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此方より幻想へ。彼方より現実へ。~皇系戦記~  作者: あかつきp dash
第九話 平穏は終わり、そして……
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■紅く染まる ◎ホノエ、カリン

(銃撃が止んだ?)

 ホノエは周辺が静かになったことを確認すると邸内を慎重にだが、進みはじめる。


 耳を澄ましていると女の子がすすり泣く声が聞こえてくる。

 それは扉が半開きになっている部屋から聞こえた。


 クラシックな造りになっていて蝶番のついた開閉式の扉である。それでもと扉の中を手鏡で覗く。


 そこにいたのはカリンと――。

「リョウカ!」


 ホノエは扉を開け放つ。

「ホノエさん……」


 目に涙を一杯溜めてカリンが視線を向けてくる。

「カリン様、これは……」


 リョウカはすでにぐったりしていて身動き一つしない。

「リョウカさんはもう……」

 カリンの膝の上で眠っているようだった。しかし、それは違うのだとすぐにホノエは理解する。


 ホノエはリョウカの手を握りながらカリンに顔を向ける。

「最期は――リョウカの最期はどうだったのでしょうか?」


「私をかばって最期まで守ってくださいました」

 カリンは年齢相応なのだろうか、顔をぐしゃぐしゃにして泣きじゃくった。


「立派な最期だったのですね……。あなたに看取られてリョウカも本望だったでしょう。彼女はあなたを妹のように思っていた」


「はい。最期は笑顔で……」

「この生命が果つるまで誰がために尽くすことこそ我らが本懐。私もリョウカのようにありたいものです」


 ホノエはリョウカを見つめながら、その頬をそっと撫でる。

「ありがとうございます、カリン王女。リョウカと最期までいてくれて、本当にありがとう」


 ホノエはカリンの右手を握る。それでもカリンは泣きやむことはない。


 それからリョウカは金色の粒子へとその姿を変えていく。彼女の痕跡はもはやそこに残らなかった。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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