■朝より ◎ユミリ、キリ、マシロ
カーテンが自動であがると窓へと淡い日差しがこぼれて、ユミリの頬にそっと触れて目が覚める。
「キリ、起きてや」
のっそりと四つん這いの状態で馬乗りになるとキリの肩を揺する。
「……ああ、おはよう」
キリは目をこすりながら起きあがる。
キリは半袖シャツを着て、ユミリは胸元の開いた白いレースのキャミソールを着ている。キリが急に顔を赤くして目を背けるのを不思議に思ったユミリは「あ」と声が漏れる。
とはいえ、それはそれでからかいがあったのでそのままキリの胸元に顔を埋めて、ゆっくりと体を沈めた。
「こいやった見れんやろ」
ユミリは上目遣いになってキリを見あげる形になる。かわりに体の密着度は増えて、吹越でもキリの体温が伝わってくる。
「もう朝だろ……!」と言いながらキリは体をよじらせる。
「昨晩はなかなか帰ってこんかったやん。どこ行ってたん?」
「……ヴラシオのところだよ」
「どうして?」
「えっとだな……」
話したくないというよりはどう話していいかわからないという感じである。そのせいで時間がその状態でしばらく続き、やがては沈黙へとなっていく。
そんなこんなで時間が過ぎていくと勢いよく扉が開く。
「二人とも朝だよ!」
入ってきたのはマシロだった。
「あんた、こんな役まわりばっかりでいいん?」
ユミリは頬に肘を乗せながら呆れた様子だ。
「うるさいな。誰もやらないからだよ」
「普通はやらんからよ」とユミリは訂正をする。
「そういえばマシロ、夢の中ではありがとう」
キリのお礼に何のことかとマシロは首を傾げる。
「マシロが助言してくれたんじゃないか」
「そんなことが? 覚えてないけどなぁ」
本当に心当たりがない様子のマシロにキリとユミリは顔を見合わせる。
「夢のことは大半を覚えていないって言うしね。ひょっとしたら、それ実は僕じゃないとか」
――なんてね、とマシロは意地悪く笑う。もはや真偽のほどはわかるまい。
それからマシロは「お邪魔したね」と言い残して部屋をさっさと出て行ってしまう。
「何やったんやろ?」
「俺に聞かれてもな。いつものマシロだとしか」
むしろ謎が増えてしまった。
「ユミリは見たい夢は見れたのか?」
「どうやろ?」とユミリは眉根を寄せる。
「わからん。でも、いまがいい。キリやみんながいるここが私はええんよ」
ユミリは自然とこぼれる言葉に自分でも驚いていた。たぶんキリが夢の中まで迎えに来てくれたこと。小指の赤い糸。それに満足してしまったのかもしれない。
「キリが見たい夢は何やったん?」
そう聞き返すとキリは顔をうつむけて考えこむ仕草をする。
「あれでよかったんだ。いつか終わる夢で……」
そう言うキリの表情はどこか寂しそうだ。
「そろそろ起きよっか」
ユミリはキリに手をそっと差し出すと、互いの指が絡んだ。
お読みいただきありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします。
感想、評価、お気に入り登録も今後の励みになりますので、ぜひお願いします。




