表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/205

■グリオン襲来

 海面から緑色の光を放ちながら不定形をしたモノが現れる。それはやがて一〇〇メートルほどの巨大な巨人の姿へとなっていく。


『ここにいる人ははじめましてかな? 僕は新生四天王、最後の一人にしてグリオンの乗り手であるアイダ・スムさ』

 ニィナはナワールのコックピット内でその少年の姿をモニター越しに見る。


「私はここで防衛を任されているクラバナ・ニィナです。そのような兵器を見せびらかして何用でしょうか?」


『いい女じゃないか。僕はグリオンを見せびらかしにきたんじゃあない。ヴラシオを叩き潰してこいって命令を受けてここにいる。邪魔するなら容赦はしないよ』

 ――もっとも泣いて詫びるなら君だけでも生かしてやらないことはない。


 そんなことを平気で言い放ってくるスムの傲慢さにニィナはため息が出る。軍事行動と性差による感情行動が分けられないでいる。言動からして未熟さが滲みでていた。


『その勧告には答えられないわ。我々はヴラシオを守るために最後まで抵抗する覚悟よ』

 レイアが言い返す。


『勝ち目がない戦いにご苦労なことです。玉砕するつもりですか?』

『あら、そう見える? じゃあ、かかってきなさいな。あなたが戦力差を大きく見誤っていることを教えてあげるわ』


 それが戦闘開始の合図となった。

 グリオンの足元から人機と同じサイズの機体がいくつか現れる。対してニィナの指揮のもと無人機の部隊で対応させる。


 ナワールが槍を一閃させながらグリオンに向けて突撃していく。


 ――手を貸しましょうか?


 ニィナの頭に聞き覚えのある声が響く。

「ティユイ皇女の声?」


 ――私ならあなたの助けになれますよ。


 それからしばらくの沈黙のあとにニィナはキッパリと答える。

「御免被るわ。あなたの助けは不要よ」


 ニィナは息を吸いこみ、声と共に吐きだす。

「あいつが大変なのはこれからじゃない。なのに、あなたはそれを放棄した。あなたはあいつのことを好きでいればいいっていう立場で高いところで物見遊山じゃない!」


 迫り来る敵をナワールで次々薙ぎ払っていく。

「あんたはどうとでもなることを被害者面して、あいつの背負う重責から逃げたのよ。生きるということは一人ではできないことをやるってことでしょ? 生きているかぎり諦める理由がないわ」


 一呼吸を置いてニィナは戦場の中で宣言する。

「だから、あなたの協力はいらない。キリは私が――私たちが守り通してみせる」


 ガルダートが雄叫びをあげながらグリオンへ向かっていく。それをグリオンは体を左手で握り、地面へ叩きつけて右脚で踏みつける。


 それからスムが自信に満ちた口調で語りかけてくる。


『グリオンはあらゆる知的生命体の意識が融合して生まれた巨大人型兵器なんだ。その力は恒星を破壊して、宇宙をも平らげる』


 グリオンは両手で胸部装甲を引き剥がすとそこから深淵が覗く。それから上体を反らすと深淵が上空へと打ちあげられて暗雲が広がっていく。


 それと同時にナワールの出力があがらなくなっていることに気がつく。

『グリオンにとって世界の法則を塗り替えるくらいは動作もないことさ。さらに――』


 グリオンの右手から黒い深淵の塊が石像になっているヴラシオに向けて発射される。その軌跡は地面ごと圧壊させて周辺の空間をも歪ませる。


 ヴラシオはその深淵に包みこまれると中心核へと収束していき、その空間にあったモノがすべて消失する。


 あまりに早い。あっけない展開にニィナは口をわなわなと震わせる。もうヴラシオがいたはずの場所にその姿はない。四人の王女どころか岬そのものが消失していた。


『先ほど僕が放ったのは圧縮された生まれようとしている宇宙さ。わかるかい? その空間に閉じこめられてビッグバンを受けることになるのさ。ヴラシオというのがどれほどのモノかは知らないけど、宇宙を生みだすほどの強力な爆発に耐えられるかな?』


 スムは「くくく」と愉快そうに笑う。

『これで本来なら僕の仕事は終わりなんだけどさ。ついでだから君たちの存在も抹消してあげるよ。目障りだからさ』


 グリオンがナワールに少しずつ迫っていく。

『フレームの耐久値は下がっているはずだよね。もうそろそろ動きが鈍くなってくるんじゃないかな』


 その指摘の通りナワールの動きが鈍くなっていく。それに加えて地上での可動限界も近づきつつあった。


 人機を地上で動かす場合、連続稼働によって間接から発せられる熱を解放する必要がある。その冷却時に機体は動かせなくなる。これはリミッターの役割も担っていた。


『……行け』

 無人機のほとんどはことごとく破壊されてしまっていた。ナワールも何とか立っているという状態である。


 緑の群像たちがナワールに襲いかかってくる。機体は保つだろうか?

「死ぬのかな? 助けて、キリ……」


 ニィナはふと戦闘前に交わした言葉を思い出し口にするのであった。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

感想、評価、お気に入り登録も今後の励みになりますので、ぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ