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■出迎

 キリは正式に皇太子と承認を受けてから幾日かが経過していた。

 ケイト軍港の人機ドックには四機の人神機が並んでいた。


「未だに信じられないの」

 ベルティワイザーのコックピットが降りてくる。


「あの日以降、コックピットのハッチは開けられていないそうです」

 チオルとセイカが会話をしていた。


 コックピットのハッチが開き、シートが降りてくるもそこには誰もいない。

「……アズミはどうなったの?」


「移火の儀を行ったと聞きます。自らの存在を燃焼することで一時的に機体を黒い炎から守ったのでしょう。そして四人の魂を結集させてクーゼルエルガを浄化したと聞いています」

「難しい話しだね」


「結果的に四人は戻りませんでした」

「あなたはよかったの?」


「よくはありません。ですが、彼らが矢面に立たなければ被害は更に大きくなっていたという者もいます。それに私は帰ってきてくれたんだと思います」


「それって……」

「機体は無傷で帰ってきたじゃないですか。整備士も驚いていました。彼らはちゃんと私たちのことを忘れていなかったということです」


 セイカはチオルの背中をそっと優しく押しだす。

「聞いてあげてください、兄上の声を」


 チオルはアズミが座っていたであろうシートに触れる。

「……聞こえる。聞こえるよ、アズミ。でも、やっぱり寂しいよ」


 チオルの声が震えて、とうとう泣き崩れる。その肩をセイカは支えながら声をかける。


「語り継ぎましょう、四人のことを。大丈夫。きっとまた逢えます」


 夜の時。彼女らは彼の四人について夜通し語り合ったという。魂だけになっても海皇を守り通したと彼らは五国の守り神として語り継がれて、奉られることとなる。


 これもまた小さな物語のはじまりであった。

チオルという人物が気に入ったのでちょっと書いてあげたくて書きました。補足にもなったしよかったかなと。

もし外伝を書くことがあればということになります。


それではお読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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