■襲撃 ◎ベイト、トウカ
「四天王って四人だから四天王なんでしょう?」
トウカが聞いてくる。自分を入れたら五人いるではないかと言いたいようだ。
「俺たちは二人で一組だからだろう」
ベイトの返答にトウカは口を引きつらせる。回答が真面目すぎたのだろう。
「私たちは連中が強引にこの世界へ連れてこられただけなのよ。ヒズルからの指示っていうよりお願いでしょ。どうして従うの?」
「形はどうあれ俺はこの世界に生まれた。ならば俺の力を必要とする者のために己が生を全うするのみ」
聞いた自分が馬鹿だったとトウカは嘆息をつく。
「ご立派ですこと。正義の味方のつもり?」
「正義ではない。これは俺の信念だ」
それは公衆的で清潔感のあるようなものではなく、薄汚れた自分だけが抱えるモノであるとベイトは語っている。
「暑苦しいヤツ……」
トウカはそう言うもののベイトのことを嫌がっている素振りはない。それはどちらかというと好意的なものだった。
「それでファランドールといったか。どうするつもりだ?」
二人は小さな部屋の中にいる。目の前には巨大なディスプレイ。そこには周辺海域の展開図。
そしてファランドールと思しき艦影。
「青いトンガリ帽子……」
ファランドールの色と形状を表すならピッタリの表現といえるだろう。
潜水艦というには先鋭すぎるし各部に翼がついていて、どちらかというとロケットとかに形状は近い。
「あの艦のこと? 悪くない呼び名じゃない」
「以降、新生四天王はあの艦をトンガリ帽と呼ぶよう上申しておくか」
トウカに褒められて悪い気はしなかったようで、こんなことを言うくらいだから少し嬉しかったのかもしれない。
ベイトは感情が読みにくいだけで感情がないわけではない。そのことをトウカは知っている。
「それでこちらの展開は終わったけど、仕掛けて構わないのよね?」
ディスプレイに映るのはトンガリ帽を中心に前面へ扇状に展開した青い点々である。
「いや、待て。こちらから降伏勧告を出す必要がある」
「前も思ったけど、それ必要なの?」
それとは降伏勧告のことだ。どうせ相手は聞かないというのに。トウカからすればとても意味のあるやりとりとは思えなかった。
「このやりとり自体が周辺への警告になる、ということだ」
「ふうん」
トウカはまだ納得しかねているのか浮かない顔をしている。
「青狐に告ぐ。直ちに降伏せよ」
それから返ってきたのは『バカめ』であった。
「連中、楽しんでるんじゃない?」
トウカはもはや興味を失ったとでもばかり視線をあさっての方向へ逸らして、髪の端を指先でいじっている。
「これより貴艦を殲滅する」と送れば『やれるものならやってみるがいい』と返ってくる。
「じゃあ、交渉は決裂ということで。仕掛けましょうか」
「どうするつもりだ?」
「連中のバリアの原理だけど同じ性質のものを同じ総量でぶつければ中和できるそうよ。原理がわかれば対策は簡単」
トウカの立てた作戦とは自分の操る土偶たちをトンガリ帽に三方から突撃させる。その際にバリアを中和して艦に特攻し自爆させるというものであった。
「シンプルだが、悪くない策だ。あとは相手の出方次第になる」
「それを観察するためにやるんでしょ。本当にヒズルってヤツは何を考えているんだか」
トウカは悪態をつきつつも、土偶たちに指示を出す。それと同時にトンガリ帽がリミッターを解除したという通告が送られてくる。
「どういうこと?」
「俺たちの殺意に対して、それ相応の対応をするということだろう」
こちらにバリアをやぶる手段があるというなら、相手も同じと考えるのが自然だろう。
トンガリ帽は艦首についている砲門しか武装がない。しかも艦を回頭しなければ照準を変えられないときている。つまり取り囲んで土偶に特攻させるというのは理に適っているはずだった。
クエタの海を航行する艦船の質量は三〇〇メートル級のものであれば三〇〇万トンあるそうだ。トンガリ帽の全長がちょうどそれくらいだ。その質量の艦からリミッターを外した状態で放たれる砲撃とは実際どれくらいのものだろうか。
そのベイトの疑問に答えが出たのは、まさに次の瞬間であった。
トンガリ帽は扇状に艦砲射撃したのだ。
土偶のバリアはすべて貫通したようで、一斉に存在がロストしていく。
「これでは足止めにもならんな」
「ホント、デタラメな連中だわ」
にも関わらず二人は冷静に状況を見ていた。
「やはり、まともに戦うのであれば連中の流儀に合わせるほうがいいようだな」
「第三ラウンド突入ね」
ベイトは自身の心が湧き立つの感じていた。これは間違いなく戦士としての本能。
「楽しそうね」
「そうか?」
ベイトの淡泊な返答にトウカは口の端をあげる。
「自覚のないフリはやめなさいよ」
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