■ホノエとキハラ ◎ホノエ、キハラ、マコナ
赤い軍服はナーツァリを象徴し、白い軍服はアークリフを象徴している。
ナーツァリとアークリフは友好のため合同軍を設立した。
それが特殊合同軍スヴァンヒルト隊である。
スヴァンヒルトは現在、ファランドールと一戦交えるために出港をした。
現在、某海域で待機中である。
ホノエとキハラはその部隊に所属する人機のパイロットだ。
パイロットには現在、待機命令が出ている。
休憩室に二人でいるのはそのためだ。
「ホノエ、さっきお前を見送りに来ていた女性は誰なんだ?」
「妻だ」
結婚してたのかよと言ってやりたかったが、特に珍しい話でもない。むしろやっかみに思われるのも癪だ。
「顔に十分出ているがな」
ホノエはフッと鼻で笑う。
「キハラはアークリフの王子でありながら人機のパイロットに志願して結婚もしていない。こちらのほうが問題だと思うがな」
「だから言わなかったんだろうが」
キハラは口を尖らせる。
「表情に出しているなら同じ事だ」
まさに売り言葉に買い言葉。二人が知り合ったのは最近のことだが、距離感はすでに近い。
「ちなみに妻はすでに懐妊している」
ホノエの言葉にキハラはさすがに目を丸くする。
「なぜ驚く? よくある話だろう」
人機のパイロットに早くで妻がいて子供がいるのは特段珍しいことではない。
記憶を引き継げるよう子供を残したうえでパイロットになるのがいいと公式に推奨されているからである。
理由として人機を駆ってとはいえクエタの海が危険であることに変わりはないからだ。
「キハラの立場であればまわりがうるさいだろうに」
この場合、結婚していないほうが大変だろうとホノエが言う。実際にそうだから何も言えなかった。
「姉上のことがあってな」
数年前にキハラは実の姉を事故で亡くしていた。姉が巫女のお役目でアースカへ向かう途中に乗艦した潜水艦が沈没した。
生存者がゼロというここ近年でも大きな被害をだしたことで有名な事故である。
「喪に伏していると?」
「そんなんじゃねぇ」
姉がいなくなってからキハラの胸にしこりのようなものがずっと残っていた。それが何なのか説明は自分でもできない。
だから家を飛びだして軍に入った。とにかくクエタの海に出たかったのだ。そこでなら姉に出会えるような気がしたから。
「お二人ともそちらでしたか」
休憩室に入ってきたのはマコナであった。
「艦長かい」
「乗艦にその物言いは失礼だろう」
ホノエがキハラを咎める。
本当にアークリフの王子なのかとホノエは疑問に思う。
「キハラさんはその……自由な生き様を体現してのことでしょう」
「それはどういう表現なので?」
フォローになっているのかとホノエはマコナに問いかける。
「王族の方が気品のある振る舞いをするというのは我々の思いこみではないかと」
「俺は王家の一員として王子ってことになっているが、継承権の順位は低い。いわゆる補欠ってやつだ。そういう意味では姉上が特別だっただけだ」
代々パイロットの家系が王族の血統だというだけで、それもまた矛盾はないとキハラは言う。
「私は好感を持っていますから」
どこまでが本気なのかホノエにはわかりかねた。
「んじゃ、次の休暇でデートでも頼むかね」
キハラは冗談だったのだろうが、マコナは言質をとったとばかりの表情を浮かべている。
(恐ろしい女人のようだな)
ホノエはキハラに心から同情した。
「ところで次の作戦の話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」
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