■キリはレギルヨルドで再会する ◎キリ、ニィナ、リルハ
キリはマグに乗ってレギルヨルドへ着艦する。リーバを切り離して降りるとそこにはキリの見知った顔があった。
「ニィナ……」
フユクラードの軍服を着用しているが、それでも間違えようがなかった。
「えっと……、久しぶり」
キリは何て声をかけていいかわからなかった。きっと彼女は怒っていると思っていた。だが、返ってきたのは予想とは違う反応である。
「ど、どうして泣くんだよ?」
ニィナはキリの顔を見ると急に泣きだしてしまったのだ。
「……わかんない。顔見たらぶん殴ってやるって思ってたのに」
それはそれで恐ろしいとキリは思うが、とりあえず自分がニィナに何をしてしまったのかということに気がついた。
「俺は謝らないといけないんだな」
「そうよ。バカ」
ニィナはキリの胸へ倒れこむように顔を埋める。肩をふるわせて泣きじゃくる姿にどう対応すればいいのかわからかった。
「そうだそうだ。反省しろー」
少し離れて様子を見ていたリルハがやってくる。
「リルハ……」
近くにアズミの姿がないかを探してしまう。
「お兄様はここにいないよ」
何を考えているのか見透かしたような口ぶりだった。
「何も言ってないぞ」
「態度にでてる」
キリは「うっ」と呻いた。
「わかりやすいのは変わってない。安心した」
「そっちも相変わらずのようで」
キリは安心したのだろうか。それには胸につっかえる何かを感じずにはいられない。
「キリが家を出たとき自分のせいだって、部屋に引きこもっちゃってさ。部屋から出すの大変だった」
キリは顔を引きつらせる。
「ティユイ皇女に告白する映像が流れたときはすごい剣幕だったんだから。それをなだめるのも大変だった」
そう言うリルハも安堵した表情でキリを見ていた。
「いろいろあったのキリだけじゃないから」
それはわかってほしいとリルハは言った。
「……私はキリが軍へ入ること自体に反対だけど、だからってどうしてセイオーム軍なの?」
ニィナはまっすぐな視線で問いをぶつけてくる。
「ファランドールのレイア艦長がある日俺の家にやってきて、俺をセイオーム軍に行くことをうちの両親も了承したんだ」
そういえばキリの両親はレイアと知り合いのようだった。
「キリが軍に――それも人機のパイロットなんて」
「それを言ったら俺は誰の記憶も引き継いでいない。親父の研究だって満足に手伝えやしないんだ」
キリは苦しそうな表情を浮かべる。
「そのことで誰もキリを攻めたりはしなかったでしょ」
ニィナは切実な表情を浮かべる。
「それは知っている。でも、いまのままの自分を受け入れられないんだ。俺はやっぱり何者かでありたいと思う」
キリの表情がつらそうだったのだろう。それに対してニィナは何を言えただろうかと口をつぐんでしまう。
「だったら、せめて私たちのことも頼ってよ。それはキリが一人だけでやらないといけないことじゃないんだからさ」
それがリルハなりのフォローなのだろう。
「ありがとう、リルハ」
リルハは嬉しそうにはにかんだ。このお礼は彼女にとって嬉しい誤算だったのだろう。
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