■ラゲンシアの兵装 ◎ティユイ、シンク
岩戸鎧の評価について。
一つとして地上運用における人機の稼働時間を延ばす条件はクリアした。衝撃拡散機能も一定の効果をあげた。
問題は関節部分まで覆ってしまうため可動域が極端に少なくなる。結果としてホバリングでの移動になるのだが、それは特に問題でない。
戦闘になった際に装甲をつけたままの戦闘は戦術を著しく限定的になってしまうという問題を抱えていた。
「つまりすごくやりにくかったです」
ティユイの意見は端的で非常にわかりやすいものであった。
「貴重な意見をありがとう。改良点についてはしっかりフィードバックさせてもらうよ」
これで使用者の聴取も完了である。シンクはやれやれと安堵のため息をつく。
しゃべった内容はログとして残るので、それがノルドール社への報告となる。書面などで書きだす必要がないのはいいところだ。
「私に見せたいものがあるということですが……」
「出航前に運びこんだ機体だ。まあ、もう一機のラゲンシアという表現になるかな」
名称は黄龍。外見はいわゆる東洋の龍の姿をしている。ラゲンシアに合わせて全身黄金色である。
「もう一機のラゲンシアとはどういうことですか?」
「ガルダートにもラゲンシアのリーバが接続できるんだ。もともとはラゲンシアに変形機構をつけようとした名残なんだが……」
「なんでやめたんですか!?」
ティユイが鬼気迫る形相で詰め寄ってくる。
「人機のフレーム――オキュステン・フレームは人体構造の一二〇パーセントを再現する目的で作成されたものだ。変形機構を加えるとなると骨格構造を交互に組み替える構造にしないといけないだろう」
結果として変形機構を組みこむとフレームのパフォーマンスが低下することがわかり、これは大きな収穫だといえた。しかし、ティユイからすれば不満の一つでしかない。
「人型ロボットなんてロマン一二〇パーセントの存在じゃないですかぁ」
ティユイは唇を尖らせる。
「それについては否定しない」
人機という人型ロボットが存在するのはロマンという面を否定はできない。
「せっかくだから変形して、ターゲットインサイトからの突撃! ってやりたいのが人情ですよ」
「どっちも圧壊する可能性が高いけどなぁ」
やめておけと冷静に返される。
「ほら、バリアを張って突撃とか技術的に可能そうじゃないですか」
「六鱗同士をぶつけると相殺されてしまうだろ。そもそも殺し合いになるような戦法は厳禁だ」
そうなると接近して格闘戦で殴りあうしかないではないか。地味だとしみじみ感じる。
「残念しかありません……」
ティユイは心底しょんぼりする。
「ロボットがわざわざ人間の姿をしているんだから、それを最大限生かした戦法をとるべきだと思うがね」
「最大限てどういうんです?」
「人機の大きさには理由があって、あの大きさでなければクエタの海で存在を保てないから。人型同士で戦闘をするのは戦争をより擬態的に見せるためだ」
「擬態的、ですか?」
「人間同士で殺し合いは資源保護の観点から行わないって決まりだ。誰が誰を殺したのかログで残るしな。殺人は忌避されている。だから人型ロボットはいえ、腕や足を分解すだけに留めるわけだ」
「ああ、だから最終的には剣とかで格闘戦するんですね」
「手加減のほうが技量は求められるしな。だから訓練になる」
新人類は戦争に対してホモ・サピエンス側とあきらかに一線を画す価値観を持っている。
「まわりくどくなったが、両腕の格闘武器を使って巧みに戦えということだな」
「まあ、なんとなく了解です」
「他に聞いておくことはあるか?」
「ラゲンシアで出撃しているときにガルダートはどうなるんですか?」
「ガルダートは遠隔操作が可能だ」
ポリムに大部分を任せて操作が可能だという。というか、そもそもリーバを機体に接続しなくても操作できるようになっているのだという。
「あとラゲンシア用の光弾銃と盾の配備されるから。確認をしておくように」
「はい」
光弾銃とはヤチョウというのが正式名称とのことだ。質量を持ったエーテルを高速で撃ち出すものである。実際は光弾銃と呼ばれることのほうが多い。
「装備に名前があるんですね」
ラゲンシアの光弾銃は燕。盾は晦の名称がついている。銃に盾を着脱できるようになっている。
「盾で光弾を受けたりすることはないんですか?」
盾はあくまで銃撃を防ぐものではなく、格闘戦でツルギを受け止めるためのものという説明になっていたためティユイは疑問をぶつけてみることにした。
「推奨はしない。エーテルの弾は六鱗で受けるから無効化できるのであって、盾で防げるような代物じゃないからな」
シンクの口調は厳しい。厳重注意ということだろう。
「了解です」
格闘戦で銃は撃ちだしに制限がかかる。つまり銃に盾を取りつけて運用が正解らしい。
「さて次の話だが――」
シンクの話はまだ続く。
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