■ガルダートより。一応の決着 ◎キリ、ティユイ、ルディ、レイア、シンク
本来であれば三対二のはずだが、スヴァンヒルト隊に所属する二機の人機は遠隔操作端末の存在もあってか拮抗どころか押され気味である。
ホルティザードから分離した渡り鳥という機体とガナウィルクの僚機である白い虎型のメカである梅花と呼ばれる機体から砲撃を受けていた。
砲撃の仕方というのはキリのマグを直接狙うのではなく、その周囲に散らすような砲撃をかけてくる。
「このままだと二人の援護どころじゃないぞ」
砲撃に切れ目がないのでマグは動きがとれない。このままでと役目を果たすのは難しいだろう。
キリの役目とは戦闘突入後にファランドールへ待避する進路を確保することだ。
こちらの継戦時間は限られている。少しでも過ぎることがあればファランドールは速度を落とさなければならない。
そうなれば最高速度に達するまでの時間が延びて、様々なことに影響を与える。
「責任重大だなぁ。もう……」
『キリ君、そちらにガルダートを送ります。虎さんの相手はこちらで引き受けます』
ティユイから通信がくる。
「頼むよ」
虎型メカに黄金の龍が襲いかかる。黄金の龍こそがガルダートだろう。ラゲンシアから遠隔で操作を行っているはずだ。
「退路を確保しないと」
注意が逸れたおかげで砲撃にも穴ができる。これならキリでも対処が可能だった。
スヴァンヒルトの上方をすり抜けるようにファランドールは進路をブカクへ向けているはずだ。その進路を計算しながら、マグで渡り鳥を牽制しつつ位置取りをはじめる。
ラゲンシアとジルファリアもこちらが退路を確保したことで、こちらに進路を向けている。
わずかだが、一瞬の間に防衛線が緩んだ。それは穴が空いたというべきか。キリはそんな気がした。
その瞬間がたしかにきっかけとなったのはたしかだ。
『全機、フルブーストでファランドールへ向かえ』
ルディからの号令とともにキリはマグのスラスターを全開にする。
「ファランドールへ。後部ハッチの開口を願う」
キリはファランドールへ伝達する。それを聞いたファランドールは通信を受諾したことをキリの機体へ信号を送る。
それから通信手はレイアに指示を求める。
「キリ機より伝達がきました。開口許可を求めています」
「よろしい。ただちに後部ハッチを開口。三機の受け入れシークエンスを開始なさい」
「了解」
「連中、わざと防衛線に穴を空けたわね」
レイアの眉間にしわが寄る。それにシンクが答える。
「ブカクの進路にフユクラードが立ち塞がると思ったほうがよさそうだな」
「スヴァンヒルトはフユクラードと共闘する話がついたと考えるべきということね」
レイアは深々とため息をつく。
「レイア艦長、こちらの進路付近に“龍の通り道”が発生しています」
航海手から報告があがる。
龍の通り道とは海流のことを指す。その流れは急激で巻きこまれると人機であれ戦艦であれ流されてしまう。
「進路への影響は出そう?」
「現在、海流の動きは計測中です。判明次第、報告をあげます」
「頼むわ」
そう言いながらレイアは画面を注視する。
三機の収納を確認後、ファランドールは再び加速をはじめる。
それはファランドールの行き先が新たな戦場であることを意味していた。
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