■蘇芳色のアルガルタ ◎キリ、ヒズル
あたりは雨が降り続いている。
『キリ、いますぐそこから逃げなさい』
マグに乗っていたキリにレイアが通信を入れてくる。
「逃げろって言ったって……」
どうしろというのかとキリは戸惑う。しかし、レイアは大真面目だ。
『キリ、ニィナは足止めを食らっている。悪いが、一人で切り抜けてもらうしかない』
シンクが通信に割って入ってくる。
「どうしたらいいんです?」
『悪いが、気の利いたアドバイスはできない。ヒズルが本気ならお前は受けて立つしかない』
「これまでと何が違うんです?」
『ヒズルの乗るアルガルタは他の人神機とも違う。現状で対等に戦える人間はいないだろう』
「同じ人型のメカだったらそんなに差は出ないんじゃないんですか?」
『本来ならな。ところが、何体かの人神機は霊域旭界と呼ばれる特殊能力を持つ機体がある。アルガルタはその一機だ』
「霊域旭界とか初めて聞いたんですが」
『数少ない人神機でも備えている機体はほとんどいない。当然だよ』
するとヒズルが通信に入ってくる。
『話はすんだか?』
キリの目前に蘇芳色の鎧武者。まさにその表現がぴったりだと言えた。
「どうして俺を狙う? 強いヤツと戦いたいというわけでもないんだろう」
『そうだな。貴様の父との約束を果たすためとでも言っておこうか』
「俺の父親だって?」
『これ以上、交わす言葉は不要』
「問答無用ってことかよ」
マグの盾をかかげる。それと同じくアルガルタがツルギを抜き放つと盾が横一文字に破壊される。
「振断盾を斬った?」
キリは驚愕する。と同時に逃げられないことを確信する。
キリはマグのツルギを構えると突きたてたままアルガルタへ突貫をする。
『そうだ。己の命をかけて飛びこんでこい!』
アルガルタがツルギを一振りするとマグの両腕が切り落とされる。
『だが、私は容赦せん!』
さらにアルガルタが一振りすると両足も寸断される。
「どういうんだ!?」
キリのマグはこれで動きが封じられてしまった。
『この程度とは笑止』
アルガルタがゆっくりと向かってくる。
『……死ね』
アルガルタのツルギはキリのコックピットに狙いをすませる。
するとアルガルタを狙って光弾が飛んできて、それをかわすためにアルガルタは後退する。
『きたか』
『キリくんはやらせません。あなたの相手は私がします』
ティユイの声とともにラゲンシアの姿がそこにあった。
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