■マコナ艦長より ◎クワト、マコナ、アズミ
レギルヨルドはキーロを出港する。ファランドールを迎え撃つためである。
艦長室の表札が掲げられた室内にはクワトが一人。
クワトと対面する形でディスプレイにはスヴァンヒルト隊艦長のマコナの姿があった。
「この場合はさすがと褒めておくべきか」
クワトの口の端が思わずあがる。
『うまくそちらへ誘導できたと自負をしていますよ』
マコナが言っているのはファランドールの航行ルートである。レギルヨルドその進行方向を立ち塞がる位置にいる。
『せっかくの新造艦なのですから、デビューは派手派手なのがいいかと思いまして』
「君にハメられたと思うと愉快ではないがな」
『我々はどういう形であれ接触することに意義を覚えますが』
「いいのか? 一軍艦を預かる艦長がここまで政治的な動きを見せても」
『他国軍が領内へ侵入すれば撃退するのは軍の仕事です』
それについて異論はないとクワトは思った。ないのだがと、クワトはふうと一息つく。
『龍の通り道が付近にできていますので気をつけてください』
「お互いにな。うっかり巻きこまれると最悪命に関わる」
マコナは目を細めて「ふふふ」と笑う。
『歴戦のクワト艦長からそのようなお言葉をいただけて光栄ですわ』
「君は私を買いかぶっているようにあるな」
『謙遜のようにも聞こえますね。それでは艦長、次の戦場でお会いしましょう』
「ああ、次の戦場で」
これは艦同士の通例挨拶である。その挨拶が終わるとともにマコナとの通信は切れる。それからクワトはアズミを呼びだした。
「どうしました艦長」
それからしばらくして艦長室にアズミが入ってくる。
「先ほどマコナ艦長と話をしていたところだ」
艦長はアズミに席へ座るように促すと自身も座る。
「セイカの様子はどうだ?」
クワトはアズミに訊ねる。
「少し緊張しているようです」
アズミが浮かべたのは何とも複雑な笑みだった。嬉しさと戸惑いを感じるものだ。
「ましてや部下はハルキア戦の英雄であり実の兄、か。ベルティワイザーまで譲ってしまってよかったのか?」
アズミは視線をしばらく仰いでから答える。
「ですから、このように私もまだ前線にでられる余地を残してもらったとも言えます」
「その分の重責を妹に押しつけるということだ。そのことは理解するようにな」
「肝に銘じておきます」
アズミは立ちあがるとクワトに敬礼をする。
「それでは私はこれより持ち場へ戻ることにします」
「了解した」
アズミが部屋を出て行くとクワトふうと一息つく。
「くるか。レイア、それにシンク……」
クワトは思わず言葉が漏れたようだった。
お読みいただきありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします。
感想、評価、お気に入り登録も今後の励みになりますので、ぜひお願いします。




