■紅く染まる ◎ホノエ、カリン
(銃撃が止んだ?)
ホノエは周辺が静かになったことを確認すると邸内を慎重にだが、進みはじめる。
耳を澄ましていると女の子がすすり泣く声が聞こえてくる。
それは扉が半開きになっている部屋から聞こえた。
クラシックな造りになっていて蝶番のついた開閉式の扉である。それでもと扉の中を手鏡で覗く。
そこにいたのはカリンと――。
「リョウカ!」
ホノエは扉を開け放つ。
「ホノエさん……」
目に涙を一杯溜めてカリンが視線を向けてくる。
「カリン様、これは……」
リョウカはすでにぐったりしていて身動き一つしない。
「リョウカさんはもう……」
カリンの膝の上で眠っているようだった。しかし、それは違うのだとすぐにホノエは理解する。
ホノエはリョウカの手を握りながらカリンに顔を向ける。
「最期は――リョウカの最期はどうだったのでしょうか?」
「私をかばって最期まで守ってくださいました」
カリンは年齢相応なのだろうか、顔をぐしゃぐしゃにして泣きじゃくった。
「立派な最期だったのですね……。あなたに看取られてリョウカも本望だったでしょう。彼女はあなたを妹のように思っていた」
「はい。最期は笑顔で……」
「この生命が果つるまで誰がために尽くすことこそ我らが本懐。私もリョウカのようにありたいものです」
ホノエはリョウカを見つめながら、その頬をそっと撫でる。
「ありがとうございます、カリン王女。リョウカと最期までいてくれて、本当にありがとう」
ホノエはカリンの右手を握る。それでもカリンは泣きやむことはない。
それからリョウカは金色の粒子へとその姿を変えていく。彼女の痕跡はもはやそこに残らなかった。
お読みいただきありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします。
感想、評価、お気に入り登録も今後の励みになりますので、ぜひお願いします。




