■スヴァンヒルトはオウエルへ ◎キリ、マコナ、キハラ、アズミ
スヴァンヒルトのミーティングルームにて、マコナはキリ、キハラ、アズミの三人を招集した。
「お三方に集まっていただいたのは他でもありません。これからの探索業についてです」
端的に言うとルディとセイカの居場所が判明した。場所はオウエルという水母である。
「オウエルは禁則地だよな?」
確認を込めてキハラが訊ねる。
「ええ。ですが、こういった事態での罰則はありませんよ。問題は無人の水母であることです」
住居などはなく生活用品なども存在しない。それを目的とした水母でないためだ。
「つまり彼らは食糧などを我々が救助に来るまで自給自足しなければならない状況にあります」
救助は急ぐが、それでもかけるべき時間はかけなければならない。それまで二人には何とか生き延びてもらわないといけない。
「その辺はどうよ?」
キハラはアズミに話をまわす。
「水母内で狩猟の許可は?」
アズミの質問にマコナが答える。
「許可は早々に下りています。まあ、そこまで珍しい生物がいるわけでもありませんしね」
それは多少取って食っても問題ないという発言を意味している。
「では、配置についてお話しましょうか」
マコナの説明は以下の通りだった。
レギルヨルドは水母外で待機。
スヴァンヒルトは人機三機を擁して水母内にて待機。
人機は三機小隊として水母内にてルディとセイカの捜索にあたる。
「質問をもう一つ願いたい」
アズミである。
「どうぞ」と澄ました顔をしながらマコナは促す。まるで内容を見透かしているように。これにはアズミも苦笑気味だった。
「捜索と言うには人機は戦闘を前提にした装備になっている。どうしてか?」
「セイオームのほうに動きがあったことをこちらで観測しています」
「セイオームが仕掛けてくると? 理由は?」
マコナは首を横に振る。
「理由まではなんとも。ただ、動きがあったのはたしかです」
これはセイオームから二つの艦艇が出撃したという情報が基となっている。
「こちらがオウエルに到着するまでの期間は?」
キリからの質問である。ここでは三人に自由な発言権が与えられていることを示していた。
「実際の移動は三日間ほどで到着しますが、諸々の手続きを考えてプラス二日ほど見た方がいいでしょうね」
政治の話ということだろう。手続きというのは要するに上層部や政治家を納得させる材料集めに費やす時間のことだ。
「一年前にセイオーム軍がハルキア国に攻めこんだせいで各国はピリピリしているのですよ。当事者のフユクラードの艦をアークリフ領内に入れるとなれば尚更」
「ということはそれまで洋上で待機ですか?」
「そうなるでしょう。補給物資も洋上での受け取りになるようです」
補給物資がもらえるのは不幸中の幸いというところかとキリは安堵した素振りを見せる。
「では、質問は以上ということでミーティングを切りあげましょう」
マコナの合図にて解散となった。
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