■ブカクという水母 ◎ティユイ、ニィナ
ブカクという水母はいわゆる軍港である。それはセイオーム軍が擁する中でもトップに入る規模だ。
ティユイには休暇が与えられており、その間はブカクを自由に移動する権利が与えられていた。
もちろんティユイ一人というわけにはいかない。ニィナとホノエが護衛につくという条件付きでだ。
「ティユイ皇女はそのコスプレをいつまで続けるんですか?」
セーラー服姿をコスプレとニィナに指摘されて、ティユイは顔を真っ赤にする。
二人だけが乗っている車内での会話の第一声がそれであった。
「し、心外です!」
その反応にニィナは呆れているようだった。自覚なかったんだと。
「一九歳なんですよね。その服の適齢期からはすでに外れていますよ」
「自分なら問題ないと言いたいんですか?」
ティユイは笑顔を作って余裕を見せようとするが、微妙に目だけが笑えていない。
「そもそも着ませんから」
コスプレ衣装としては面白いかもしれないが、私服にするとなると話は別だ。
「私を痛い人みたいに扱うのやめてください」
心外だとティユイは訴えてくる。
「だったら普通の服装したらいいじゃないですか」
「ふ、普通……」
普通について悩む素振りをティユイは見せる。普通とは要するに悩まなくていい服装のことだと思うのだが、その認識にニィナはずれを感じていた。
「わかりましたよ。せっかくですから皇女の好みに合う服装を探しに行きましょうか」
ニィナの提案にティユイの顔は露骨に引きつる。
「このセーラー服にはですね。深い思い入れがありまして……」
「それと別の普段着を持つこととは話は別です。さあ行きますよ」
ニィナは行き先を設定しはじめる。
「……わかりましたよ。その代わり外での皇女扱いはやめてくださいね」
「もちろんです」
「それと同世代として扱ってもらえると嬉しいかな……なんて」
ティユイは上目遣いで訴えてくる。
「年齢はお互いそんなに変わりませんが……」
ニィナは妙な同情をこの皇女にしてしまうのだ。本気度が相当なだけにである。
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