■傷跡は深く ◎セイカ、ルディ、アズミ
戦況について、キリのマグは大破。ラゲンシアは機動鎧が損壊し、パイロットであるティユイは死亡認定された。
五カ国会議にて襲撃されたクラシノ邸では甚大な被害を被った。五カ国会議に出席していた国王たちは殺害されて、警護についていた者たちも軒並み殺害された。
この事件に際してソウジ・ガレイは緊急に会見を開き、この痛ましい悲劇を許しては鳴らないと熱弁を奮った。
クラシノ邸には野外病院が急遽建設されそこで一命を取り留めた者も多くいる。セイカもその一人だ。
「セイカ……」
ルディはどう声をかけていいかわからなかった。
「スズカ様のことは聞きました。残念でなりません」
セイカの右腕は存在しない。左手で震えるルディの左手を握る。
「セイカのほうこそ、右手を失ってしまって……。辛いだろう?」
その問いにセイカは静かに首を横に振る。
「あなたと私の大事なものは守れました」
セイカは自分のお腹を撫でる。
「まだ希望は潰えていません。私たちはまだ戦えます」
「……君は強いな」
「強きも弱きもありましょうか。どんな状況であっても明日は必ずやってきます。だからこそ挫けぬように、あなたを支えるために私たちがいるのですから」
「ありがとう、セイカ。君の言葉、たしかに受け取った」
面会はそれで終わりとなった。セイカはこれから軍の病院へ移送されることになっているからだ。
ルディが病院から出るとアズミが立っていた。
「すまない。セイカを守れるどころか守られてしまった」
「気付けば体が動いていたと言っていた。もし、あなたがセイカをかばったままであれば、あなたは確実に死んでいた。だが、結果的にあなたは生き残り、自分は右腕を失うだけですんだと」
兄には生きていて欲しいと、それがセイカの切なる願いであった。
「私はセイカやスズカ様の思いに応えねばな」
ルディは黙ったまま頷く。
「許されるのであればベルティワイザーには私が乗ろう。今度こそ守ってみせる」
「もちろんだ」
「ルディくん、一つ頼みがある」
アズミが振り向き、ルディと対峙するような立ち位置になる。
「私がベルティワイザーに乗るということは我々は一年前の決着をつけるべきだと思っている」
「来たるべき、然るべき時に、か」
アズミは首を縦に振る。
「私も君も戦士だ。この決着をつけてこそ次の戦いに挑める。これは通過儀礼だ。我々は強さを示さねばならない。私たちはまだ負けたわけではないのだ」
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