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■戦闘域突入 ◎レイア、シンク

 接線領域:二〇〇(フタマルマル)。ファランドールの発令所内でレイアとシンクはその数値を注視している。


 接線領域:二〇〇はお互い砲弾の射程外であることを示している。


 レイアは面白くなさそうにふくれっ面だ。

「完全に相手の意図通りね」

「ファランドールは速度が出せる分、急激な軌道変更はできない。それを踏まえての正攻法か」

 つまり相手からすれば軌道は比較的読みやすい。

 反対にシンクは関心しているようだった。


「結構、やばい状態だと思うけど?」

「この状況は受けて立つしかないだろ」

 ふくれっ面のレイアをシンクが(いさ)める。


「人機戦は確定だな」

 相手の射程距離に入った瞬間、砲撃は頭上から飛んでくることだろう。直撃を避けたければ速度を落として軌道を微調整しなければならない。

 

 速度を落とせば再び最大船速に到達するまで時間がかかる。人機戦が必須となれば速度はさらに落とすことになる。


 つまり拠点までの帰還が延びることとなり、物資のやりくりについて再計算が求められていた。


「補給科が大変になるわね」

「こういうことも織りこんだうえで物資は余分に積みこむんだろ」

「そうね……。とりあえずプランの変更をかけましょう」


「物資の配給プラン変更は補給科へ全面的に任せるほうがいいだろうな」

「指示はそれでいいわ。任せる」

「了解した」

 シンクは補給科へ連絡を入れる。


 その間にレイアは操舵手へ指示を出す。

「砲撃は頭上からくるわよ。弾道予測に従って回避運動をとりなさい」

「了解」


 接線領域:一五〇(ヒトゴーマル)と表記される。敵の射程内に入ったが、こちらは射程外という数値を示している。

「よろしい。少しずつ速度を落としながら前進。ぼやぼやしてると食料制限ががかるわよ」


 スヴァンヒルトはファランドールが最大船速で前進する前提で砲撃を行ってくる。速度を落とすだけでも弾道予測は徐々に逸れていくはずだった。


「艦内へ通達。これよりカラーコード:レッドを発動。接線領域:一三〇(ヒトサンマル)に入り次第前方の艦に出力八〇パーセントで砲撃。その後は出力を四〇パーセントに落として一定間隔で砲撃」


「了解」と戦闘士官が返答する。

「接線領域:五〇(ゴーマル)に入り次第、人機は全機出撃。人機隊の指揮はルディに任せる」

 それからレイアは畳みかけるように発令所内で宣言をする。

 

「本艦はこれより前方の艦に正面突破をしかける」

 そう言うレイアは不敵に微笑んでいた。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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