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■新生四天王 ◎ヒズル、ベイト、トウカ

   ■序文


 新人類とホモ・サピエンス間で戦争が起こりかけたことはあった。

 しかし、ホモ・サピエンス側はすぐに断念することになる。


 最初に某国代表の生まれてから現在に至るまでのプロフィール……それも三六五日の間に誰とどこでしゃべったのか、何を食べたかの詳細までが克明に新人類側が公表したからである。


 さらに世界中の軍事費の流れからどのような兵器が開発されて、配置されているのかまで事細かに公開されてしまった。


 彼らは人間一生分の情報を一クエクトにまで圧縮する技術を有していた。

 世界から秘密が消失した瞬間である。


   ――◇◇◇――


 ないはずが在るように。

 この感覚はまさにそれである。

 この場に五人いる。だが、三人の姿はない。気配だけを感じていた。


「コガイ・トウカにコガイ・ベイト、よくぞ招集に応じた」

 声の主はヒズルとかいう男だ。白髪に口ひげを蓄えた初老のような見た目とは裏腹に精悍さを兼ね備えた男だ。眼光は鋭く千里先まで見通しているような慧眼を感じさせる。


「報告は必要だろう」

 男のほうが答えた。

 名前からして彼がおそらくベイトだろう。


 無造作に伸びた銀色に黒いメッシュの入った髪。

 服装は薄汚れて、裾がボロボロになったマントを纏っている。

 左目は大きな眼帯。右目から覗く眼光は鋭く、決して相手に考えを読ませようとしない隙のなさを窺える。


 立場的にヒズルが上なのかもしれない。しかし、男は敬語を使う様子も敬意を払う態度すら見せない。ヒズルも別段気にした様子はないので、お互いの関係性はこれでできあがっているのだろう。


「任務に失敗したら処罰でもされるワケ?」

 本人に悪気はないのだろうが、軽口でさえもどこか高圧的な声音に感じる。

 ヒズルに対しては女の方もベイトと同じような態度をとっている。


 白のノースリーブニットに黒革のタイトスカート、赤いハイヒール。自身のスタイルによほど自信があるのだろうか。スラリとした立ち姿と豊満なバストに凹凸のあるスタイル。傷一つない肌を惜しみなく晒している。

 白金髪のショートボブに両耳の金色に光るリングのイヤリング、そして表情を読ませないサングラス。

 声の主である女性。彼女がトウカなのだろう。


「そうしたほうがいいのであれば、な」

 ヒズルの返答にトウカは肩をすくめる。

「俺たちはこれからどうすればいい?」

 ベイトはそんなやりとりにもお構いなしだ。


「これから出航する皇女が乗る艦を襲撃しろ。失敗したら先行してアースカで迎え撃て」

「失敗する前提なの?」とトウカは茶化すような口ぶりだった。

「この場合、二段構えと言ってほしいがな」

 何となく悲しそうというか残念がっているような声音に混じっているような気がした。


「奴らは妙なバリアを持っているようだが、対策法は教えてもらえるんだろうな?」

 ベイトの問いにヒズルは「もちろんだ。あとの手段は任せる」と返す。

「であれば、問題ない」とベイトとトウカはただ頷く。

「新生四天王の実力を見せてみろ」


 それだけ言い残すとヒズルが消え、あたりが急に暗転する。話は終わったということだった。

第三話突入しました。

第三話終了にて第一部完となります。そこで一旦区切りとなります。

ちなみに5部構成の予定です。

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