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此方より幻想へ。彼方より現実へ。~皇系戦記~  作者: あかつきp dash
第九話 平穏は終わり、そして……
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■不穏な空気 ◎キリ、マシロ、リルハ、レイア

「会議がはじまってるのにいいの?」

 リルハがマシロに訊ねる。


 クラシノ邸の苑外にある仮設テントの近くにマシロとリルハはいた。

「私たちの仕事は会議の後でしょ。それにこんなの郊外に出たうちに入んないよ」


「さあさ」とマシロがリルハの背中を押しながら、テントに入るとキリが一人いた。

「……何で二人がいるんだ?」


「やっほ」

「君が退屈しているって思ったからね」

 マシロとリルハは答えも聞かずに置かれている椅子にかける。


「安全地帯とは言い難い場所なんだけどな」

 キリは頬を掻いている。正直、どうやって追い返すかと考えているところだ。


 そんなときである。

『キリ、機体に乗って待機しておいて』


 レイアから通信がきた。

「了解です。何かあったんですか?」


『妙な動きをする民間の輸送船があるの。偽装の可能性があるわ』

 キリに寄港しているという輸送船のデータが送られてくる。

 寄港したあとも荷下ろしもせずにずっと留まっているというのだ。


「それとこちらにマシロとリルハがいるんですが……」

 どうしようとレイアに相談を投げかける。


『二人はこちらで保護しましょう。迎えを寄越すから。それまで護衛をお願いできる?』

「……了解」


 クラシノ邸に戻させずに軍港まで連れて行くというのか。これは穏やかではないなとキリは思ってしまう。


 その緊張感は二人にも伝わったらしい。

「戦闘になるの?」

 マシロが聞いてくる。


『わかりません、残念ながら。ですが、奇襲される前の空気に似ています。誰かがどこかで潜んで隙を伺っているような』

「二人がいなくなって大丈夫ですか?」とキリが聞く。


『ルディに二人のことは伝えるわ。周辺の警戒についてもね』

「五カ国会議は中止させなくても大丈夫ですか?」


『私の勘でやめさせていいならそうするけどね。私も判断しかねているところよ。ちょっと輸送船に圧はかけてみるつもり』

 ――警戒を引き続き頼みますと言い残してレイアはそれから通信を切った。


「穏やかじゃなくなってきたね」

「どうなるんだろ?」


 マシロとリルハは互いに顔を見合わせる。

「杞憂で終わるかもしれないだろ」


 キリの言葉は気休めだと自覚していた。何となくだが、レイアの話は信憑性があったからだ。


 それから間もなく二人をシンクが迎えに来た。


 五カ国会議はどうなっているだろうか。キリはティユイの顔を思い浮かべた。

お読みいただきありがとうございます。

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