■スヴァンヒルト隊 ◎ホノエ、キハラ、マコナ
■序文
秘密の消えた人類の経済は大きく変貌した。
どこの誰がどのように利益をあげ、資産を持っているのかが誰でも閲覧できるようになったためだ。
資産を多く持つことよりも、どのようにその資産を使うのかに周囲の関心は移っていった。
それと同時にどこにモノが不足して、どこにモノが過剰供給されているのかもつまびらかになり、あらゆる情報がオープンになっていった。
物流システムまでもが大きく変貌していく様を人類はまざまざと体験させられることになる。
――◇◇◇――
「スヴァンヒルトねぇ。モチーフは赤い亀だったよな」
軍規ギリギリのヘアピンをつけて前髪をあげている白い軍服を着た男が柵から巨大な艦を上から眺めていた。八角形のようにあるが、亀の甲羅のようにある。
「まあ、頑丈そうには見えるな」
その隣にオールバックの赤い軍服を着た長身の男が言った。
実際はどうかというと艦に使われる装甲の素材は国際規格で指定されたもので、あくまで見た目状のものにすぎない。そもそも六鱗のおかげでそれほど気にするような問題ではない。
「新造艦を一艦配備したところで、他の艦と連携なんてとれるのかよ」
「もとい単独で運用するためだろう」
「ま、愚連隊の俺たち向きってことだな」
「ナーツァリとアークリフの合同で運用される部隊を愚連隊呼ばわりとはな」
「そういうのは寄せ集めっていうんだよ」
おめでたい奴だと思いつつも、決して嫌いではない。これから一緒にやっていくことになる。そういう点で相棒としては合格といえた。
「お二人はクラシノ・ホノエ殿とヤマシロ・キハラ殿ではありませんか?」
声をかけてきたのは二人と同じ年齢くらいの少女だ。赤い軍服から軍属なのはわかる。だが、二人が注目したのは彼女の被っている帽子であった。
「如何にもその通りです。オノヤマ・マコナ艦長殿」
答えたのは赤服のほう。ホノエであった。
そう言われて少女は目を丸くする。少し驚いたようだ。物静かそうな印象から、与えてくる印象は可愛らしい。
「ご存じでしたか」
「我々が乗艦する艦長殿ともなれば。まして秀麗な女性と聞けば事前に確認しておくのは男としては当然」
「俺はしていなかったけどな」
ホノエの演技がかった仰々しい物言いにキハラは冷めた口調で返す。その二人のやりとりが楽しくてマコナは「ふふ」と左手を口に当てて笑う。奥ゆかしいな仕草だ。
「改めまして。私はスヴァンヒルト艦長のオノヤマ・マコナです。以後、お見知りおきを」
被っていた帽子を外して両手で決して膨よかとは言いがたい胸のあたりに軽く押し当てると、それからゆったりと軽く礼をする。
ホノエとキハラは顔を見合わせる。これから上官になる人物にここまで腰の低い対応をされると反応に困るのだ。
「ところでお二人はここで何を?」
「ただの見学だよ。せっかくの新型艦だからな」
「キハラ、艦長殿に何て言い草だ」
「おっと、そうだったな」
キハラは油断すると荒っぽい口調になりがちであった。
「私は構いませんよ。わいるどというのでしょう?」
「こちらが構うのです。上官に対して示しがつきません」
「大丈夫です。きっとキハラさんは私にめろめろなのですよ」
「いや、それはないな」
キハラはきっぱりと否定する。
「女性に興味はおありでない?」
マコナは首を傾げ、不思議そうに眼差しを向けてくる。
「……どうして、そうなる」
キハラは口元を引きつらせる。
「して、お二人に私から提案があります。これから私と親睦会をやりませんか?」
「親睦会、ですか?」
「ええ、副長は誘ってあるのですが、それでも私を入れて二人なもので。これで男女二人ずつです。“ごうこん”というものでしょうか」
本当に意味がわかっているのだろうか。ホノエは心配になる。
「バーベキューがしたいと言ったら反対されたので、焼き肉屋です。二次会はカラオケです」
マコナは誇らしげにピースをする。
どうするとキハラがホノエに視線を投げかける。対して、この状況で断れるものかと厳しめの視線で返答した。
「もちろん、同伴預かりましょう。夜の街を女性二人は何かと危険ですので」
「ありがとうございます」
それからマコナは副長に連絡を入れると二人の男を連れ立って街へ繰りだすのであった。
尚、特命がくだるのはそれから一日後の話である。
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