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此方より幻想へ。彼方より現実へ。~皇系戦記~  作者: あかつきp dash
第十一話 白、立ちのぼる国より
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■ナリョウ防衛戦 ◎キハラ、ダイト

 アークリフ――ナリョウ近海にて。

 セイオームは戦艦ヨルドから五機の人機が出撃した。


 それに対してアークリフは戦艦アルマーノより三機の人機が出撃する。

 その中にキハラの乗機であるガナウィルクがいた。


『私はセイオーム軍司令官のソウジ・ダイトである。アークリフは即刻武装解除をしてマシロ王女を差し出すことを要求する。受理されない場合は首都ナリョウを武力にて制圧する』


「こちらナリョウで防衛を預かっているヤマシロ・キハラだ。返答は一つだ。やれるものならやってみろ」


『……了解した』

 これで戦いは避けられないことが確定した。もとい容認できるような話ではない。これは既定路線だ。


『キハラ隊長、セイオームは五機大隊に対して我々は三機小隊です。いけるでしょうか?』

「この際、弱気はやめようぜ。国内が混乱しているせいでこっちが何とか準備できたのがこれなんだからな。なるようになるしかねえ」


 とは言うもののとキハラはソウジ・ダイトの駆る人機に目を向ける。

「何なんだ、あれは?」


 渦巻くような黒。黒い機体というよりはまとわりついているという印象である。

『では、キハラ殿。私と乗機である八岐災禍(クーゼルエルガ)がお相手しよう』


 ――クーゼルエルガ? 人神機だろうが、妙な雰囲気をまとった機体である。

「各機へ告ぐ。クーゼルエルガが俺が相手をする。奴には近づくな」


 それはある意味、自分に言い聞かせているようでもあった。あれは混沌の色でもない。もっと違う何かだ。


『参る!』

 ダイトのかけ声と共に戦いがはじまる。


 クーゼルエルガは巨大なツルギを一本持っているだけだ。それこそ二〇メートル近くある巨大な大剣の先端部分には鉄球がはめ込まれている。何とも無骨な姿のツルギである。


重眼剣(ヘビーアイソード)だ。一振りでも受ければただではすまん』

「そのようだがな」


 光弾銃を撃ちつつ距離を測る。重眼剣の一振りが届くかどうかのところの距離から六鱗で相殺してその部分にハンマーを打ちこむ。


 するとクーゼルエルガの装甲から黒くぬるりとしたものが急速に伸びてハンマーを掴み取り溶かしてしまう。


『これがクーゼルエルガの外装甲である黒陽(こくよう)

「てめえ、黒陽ってのは人間を男女関係なく苦痛を与えながら供物にするっていう禁忌のはずだ。それを実行したってのかい?」


『そうだ』

「……何の関係もない人間を供物に捧げたのか?」


 ダイトはそれを否定する。

『供物になったのはソウジ家の者たちだ。父上は一族のほとんどの人間をクーゼルエルガに捧げた』


「……貴様はそれを受け入れたってのか? 胸くそ悪い話だぜ」

『すべては一族の願いを成就するため。必要なことだったのだ』

 その声にわずかな迷いをキハラは感じた気がした。


(とは言ったものの、これじゃあ迂闊に近づけねえぞ)

 しかも先ほど失ったハンマーは盾の機能も果たしている。これで守りの面も弱くなった。


 キハラはため息をつく。

「盾に武器の機能つけるとこうなるんだよな……」


 一つの武装に複合的な機能などいらないと訴えているのに「何はともあれ使ってくれ」としか言われない。


 ――こんなときに愚痴もねぇか。

 このタイミングで別回線より通信が入ってくる。


『こちらレギルヨルドの艦長クワトである。我々は義によってアークリフへ加勢を宣言する』


お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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