ウィリアムと出るパーティは高級ホテルのきらびやかなものばかりで――ミランダに現実の鬱憤を一時的に忘れさせる効果があった。けれど、とうとう元の現実の魔の手が追いついてきてしまったのだ。


「う~ん。なんていうのかな……ミランダの書くものは、時代考証についてもきちんと考えられていて、そのあたりの描写については僕も感心する。でも、もうちょっとこう……君の今の大学生活を元にして、それをフィクションの青春グラフィティとして描いてみるとか。あと、小説の文体だね。そりゃ、時代ものを描く時にはそれなりの重厚さってものが必要にはなるだろう。けど、もっと現代風に読みやすくアレンジすれば――一次選考ですらも突破できないとか、そういうことはなくなってくるんじゃないかな」


「ほんとに?」


「保証はできないけどね」


 この時、ミランダが思わず泣いてしまったのがよくなかったのかもしれない。彼女が瞳の淵の涙を指先で払った時のことだった。ウィリアムがキスしようとしてきたのだ。


「駄目……っ!やめて……!!」


 ミランダがどんと突き飛ばしただけで、この件はそれきりになった。ウィリアムはあくまで大人の態度で、(女性が泣いている時にはこうするのが礼儀)くらいの気持ちでキスしようとしただけで――それ以上の感情があるとは、その後少しも触れはしなかった。


(でも、よく考えたらほんとそうよね……)


 帰りのタクシーの中で、ミランダは反省した。いや、猛省といっていいかもしれない。ここのところの自分の態度というのは、『アレンから大人の男のウィリアムに乗り換えちゃおっかな~』と彼に映っていても、まるで不思議はなかったに違いない。そして、キスしようとしてどんと突き飛ばされた時の、ウィリアムのあの傷ついたような顔……。


(ほんと、最っ低だわ、わたし……)


 ミランダは自宅マンションのほうへ辿り着くまで、タクシーの中で泣いた。アレンにしても、自分の態度が突然冷たくなり、どうやら避けられているようだ……といったように察していることだろう。そして、ウィリアムの傷ついたような顔と、アレンがいつだったか、ミランダが軽い気持ちで他の男と踊り、フロアから戻ってきた時の顔とが――彼女の中で完全にリンクする。


 ウィリアムは今、三十手前くらいだったろうか。けれど、問題はそうしたことではない。身勝手かもしれなかったが、ミランダは今、猛烈に恋人と会いたくて堪らなかった。そうなのだ……アレンが自分をひとりの女性というよりも、傷つきやすい少女として扱ってくれたように、自分だって彼に対し、「傷つきやすい少年」として接するべきだったのだ。そんなことに、今ごろになって気づくだなんて……。


(ううん。でもまだ手遅れってわけじゃないわ。何もわたし、もしうまいこといってウィリアムが自分の書いたものを出版する手筈を整えてくれたら……彼と寝てもいいとか、アレンとは別れてもいいとか、そんなことまで考えてたわけじゃないんだもの。そういう意味じゃ、これは浮気ってわけじゃないわ)


 自己弁護的な部分が多少なりあったにせよ、ミランダはこの件に関し「精神的に浮気しようとした」として、アレンに報告する義務まではないだろうと考えていた。とはいえ、自分の態度がおかしくなってから、一体何があったのか、その点についてはミランダは正直にすべて告白し、かつ懺悔する気持ちがあったというのは事実である。


 この日、ミランダがタクシーを降り、エレベーターでマンションを五階まで上がっていくと(一階の店のほうはこの時間、すでに閉まっている)、廊下で妹のリンジーとすれ違う。彼女は何故か片手に日本のみたらし団子を持ってくちゃくちゃ食べていた。


「どうしたの、ミランダ?マスカラが溶けて、ピエロっていうか、まるきりジョーカーみたいになってるわよ」


 妹が小憎らしくも「ぷっ」と吹きだしたため、ミランダは「チッ」と舌打ちして廊下を歩いていった。その後、バタンとドアを閉めると、そこからはミランダの素っ頓狂な笑い声が聞こえてくるということになる。


「アッハッハッ!!ヒーッヒッヒッ!!」


 ドレスを脱ごうとした時、全身の映る姿見の中の自分と目があった。確かに、マスカラが溶けてダマになっているだけでなく……そこから放射状に黒い線が伸びている。


「いつからこんなふうだったんだろ。たぶん、タクシーで大泣きした時からだとは思うけど……ああ、それでか。カードでタクシー代支払おうとしたら、あの運転手の親父、一瞬ビクついてたもんね。こちとらタクシー強盗じゃないのよ、なんて思ったけど、全然違う意味だったんだわ」


 このあと、ミランダは自分のベッドに寝転がり、さらにひとしきり大笑いした。さっきまで大泣きしていたかと思えば、今度は大笑い――まるで双極性障害の患者のようだとミランダは思ったが、この時初めて自分の嵌まった負のスパイラルが終わりつつあるらしいと、初めて悟ったのである。


 ミランダはこの日、少し引いた視点から見て、このところの自分が「不運だ」と感じたことに対する、自己憐憫キャンペーンについてあらためて反省した。すべてはおそらく、簡単にいえば<嫉妬>の一語に尽きることだったに違いない。ソウルメイトのような恋人のいる、課題はいつでもAプラスの友人に対する嫉妬、自分は一次選考すら突破できないのに、なんらかの小説の賞で佳作以上の賞を取れてしまう顔すら知らない人たちに対する嫉妬、さらには、ずっと自分にとって精神的支柱であり、癒しでもあったアレンが新聞でコラムを連載し、すっかり有名人になってしまったことに対する嫉妬……そもそも、<嫉妬>というのはおそらく、「自分がその人に成り代わりたい」という立場の人物に覚える感情のことなのだろう。


(それでいくとこの場合、どういうことになるかしらね……わたし、リズのことは好きだし、彼女にロイがいるみたいに、わたしにはアレンがいるわけだから、これはそういう種類の嫉妬じゃないのよ。リズがBマイナスで、わたしがAプラスであるべきだったとも思ってない。そうよ。なんでわたしもAプラスとまでいかなくても、Aマイナスくらいじゃないのかみたいな、これはそういう話。それに、リズは「わたしより、ミランダの書いたもののほうが絶対出来がいいと思う」とも言ってくれた。わたしが逆の立場なら、たぶんそんな言葉、絶対口からでてこなかっただろう……それなのに、リズったらなんて優しい子なのかしら!)


 とはいえ、ユトレイシア大学の文藝雑誌に一緒に投稿して、リズの書いた詩が採用され、自分の散文が駄目だった経験から――ミランダはこの時、リズの言葉を額面通り受けとめてなかった気がする。


(そうそう。リズは単にほんとにいい子ってだけなのよ。で、まあ小説の落選についてはもういいわ。ウィリアムの言うことも一理あると思うし、また少しスタイルを変えて、現代風の小説にも挑戦してみよう。あとはガルブレイス出版に落ちたことだけど……そもそも各出版社が採用する人員自体、とても少ないんですものね。そう思ったら、また次どこか別のところに挑戦して駄目でも、ある意味仕方ないとして――そうだわ。わたし、そういうのがたぶん嫌だったのよ。今まで、なんかちょっとでもストレスの溜まることがあれば、なんでもアレンにしゃべってきたのに……自分でそう推薦したにも関わらず、わたし、そのことできっと、アレンのことをいつしか羨ましいと思うようになっていたんだわ)


 けれど、この件に関してアレンには100%まったく罪がないことは、ミランダ自身が一番よくわかっていることである。また、そうと強く意識して、アレンが知ったらおそらく傷つくだろうこと――他の男とデートまがいのパーティへ出かけること――を繰り返したわけではないにせよ、潜在的な部分では間違いなく自分の性根のほうが曲がっており、彼ほど純粋でないことが、ミランダには痛いほどよくわかっていたのである。


(そうよね。もしわたしがアレンの原稿を読んだ瞬間から激しく嫉妬して、『こんな程度の文章じゃ、全然お話にならないわ』と遠まわしに言ってたら……アレンはきっと「ああ、やっぱりな」とでも言って、すぐ諦めてるくらいの奴だものね)


 ――こうしてミランダは、十分内省してから、アレンとのデートに応じた。待ち合わせ場所は、ダイアローグの出入り口前にある抽象的な彫刻の前だった。彫刻のタイトルのほうは、『天使と庭で遊ぶ子供たち』というものだったが、顔のない翼の生えた存在と、その前に人型でない物体がいくつか転がっているという手合いのもので……タイトルを見ない限り、あまり余計なことの言えないタイプの作品だったと言える。




 >>続く。






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