■旅路の始まり ◎ルディ、セイカ、アズミ
ルディがソファに腰かけているとセイカが両手にマグカップを持って現れる。
「お茶でもどうだい?」
「……もらおう」
ルディがそう答えるとセイカは安堵したような仕草を見せる。
「よかった。断られたらどうしようかと思ったよ」
「……以前、断ったときにお前はしばらく口を利いてくれなかったろう」
「反省が生かされているようで何よりだよ」
クスリとセイカは意地の悪い笑みを浮かべるとルディの隣へ腰かける。それから飲み物は卓に置くと頭をルディの肩へと預ける。
「次の作戦行動が決まったそうだね」
「誰に聞いたんだ?」
まだ周知されていないはずだがとルディは驚く。
「兄上です。あの人、あれで身内には甘いんですよ」
「……困った義兄上だな」
「それに私はまだレギルヨルド隊の一員だからね。知っていても問題はないさ」
「部隊を二つにわけるそうだ」
ファランドールは単艦で行動し、レギルヨルドとスヴァンヒルトは混成で望むということだ。
「ルディはどちらに?」
「間もなくセイオームに対して宣戦布告をするということだ。それをセイオームが受諾すればレギルヨルドとスヴァンヒルトはオーハンへ侵攻する。俺は混成部隊のほうに配属が決まった」
さらに補足しておくと四国からもそれぞれ戦艦が一艦と人機を三機小隊分の派遣も決定したそうだ。
「久々の会戦というわけだね」
「そうなるな」
「ファランドールはどんな動きになるんだい?」
「ファランドールはヴラシオを乗せてアージへ向かう。その護衛にはニィナが就くそうだ」
「ファランドール側の戦力が少し心許ないんじゃないかい?」
「それはそうだが、セイオームは今回の会戦でアージに差し向けられる戦力はほとんどないだろう」
あるとすれば新生四天王の最後の一人くらいというのがレイアたちの見解であった。
「セイオームは宣戦布告を受諾するかな?」
「どちらにせよ、こちらはオーハン付近で軍を展開するだけだ。あそこに駐留している軍は内部の統制に割かれて、外部からの圧力にまで手がまわらない。そうなればケイトに駐留させていた軍をオーハンへ差し向ける必要が出てくる」
結果的に会戦を受けることになるだろうというのがレイアたちの見解であった。
「そうなると、しばらく会えなくなるね」
「ついてくるとかは言わないでほしいがな」
「できるならそうしたいところだね。私も人機のパイロットなんだから」
セイカは自分のお腹を優しく撫でる。
「アズミも止めてくるぞ」
「わかってる。自分がどういう状況なのかくらいはね。妊娠がわかったときは大変だったんだよ、兄上ときたら……」
セイカは苦笑いを浮かべる。
「セイカのことを思ってのことだろう」
ルディもこの件についてはアズミに未だによく言われることだった。なのでお茶を濁すようなことしか言えないのだ。
「ルディくんを困らせるようなことを言うんじゃない」
アズミが部屋に入ってくる。突然の来訪にセイカは佇まいを直そうとするが、アズミはそのままでいいと制する。
「ルディくんは無事に連れて帰ってみせる。だから、安心して待っていなさい。お腹の子と一緒にな」
そう言うアズミの顔は優しい。
「……はい」
これにはセイカも従うしかなかった。
「兄上にお願いしたいことがあります」
「何かな?」
「この子の名付け親になってやって欲しいのです」
「随分と大役だが、ルディくんは構わないのか?」
「いいかな? 思いつきで言ってしまったけど」
セイカはルディに懇願するように見つめる。
「俺に異存はない」
ルディはあまり表情を変えないまま返答する。ぶっきらぼうにも聞こえるが、そこが彼の不器用さでもある。その返答に対してはより密着することでセイカは愛情を示す。
「ということです、兄上」
勝利を確信したようなセイカの表情にアズミはため息を一つつく。
「そう頼まれれば答えないわけにもいくまい。謹んで受けさせてもらおう」
「そこまで畏まらなくても結構ですよ。なので、兄上も無事に帰ってきてください」
セイカの意図を理解したのかアズミは目を細める。
「わかった。ここに帰還できるよう全力を尽くそう」
「……はい!」
アズミの答えにセイカは満足そうに笑顔を浮かべるのであった。
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