■アズミとセイカ ◎アズミ、セイカ
■序文
戦争の認識は大きく変わった。
戦時下において厳格なルールが敷かれるようになり、いわゆる虐殺兵器は厳格な使用制限が成された。
たとえば爆炎槍という兵装は本来地下に潜伏するテロリストを焼却、あるいは一酸化中毒で殲滅するというものであるが、市民への被害を懸念して使用制限が課されている。
その甲斐あってか戦争が起こった際の一般市民への被害というものはほぼなくなり、兵士の死亡率は一パーセント以下まで抑えられるようになった。
人型ロボットを戦争で採用し続けているのにはある理由があった。
戦争において人型ロボットの破損させるという行為が人間の腕や足を切り落とす行為に比べて残虐性を抑えられるという観点からだ。
新人類たちは戦争を意図的に起こしている。彼らは戦争を危険な行為という認識はしていない。むしろ戦争が起きないことこそが生命の危機であると懸念している。
彼らは知っているのだ。本来であれば戦争とは人間同士が殺し合う行為を指すのではなく、あくまで個ではなく集団同士の対立でしかないのを。
そこに本来であれば殺し合いを持ちこむ必要はないことを。
そこまで理解しながら戦争をやめようとしないのは生命の存在意義が『問題を引き起こす』ことであることを突き止めたからである。
つまり対立軸の必要を認めたということだった。
――◇◇◇――
ハルキア国とアークリフ国の国境近くにキーロと呼ばれる水母がある。
ハルキアの軍事拠点の一つでもあり、現在はフユクラードが港の一部を接収する形で利用していた。
水母の中心部から少し離れたところの一角にフユクラード軍人の住居スペースが確保されており、サカトモ・アズミは自分の住居を出て近くのカフェに来ていた。
非番であるため軍服は着ていない。白のワイシャツに黒基調のブレザーを羽織って、頭にはカチューシャをつけていた。
「お待たせしました」
長い髪をポニーテールでまとめ紺色のワンピースにブラウンのカーディガンを羽織っている。目鼻立ちは整って凜々しい印象を与える。
どことなく雰囲気の似た二人であった。
アズミの対面に女性はスカートを押さえながら座る。
「兄上、お変わりないようで」
「セイカこそな。チオルとコウチは元気か?」
「ええ、元気にやっていますよ。ですが、直接出会えないのは寂しいとおっしゃってました」
「そうか。だが、本国への帰還許可が下りない状況ではな」
アズミは自嘲気味な笑みを浮かべる。
「ですが、後悔はなさっていないのでしょう?」
「そう見えるか?」
「兄上の判断は間違っていなかったと私は思いますし、国内にも兄上を凱旋させるべきという意見はあるのですから」
それはご存じでしょうとセイカは目を細める。
「やればセイオームから謗りを免れないだろうな」
アズミが一年前にとった行為はフユクラードとセイオームの関係を結果的に悪化させた。
アズミは本国へ一年ほど帰国許可が下りていないためハルキアで滞在していた。
「そこでスズカ王女に手を出したのはまずかったと思いますが」
セイカは眉間にしわを寄せて困り顔を浮かべている。
「お互いに頼る相手がいない状況ではよくある話だろう」
「他人事であればそのような物言いでも構いませんが、当人が言うのは違うかと」
結果的にアズミは降格してカミトからキーロへ異動となった。
「セイカは説教をしにここまで来たのか?」
「まさか。男女で起こることですから」
実の兄とはいえプライベートなところまで突っこむ気はさらさらないという意思表示だった。
「セイカの指揮下で働くことに不満などない」
「私は不満しかありませんが」
アズミの異動とともにフユクラード軍はレギルヨルド隊を設立した。その拠点がキーロというわけだ。
キーロはセイオームとも国境が近い。セイオーム軍の動きを警戒したフユクラード軍はレギルヨルド隊という独立部隊を配置して睨みを利かせようというわけである。
「私も政治利用された身だ。だが、不満は言っていない」
「なぜです?」
「最前線で戦わせてくれるということだからだ。それは私の希望と合致する」
それから間もなくティユイ皇女がケイトで発見されて連れ出されるという事件が起こった。
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