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此方より幻想へ。彼方より現実へ。~皇系戦記~  作者: あかつきp dash
第一六話 黄昏より入り、夜明けより出ずる国
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■振り返りとこれから

 ――時刻は遡る。


 オーハン海域にて第一三独立部隊を中心とした四国連合軍とセイオーム軍は会戦を開いているところである。


 戦いはもう終盤へと差しかかり、連合軍の勝利は揺るぎないものとなりつつあった。

 ただし、クーゼルエルガについては四機の人神機をもってしても足止めが精一杯であった。


 黒陽のすべてを取りこみ溶かす黒い炎に対処法が見つからないままだからだ。おかげで近づくことすらままならない。


『どうする?』

『俺が教えてほしいぜ』


 ホノエとキハラの会話が聞こえる。黒陽のおかげで武器もかなり溶かされていた。

『黒陽に溶かされたら実際のところどうなる?』


『溶かされているのは燃やされているってことらしいぜ。生命なら魂ごと煉獄に焼かれて取りこまれるそうだ』


 アズミの質問にキハラが答える。

『笑えん話だな』


 そんなやりとりをルディは黙って聞いている。一方で頭の片隅の方から響く声に耳を貸していた。


 それはスズカの声だったのかもしれない。

「……何とかなるかもしれん」


 ふとルディは独り言のようにつぶやく。

『どうする気だ?』


 キハラの問いに答えるよりも早くジルファリアの持つ霞からキンという琴線のような音が響きわたると刀身が黄金になっていく。


 クーゼルエルガがツルギを振りかぶりながらジルファリアへ向けて接近してくる。それをジルファリアが迫ってくる黒陽を霞の刀身で打ち祓う。


 黒陽は刀身を溶かさず触れる前に光が遠ざける。そしてまさに二機が切り結ぼうとした瞬間にである。


『ヴラシオの復活を観測しました』

 マコナから各員へと通信が入る。


 二機は軌道を変えて切り結ばずにツルギを空振りさせる。そして互いの陣営へと戻っていく。

『各機、撤退だ』


 これ以上の戦いは無意味とばかりに第一三独立部隊は一斉に撤退をはじめる。対するセイオーム軍も追撃をしてくる様子もない。


『ルディ、さっきは何が起こったんだ? ツルギが金色に光ったようだけどよ』

 キハラが訊ねてくる。


「スズカの魂の残存が教えてくれた。魂の燃焼にて陽光の輝きを放ち黒陽を打ち祓う、と」

『しかし、それは……』

 それが何を意味するのかをアズミは察する。


「ああ、存在を燃やすということだ。それと先ほどの戦いでダイトの目的がわかった。ヤツはクーゼルエルガをヴラシオに特攻させて封印するつもりだと」

 

 ヴラシオの存在はクーゼルエルガをもっても覆すことはできないが、覆い包むことはできる。暗黒の炎にて日蝕のごとくヴラシオを黒く染めるのだ。


『……迷っている時間はなさそうだな』

 キハラの決意を思わせる言葉のあとにホノエが続く。


移火(うつりひ)の儀というものがある。火を灯し、次へ繋いでいくというものだ。つまり、ここにいる四人で魂の火を繋ぎ、最後に四人分の炎を結集させる……』


『移火を行ったあとに機体は残るのだろうか?』

 その意外な質問をしたのはアズミである。


『自らの命の炎を燃やすことによって陽光の光を発して機体を守るのが移火だ。無論、黒陽に取りこまれるようなことがあればそのかぎりではなくなるだろうが』


『……そうか。それを聞いて安心した』

 アズミは少し安堵した表情を浮かべている。


「ヴラシオをクーゼルエルガから守るためなら俺はやれることはやるつもりでいる」

 ルディは決意をこめた口調を周辺に臭わせる。


『ま、そのへんはおいおい話しあおうや。明日にケイトに攻めこむってわけでもねぇんだ』

 キハラの一言で張り詰めた空気が少し弛緩したのであった。


『それじゃあ野郎ども帰艦するぞ。その後はカミトまで後退だ。各機、警戒を怠るなよ』

 キハラの号令のあと、各員は各々の口調で「了解」と返答する。それから四機はそれぞれの軌道で母艦へと帰投するのであった。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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