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■ケイカという少女 ◎ティユイ、ケイカ

 町の広い通りに出る。町には車が一台も走っていなければ人通りもない。それどころかモノが何もない。


 どうして気がつかなかったのか。いま周辺にあるのは建物のオブジェでしかない。この町は既に死んでいるのだ。


 ケイカが道の真ん中で立ち止まると後ろに手を組んだままくるりとティユイのほうへ振り返る。


「さて、昔話です」


 何を急にとティユイは思わず身構える。そういえばこの少女とは先ほど出会ったばかりなのだ。


「あなた、何者です?」

 最初からこう訊ねるべきだった。ティユイはいまさらながら自省する。

 そもそもニィナとはぐれた時点で某かの力が働いていると疑ってかかるべきだったのかもしれない。


「ティユイ皇女、あなたは海皇陛下と皇后陛下の最期をご存じなのではないですか?」


 ティユイの表情が凍てついたように微動だにしなくなる。


「両陛下を殺害できるはずもないソウジ・ガレイはお二人を異界へ送り、お隠れになったと世間には公表。海皇の座が空位であるところを狙ってガレイは皇位の(さん)(だつ)を企てる」

 ケイカは表情を動かさない。


「異界送りされればこちらに帰ってくることはできません。お父様とお母様は殺されたも同義です!」

 ティユイは叫ぶ。だが、ケイカは取り合わない。


「……ガレイはかねてより目を付けていた二人の娘に自分の子供を産ませようと企てる。それを察知した長女は次女を逃がすために自分を犠牲にしたんですよね」

 軽やかな口調でケイカの口から語られるとは対照的にティユイの表情には眉間にしわが寄っている。


「私がそこでどんな目に遭ったか知っているようですね」

「ええ。口に出すのははばかられる内容であることは承知しています。……やはり記憶は既に取り戻していましたか」


 ティユイは目を見開く。

「もう一度聞きます。あなたは何者ですか、ケイカさん?」


「私は新生四天王の一人――本当はこの名乗り嫌いなんですけどね。ヨリミズ・ケイカです。付け加えると異界より召喚されし者とでも言いましょうか」


 二人の間に張り詰めた沈黙が漂う。それを最初に破ったのはティユイのほうであった。

「あなたが私の口惜しさを注ぎに来たとでも?」


「仕合に来たのは間違いありませんよ。ヒズル爺ちゃんには協力するのと、もう一つは自らの目的を達成するため」

「……そうですか」


 空中からラゲンシアが降りてくる。

「まるでヒーローのようですね」


 ケイカは茶化すような口調だ。少しげんなりしているようにもある。


「では、私もペルペティでお相手をしましょう」

 ケイカの後ろから人機と同じサイズくらいの人型メカがやってくる。


「お仲間の支援は期待しない方がいいですよ。こちらで対策させてもらいましたから」

「……あなたこそ私に勝てるとでも?」


 ティユイから静かではあるが、殺気が漂う。

「それはこれからやってみればわかること。――では、()()いましょうか」


お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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