表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
此方より幻想へ。彼方より現実へ。~皇系戦記~  作者: あかつきp dash
第十二話 紅、燃ゆる国より
148/205

■山ごもり ◎キリ、カリン、マシロ、ニィナ、アスア

 海岸の屋敷から少し離れたところに登山口の入り口があった。

「この山頂に寺がある」


 マシロがバックパックをキリに押しつけながら話しはじめる。

「何だよ、これ?」


「キリはカリンと一緒に登山するんだよ」

「だから何でだよ?」

「カリンは修行だよ。次のお祈りは修練がいるんだ。君はそのお供」


「上には山寺があるだけだろ。そこで修行になんかなるのか?」

「寺とか神社っていうのは御魂の集積する場所になっているんだよ。僕らの先祖は墓石を放棄したけど、御魂は存在し続けている。安息は必要だ。だから寺社仏閣はある」


「いつも思うけど、マシロは物知りだよな」

「年寄りのように言うのはやめてほしいな。僕はまだ一四歳だから」


「年齢と見た目ってアテにならないよな」

「それはレイア様のことを言っているのかい。君のお母様だよ」


「そうだった。そういう意味だとマシロと俺の年齢ってそう変わらないんだったな」

「僕は赤ん坊の君を知っているんだよ。お姉さんだね」


「そういえばどうして俺が大きくなるまで待っていたんだ?」

「僕が君の父上に結婚を迫ったんだよ。そしたら君が大きくなるまで待ったらって言われたんだよ」

「……それで待っていたのか?」


 キリは少し引き気味である。

「君のお父上はレイア様に夢中だったからね。ぞっこんすぎて彼女以外と関係を持たなかったくらいだ」


「それで俺にまわってきたと」

「そうさ。君の現状はいわば君の父上の業とも呼べるものだ。だから生きてやり遂げないとね」


 マシロは何かを見透かしたように言葉をキリに投げかけた。それに対してキリは口を思わず横一文字にしてしまう。

 この反応にマシロは苦笑いを浮かべる。


「カリン、本番は命がけだ。修練はしっかりね」

「はい!」


 カリンの表情は強ばっている。少し力んでいるようだ。

「大丈夫。君ならできるよ。キリも一緒だ。しばらく二人きりなんだ、存分に甘えたまえ」


「いいんですか?」

 ふとカリンは少し拗ねた感じのニィナに視線を向ける。


「年上のくせに独占欲が強いったらありゃしない。彼女は僕に任せて大丈夫だから」

 そう言ってマシロは半ば強引に二人を送り出した。


「……ばか」

 ニィナがつぶやく。


「そういうのは本人にはっきり伝えた方がいいよ」

 マシロがニィナに送ったアドバイスであった。するとニィナはため息を一つついてキリに向かって大声で叫ぶ。


「キリのバカー!」

 するとキリは振り返ってニィナに手を振った。彼は現状をどうすることもできないと理解しているのだ。だから戻ってはこない。


「焼きもちははっきりと焼いてるって伝えてやるほうがいい」

「そうやって達観したフリをするから年長扱いになるんじゃないの?」


 アスアが言った。

「そうだね。覚えておくよ」


 これもまた損な役回りなのだとマシロは自覚せざるを得なかった。


お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

感想、評価、お気に入り登録も今後の励みになりますので、ぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ