■マコナの作戦 ◎マコナ、スグ
スヴァンヒルト発令所内。
白い軍服と帽子。髪を二つお団子にして結いあげた少女が一人。お腹を押さえてマコナの横に立っていた。
「どうしたのですか、スグ副長?」
スグと呼ばれた少女は普段であればクリッとした瞳と丸こい顔つきが可愛らしいと言われたことだろうが、少し猫背気味になっているのが魅力を削いでいた。
「いえ……」
アークリフとナーツァリの合同で設立した部隊に副長として着任することになったことは彼女にとって大躍進だといえた。一方で胃はキリキリしっぱなしだ。原因は隣にいる艦長になる。
「副長、心ばかりの助言です。私の下で働くのであれば慣れたほうがいいですよ」
先ほどマコナは上官に対して上申をしていたのだ。しかもほぼ相手を丸めこめる形で。もちろん上官の顔は終始引きつっていた。
「今回の件を私が押し通した理由がわかりますか?」
――わかりません。あまり理解したくもありません。とは言えない。代わりにお腹を押さえるだけだ。
アークリフの地にセイオーム軍の新型艦が堂々と侵入して、代々守ってきたラゲンシアを奪われたうえに無傷で帰還させようとしているとマコナは堂々と軍を批判したのである。
実際のところファランドールは皇女の護衛としてアースカまで連れてきたということになっており、ラゲンシアはそもそも皇家の所有となっている。なので今回の件でセイオームと事を起こす必要はまったくない。
だが、マコナは正当防衛とはいえアースカで軍事力を行使したことを問題視した。
実質はマコナのいちゃもんに近いのだが、無理を通してでもファランドールとは一戦を交えたかった。
ナーツァリとアークリフはセイオームの行動に沈黙を続けていた。それがマコナの不満である。そこで皇女の乗るファランドールにナーツァリとアークリフの連合軍が接触をする。おそらく何かが起こるはずだ。それがマコナの目的である。
(それにカリン王女まで乗っているということですから)
しかもカリンは亡命という手段をとった。
ファランドールを中心に何かが起ころうとしている。見極めるのにもいい機会であると思っていた。
相手に存在感を与えたいのであれば実力で示すのが一番だとマコナは考えている。
だが、遺憾なことに現状はこちらの熱烈な片想いでしかない。振り向いてもらうにはどうするべきか。
「ファランドールの艦長に繋いでください」
マコナの眼光が光り、彼女の中で戦略が渦巻いている。
その隣でスグは一刻も早い休暇を心より望んでいた。
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