表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
此方より幻想へ。彼方より現実へ。~皇系戦記~  作者: あかつきp dash
第一三話 黒、稜々たる国より
165/205

■それから ◎キリ、ミキナ

 キリは壁にもたれかかり、肩にはミキナがもたれかかってくる。

「調べていたらお母様がアークリフの巫女であったことがわかったの」


「どうして、その人はソウジ家へ?」

「お父様の年齢は見た目通りじゃないのよ。もう一〇〇歳は超えているわ。家系に圧力かけたとかいろいろ聞くけど……」


 詳しくはわからないという。どういう思いで娶ったのか、それさえも謎である。

「巫女の記憶が同期されたから俺への態度が軟化したのか?」


「……知らない」

 ぷいとミキナは顔を背ける。


「あなたがキライなのは相変わらずだから。これは変えない」

「……ティユイのこと、恨んでいる?」


 ミキナは首を横に振る。

「私は傍にいて何もできなかったから……。それにあなたといたときのティユイは楽しそうだったわよ」


「こちらに協力してくれるのは信じていいのか?」

「そこは信じないでほしいわね。私にも立場があるから。二重でスパイをするんだから」


 どちらの陣営にも疑われないような内容の情報を渡すとなれば難しい取捨選択があるということだろう。


「ソウジ・ガレイの娘だもんな」

「あなたこそお父様を憎んでいないの?」


「憎んでいないと言えば嘘になるけどさ。恨みを晴らそうとまではいってないな。ただ――」

「ただ?」とミキナが聞き返す。


「ただ、ガレイは自分の想像力で広がる世界だけを正しいと信じている。だから、まわりを抑圧しようとする。それは自分が他人よりも劣っていると感じるからやってしまうんだ。でも、俺たちはまわりとの繋がりを感じて生きてきたじゃないか。それは到底、受け入れられない」


「高説たれるじゃない」

「大義としては十分じゃないか」


「ということは、現在のあなたに実はお父様と対立する理由がないのね」

「そうなる。だけど、俺の周辺はそうじゃない。それに俺も皇子という立場が明確になれば話は変わってくるよ」


「あなたたちはケイトへ軍隊を送りこむ大義を探しているということね」

 ミキナは納得したようだった。


「何を考えたんだ?」

「そんなのは探ってみればいいでしょ」


「意地が悪いな」とキリはぼやく。

「私がケイトまでの道を繋いであげる」

 

 ミキナは不敵な笑みを浮かべる。

「どうするんだよ?」


「言わないわよ。絶対反対されるし。あと、私のことは信じないこと」

 ミキナはフンと鼻を鳴らす。


「何だかよくわからないなぁ」

 キリは頭を掻く。


「どれが私の親切かを感じとるのはあなたの領分でしょ」

 ミキナはおもむろに立ちあがる。


「そろそろ行くわ。拐かしを長くやりすぎると逆に疑われるから。必要があれば情報はそちらに流すわ。あまり期待しないでね」


「わかった。そうする」

 妙な共闘関係だなとキリは思った。ミキナのどういう部分を信じるかということについては、彼女の迷いを生じさせている部分についてなのだろう。その迷いはおそらく継続中であるのだ。


 それが続くかぎりはどっちつかずという行動を是とできるのだ。しかし、彼女がどちらにつくかを決めてしまえばそれも終わる。つまり彼女はいまの自分が一番価値のある状態であるとしてキリに売りこんできたのだ。


 ――計算高いんだか、なんなんだか。


「また、会いましょう」

 ミキナは去って行く。


 それからポリムから連絡がくる。

 ――みんなが心配している。さっさと用事をすませて帰るほうがいいね。マコナとクワトには僕から事情を伝えておくよ。


 ――頼む。

 キリはそれから慌てて買い物をすませるハメになるのであった。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

感想、評価、お気に入り登録も今後の励みになりますので、ぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ