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■ターベ包囲網を突破せよ

 水母の外で迎える朝はどこからともなく日の出がやってくる。


 それを人々は東の方角より日出ると表現する。


 暗闇に包まれた世界を一条の光が射しこみ世界を映しだす。


 このような世界であっても戦いは起こる。


「グラード・エリオス、確認するぜ。ここで降参なんてのはまさか言わないよな?」

 キハラは挑発的な口調で問う。


『安心したまえ。私もこれ以上、この世界に長居するつもりもない。私は逃げも隠れもしないよ。この私の乗機であるゼルベルドと一四機のグルクオルファがお相手しよう』

 つまり投降の意思はなく、最後まで戦うと宣言したということだ。


「安心したぜ。憂さはしっかり晴らさせてもらうからな!」

『――きたまえ』


 それが開戦の合図だった。

「ルディ、お前があいつとの決着をつけてきやがれ。バックアップはこっちに任せな」


『了解した』


『レギルヨルドは正面突破をかける援護を頼む』

 クワトが各艦と各機に通信を入れる。


「だとよ、ホノエ」

『もともと派手にやるつもりだった。問題ない』


 ホノエのホルティザードが前面に出るとレギルヨルドの航路を作るために集中砲火で射線を作る。

『レギルヨルドよ、希望を託すぞ!』


 レギルヨルドに敵人型機が三機向かっていく。その先頭にいる機体にナワールが向かう。


 振りかぶってくる剣は受け止めずに上方から盾で頭を叩き潰すとすり抜けざまに動力源へ向けて光弾の砲撃を浴びせて爆散。


 すぐさま右手に配置されている敵機にも狙いをつけると攻撃よりも早く槍を一閃して胴を横一文字に切り裂く。


 もう一機は頭部を蹴り飛ばしてルディたちのほうへ送る。

『この機体は任せて我々は戦線を離脱します』


 ニィナが振り向きざまに各機に伝える。

『任された!』

 

 ベルティワイザーが頭の潰された敵機を突き刺して横になぎ払う。

 ――残り一二機。誰かがそう言った。


 斬りかかってくる一機をキハラのガナウィルクが盾のキンカンで受け止めるとその巨大な鉄塊を撃ち出して、相手を突き飛ばす。


 盾として使うだけで実質はハンマーである。ハンマーを振りまわしながら突き飛ばした敵機に投げ飛ばすとその重量でいともあっさりと顔面から胸元にかけて圧壊する。


 そしてエリオスとルディの間に導線が結ばれる。

『今度は次のようにはいかないよ、ルディくん。私も本気でいかせてもらう』


 前回とは違うとエリオスの機体には巨大なスラスターが取りつけられている。

「試してみろ。次も俺たちが勝つ」


『私は接近戦で相手を切り刻むことに重きを置いているんだ』


 エリオスが「ふふふ」と不敵に笑いながら、ジルファリアに向けてアンカーを飛ばすのを体を捻りながら前進しつつかわす。


 すると背面のスラスターから刃のついた突起物が分離してジルファリアを両肩のほうから襲ってくる。


 それを剣で薙ぎ払おうとするも突起物は剣の軌道を避ける。さらにグルクオルファは背面のスラスターが飛行物として分離してぶつかってくる。


 そのスラスターには刃がまとわりついていた。それをジルファリアは体を反らしてかわす。


『これを躱した奴ははじめてだ。さすがだよ』

 グルクオルファはすかさず右手の剣で斬りかかってくる。それを打ち合いで応じるが、わずかに出力はあちらが上だったようで突き飛ばされてしまう。


 そこを先ほどの突起物が襲いかかり、刃のついた飛行物が背後から襲ってくる。それをジルファリアは銃口を撃ち出して勢いを削ぐと下方へと潜りこみ刃を突きたてて切り裂いた。


『私は戦士として生をまっとうしようと考えている。戦いの中で死ぬのは本望なのさ』


「テロリズムは本意でなかったとでも言うつもりか?」

『あれは役目を果たしたにすぎないよ。依頼されれば、やぶさかではないというのが雇われということだろう?』


 突起物が襲いかかってくるもジルファリアは盾を捨てて、ツルギを一閃させて薙ぎ払う。すでに軌道を読んでいたのである。


 それからジルファリアはゼルベルドと距離を一気に詰めて互いのツルギが激しく交錯する。

『すべては何をしたのかではない。どう死ぬのか、さ』


「その自己満足のために貴様は虐殺をしたというのか?」

『先ほども言っただろう。私は仕事をまっとうしたにすぎないと。虐殺なんてのは結局の所ね、相手に対して何にも感じないからできることなのさ。つまり状況を望んだのはあの男一人さ。なのに自分が総合意志であると思いこんでいる。何とも愚かだとは思わないかい?』


 何一つ自分で成せていないというのにだ。それをすべて自分が背負っているかのように錯覚をしている。


 ゼルベルドの剣に弾かれてジルファリアは後ろによろめく。


 その瞬間をゼルベルドの足のつま先に装填された刃の蹴りが繰りだされるのをジルファリアは再び体を捻った状態でかわすだけに留まらず距離を詰めてくる。


『私の負けだ。だが、これでようやく――』

 ジルファリアがツルギを一閃させる。


 ゼルベルドは胴が切り離されると同時に光の粒子となってクエタの海に溶けていく。


 ルディが知るかぎりでこれがエリオスから最後に聞いた声であった。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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