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此方より幻想へ。彼方より現実へ。~皇系戦記~  作者: あかつきp dash
第一四話 蒼、揺蕩う国より
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■東へ ◎ルディ、キハラ、キリ

 セイオーム軍は黄色のマグを五機並列させつつ面一でルディたち三機小隊を圧迫させて後退させていく。


 数に押されては迂闊に手を出すことはできない。砲撃による集中砲火を為す術もなく浴びるしかなかった。


「攻め方が強引だな。焦っているようにも見える」

 ルディは敵の出方を分析する。


「各機、後退する速度を落とせ」

 ルディの指示に『了解』と返答がくる。


 セイオーム軍にカミトの水母へ取りつかれたら降伏ということになる。つまりは援軍がくる前に抑えてしまいたいという欲求があるのだ。


 であるならば、いかにして援軍の到着までハルキア軍は時間を稼ぐかが肝要になっていた。

 速度が変わったことでセイオーム軍との距離が少し詰まる。それはジルファリアの得意な距離に近づきつつあるということだ。


 敵機の接近を遅らせるために牽制射撃は絶えず続ける。しかし、敵機との距離はそれでもじりじりと縮まってくる。ここを突破されればハルキアは占領されてしまう。


 ハルキア軍の体制は十分ではなく、何とか動かせる機体が首都に数機あるくらいであった。人機とパイロットには出撃に際してルーティンが決まっているため、十分な調整が適わなかったのだ。


 そろそろ敵機はツルギを抜いて格闘戦の準備をはじめている。数で押されるのはいくらジルファリアに乗ったルディでも押し切られてしまう。


 するとその間隙を割って入るように砲撃が通りすぎる。

「艦砲射撃?」


 しかし砲撃は予想外の方向からであった。この砲撃で敵機は予定されていた艦隊以外もきているのではと一瞬浮き足立つ。


『待たせたな。助けに来てやったぜ』

 キハラの声だった。


「この艦砲射撃はどこの艦からだ?」

『ヴラシオのだよ』


「あれほどの火力をキリが制御しているのか?」

『男子三日会わざれば刮目すべし、だろ』


『接線領域:一〇〇(ヒトマルマル)。味方艦が敵艦の射程内に入りました』

 ファランドールより報告がくる。


『こっちで二大隊は引き受けるぜ』

 ヴラシオの砲撃で敵大隊の連携が乱されると、さらに敵艦の後方から別の砲撃がくる。それは戦艦を掠めるだけで当たったりはしない。


 しかし、これは敵艦の注意をキハラたちのほうへ引きつけるためだ。実際に敵部隊は注意を後方へ向きつつある。


「各員、砲撃の間隔を開けろ。敵機を懐まで迎えて接近戦を仕掛ける」

 弾幕が薄くしつつ敵機がジルファリアへ向かってくるように誘導する。


 五機のうちの一機が先行しながらツルギを抜いて接近をしてくる。対してジルファリアは自身のツルギ――(カスミ)を右手に持つ。


 それから左手の盾を相手から右手の霞の刃の向きが死角になるよう調整しながら接近して、すれ違いざまに敵のマグへ刃を突きあげてツルギを持っていた手を切り落とす。


 これで大隊は四機に減る。それから残った四機のうちの二機が連携しながらヒットアンドアウェイでジルファリアを攻めてくる。


 するとジルファリアと敵機の間を太い光弾が通り過ぎていく。

『ルディ、一機は俺の方で請け負う』


「キリか……!」


 ガルダートとともにラグアがやってくる。一見すればラグアはボロボロに見える。あれでよく戦えるものだと。


『問題はないよ、ラグアは』

 ラグアに狙いをつけて接近していくマグの前にガルダートが横切る。それで動きを止めてしまった敵機は距離を一気に詰められて、腕を切り落とされる。


『ルディ、このまま五機大隊を一気に抑えよう』

「了解した」


 キリの参戦とこれまで減らした数により既に数の方では逆転していた。

 ルディへ向かう一機は背後にいるキリのラグアの存在に少し躊躇したようで、それが仇となった。


 隙を見逃さなかったルディは一気に距離を詰めて片腕を切り落としてしまう。

 これで戦闘続行可能なのは二機になってしまい、ルディの小隊と戦っていた大隊はこれ以上の損失を避けるために撤退をはじめた。


 これに続き、他の二大隊も撤退をはじめていく。

『ようし。各機、損害報告をあげろ。確認後、こちらも帰艦する』


 キハラの宣言は戦闘の終了を意味するものだった。これにルディは思わず胸を撫で下ろすのである。


お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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